2021年に反響が大きかった10の事件、その後どうなった?
2021年に配信した拙稿のうち、反響が大きかった10の事件を挙げ、この1年の動きやその後の状況について振り返ってみました。
【第1位】
「なぜ検察は池袋暴走事故で『禁錮7年』を求刑したのか 懲役刑との違いは?」
「池袋暴走事故に禁錮5年 控訴や服役、勲章はどうなるか、今後の展開は?」
拙稿で最も読まれたのは、池袋暴走事故の裁判に関する記事でした。犯人の男は禁錮5年の実刑判決を受け、ようやく自らの過失を認めました。高齢であるうえ、健康を害しているとのことでしたが、大方の予想に反して控訴や刑の執行停止を求めず、東京拘置所に収容されました。
もし初めから過失を認め、真摯な反省の情を示していたら、少しは遺族や被害者の処罰感情が和らいだでしょうし、裁判所もきちんと事故に向き合っていると評価したことでしょう。社会的なバッシングもはるかに少なかったのではないでしょうか。
【第2位】
「きょうから『送りつけ商法』の規制強化 不審な商品はすぐに捨ててもOKに」
「送りつけ商法」は手を変え品を変え行われてきた古典的な悪徳商法の1つですが、これまでは「14日間ルール」がありました。14日間にわたって商品の購入を承諾せず、業者も引き取りをしなければ、業者が返還を請求できなくなるというものです。
これでは消費者の負担が大きすぎます。そこで、7月に改正特定商取引法が施行され、このルールが撤廃されました。送りつけた業者が悪いわけですから、送りつけられた側は直ちに捨てていいし、代金を支払わずにそのまま使っても構いません。
【第3位】
「ニルヴァーナのジャケ写、モデルが児童ポルノと提訴 日本で摘発はあり得る?」
「ニルヴァーナのジャケ写 45年前のスコーピオンズ騒動との法的な違いは?」
ことしは米国のロックバンド、ニルヴァーナの大ヒットアルバム「ネヴァーマインド」の発売から30年ということで、ジャケット写真をめぐる裁判が話題となりました。全裸の赤ちゃんがプールの中で泳いでいるというものです。
モデルだった男性は、児童ポルノや児童虐待に当たるとして元メンバーらに多額の損害賠償を求めています。一方、ニルヴァーナ側は裁判所に訴えの棄却を求めており、11月に発売された「30周年記念エディション」でもジャケット写真の差し替えを行っていません。
【第4位】
「たけし氏の襲撃から1週間 なぜ犯人の実名が報じられないか、今後の捜査は?」
9月にTBSの敷地内でビートたけし氏の乗る車が襲撃された事件は、社会に衝撃を与えました。しかし、その後、犯人の実名や顔写真はおろか、捜査の経過や刑事処分の結果などが一切明らかにされておらず、報道もフェードアウトしています。やはり拙稿で記した背景事情があったということでしょう。
一方、TBSは同様の事件を防止するため、現場近くの通路に新たな柵を設置し、見回りを増やしたとのこと。生放送の出演後に襲撃されたということで、他のテレビ局も同様に警備を強化しているようです。
【第5位】
「『記念撮影を終え手を振る』菅首相を『各国首脳に無視される』に改変 何罪か?」
ことしもインターネット上の様々な誹謗中傷が問題となり、刑事事件として立件されたり、損害賠償を命じられる例が相次ぎました。法務省は侮辱罪に1年以下の懲役・禁錮と30万円以下の罰金を追加して厳罰化し、来年の通常国会に法案を提出する方針です。
法改正が実現すれば、(1)逮捕のハードルが格段に下がる、(2)時効が1年から3年に延び、捜査に余裕が生まれる、(3)教唆や幇助をした者まで処罰できるようになるなど、捜査に劇的な影響を及ぼすことになるでしょう。
【第6位】
「まさかの法定刑を超える判決宣告・求刑、なぜ起きた? 問題の所在を解説」
裁判における様々な凡ミスも話題に上りました。上限が懲役2年の事件に対し、東京地裁が懲役2年6ヶ月という違法な判決を言い渡したケースもその1つです。検察側の求刑と全く同じであり、裁判官は明らかにこれに引きずられ、条文の確認を怠っています。
「コピペ問題」も深刻です。裁判官が判決書を作成する際、過去の同種事案に関する判決を調べ、データベースからその内容をコピペしていると問題視されています。こうした「手抜き」があると、きちんと審理し、判決文を精査しているのか疑念が生じます。
【第7位】
「7月はカレンダーに注意 オリンピックで19日が平日、22、23日が祝日に」
ことしは開催延期となった昨年と同じく、「スポーツの日」「海の日」「山の日」がオリンピックの開会式や閉会式にあわせて変更されました。交通混雑を緩和するためです。
ただ、カレンダーや手帳の印刷が追いつかなかったので、手書きで祝日を修正しなければなりませんでした。うっかり忘れ、仕事や休暇の予定を入れてしまった人も多かったのではないでしょうか。ことし限りの特別な措置なので、来年の祝日は原則に戻ります。
【第8位】
「立てこもり事件で再燃か 『鍵付き完全個室』のネットカフェ、法的な問題は?」
6月に埼玉県のインターネットカフェで発生した人質立てこもり事件は社会を騒然とさせました。32時間以上にわたって立てこもった犯人の男は、逮捕監禁致傷罪で起訴されています。
この事件を受け、警察はネットカフェが犯罪に悪用されないように防犯指導などの対策を進めており、業界団体も本人確認の徹底といった自主規制を強化しているところです。
【第9位】
「ピーチ機内でマスク拒否の男逮捕 取調べ室や法廷でも拒否されたらどうする?」
ピーチ・アビエーションの機内で騒動を起こしたとして逮捕された男ですが、その後、威力業務妨害罪や傷害罪などで起訴されたほか、千葉の飲食店でもトラブルを起こしたとして再逮捕され、公務執行妨害罪や威力業務妨害罪で追起訴されています。
現在、大阪地裁で公判前整理手続が進められており、初公判は来年以降になりそうです。そのころにはコロナ騒動が完全に沈静化し、マスクを着用しない以前の法廷の姿に戻っているとよいのですが…。
【第10位】
「逮捕され片手に手錠をガチャリ その瞬間、ダッシュで逃げたら逃走罪になる?」
ことしも逮捕された被疑者がすきを見て逃げるとか、起訴後、保釈されたり勾留執行停止になったあと、行方をくらます被告人の存在が問題となりました。
法務省はこうした逃走事件を防止するため、不出頭罪の創設や諸外国のようなGPS端末の装着義務付けなどを検討しています。来年中には改正法案がまとまり、国会に提出されることでしょう。