都道府県別還暦独身率「還暦祝いを一人ぼっちで迎えるのは未婚者だけとは限らない」
結婚しても独身になる
「ずっと結婚しないままでいると、老後は一人ぼっちで寂しくなるぞ」
そんな声が、特に既婚者界隈から聞こえてくる。
確かに、結婚し、子や孫に囲まれて過ごす老後と比較すれば、一人のままでずっと暮らす人の生活は、客観的に見て「寂しい」ものと映るのかもしれない。
しかし、「結婚すれば一人ぼっちにならないのか」といえば、必ずしもそうではない。
たとえ、結婚したとしても、配偶者との離婚で一人に戻る可能性もある。離婚だけではなく、配偶者と死別する場合もある。どんなに仲睦まじい夫婦であったとしても、必ずどちらか一方が先に亡くなり、残された方は一人になる。
つまり、有配偶者であっても、生涯未婚者と同様「老後一人ぼっち」になる可能性があるということである。
婚歴有の還暦独身率
そこで、結婚したとしても還暦時点で独身に戻る割合がどれくらいかを、2020年国勢調査に基づき計算してみた。60歳時点における未婚を除く離別死別による独身率である。これを婚歴有の還暦独身率と呼ぶ。
計算式は、50歳時の未婚率を計算する生涯未婚率同様、55-59歳の離別死別独身率と60-64歳の離別死別独身率を平均したものとする。
それによれば、全国値で男性9.7%、女性16.5%となった。女性の方が、割合が高くなる理由については後述する。
ちなみに、これに生涯未婚の独身も加えると、男29%、女27%となる。
男女ともほぼ3人に1人は60歳の還暦を迎える時点で独身になる。
都道府県別ランキングは以下の通りである。小数点2位以下は四捨五入。
男女ともトップ10の中に、宮崎、沖縄、福岡、鹿児島、高知、愛媛、北海道、大阪の8道府県が共通でランクインしている。
このランキングを全国平均値との差分で独身率の高いプラスを赤系、マイナスを青系で色分けしたものが以下である。
婚歴有の還暦独身率が高いのは男女ともにほぼ近畿から先の西日本に集中し、反対に低いのは東日本に集中している。反対に、男女共通して還暦独身率が低いのは、滋賀、福井、長野あたりとなっている。
都道府県別の傾向の理由
なぜ、こうした傾向になるかというと、それは離婚率との相関があるからである。60歳時点では男女ともまだ死亡率は少ないので、これは離婚によって独身となった割合が多い。
実際、この婚歴独身率と都道府県の2020年の特殊離婚率との相関を見れば、男性0.4976、女性0.4231と男女とも正の相関が見られる。東日本の中で北海道と青森だけ独身率が高くなっているのも、それらふたつの地域の離婚率が高いことで説明ができる。逆に、滋賀や福井の独身率が低いのもそもそも離婚率が低いからと言えよう。
寂しがり屋再婚が未婚化を生む?
では、離婚の影響が大きいとしたら、男女で離婚率は同じはずなのに、なぜ還暦独身率に男女で7%ポイントもの差がつくのかと思うかもしれない。
が、離婚しても再婚はする。その上で、再婚率は男性の方が高く、再婚相手は初婚女性を選ぶ割合が高いためである。
私はこれを「時間差一夫多妻制」と呼んでいるが、離婚した男性が再婚のたびに初婚女性と結婚することが多いために、結果として「未婚男性余り現象」が発生する。離婚した男性は孤独耐性がない寂しがり屋が多く、「離婚後の一人ぼっち」に耐え切ないのだろう。
また、「寂しがり屋」という観点でいえば、北海道や東北各県の離婚男性にも言える。これら北国地域の離婚率はかなり高めで全体的に40%以上の離婚率だが、離婚した男性の再婚達成率も西日本全体に比べて高い。
東北各県の男性還暦独身率は低くなっているが、それは皮肉にも未婚男性の初婚相手となったかもしれない未婚女性を奪うことになり、特に東北地方において、未婚男性の「結婚したくても相手がいない」という嘆きを作り出していることにもなる。
いずれにせよ、結婚したとしても必ずしも老後は一人にならないとは限らない。未婚も含めれば、男女とも60歳時点で3割は独身なのである。60歳といっても、現代の平均寿命から考えれば、少なくともあと20年は生きる時間がある。
さて、20年間一人でどう生きていくだろうか。その覚悟はあるだろうか。
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