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「飲んだら乗るな」は自転車も同じ 飲酒運転で逮捕や自動車の免許停止処分も

前田恒彦元特捜部主任検事
(提供:イメージマート)

 忘年会など何かと飲酒の機会が増えるシーズン。酒を飲んだあと、自宅まで近いからと軽い気持ちで自転車に乗り、帰宅する人もいるだろう。犯罪であり、場合によっては逮捕されたり、自動車の運転免許停止処分を受けたりすることもありうるので、注意を要する。

自転車も「車両」にあたる

 すなわち、道路交通法は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定している。自転車も「車両」にあたるから、飲酒運転はアウトだ。刑罰は次のとおり酒気帯び運転罪と酒酔い運転罪とに分かれる。

【酒気帯び運転罪】

・アルコールが呼気1L中0.15mg以上または血液1mL中3mg以上

→最高で懲役3年、罰金だと50万円以下

【酒酔い運転罪】

・泥酔してまっすぐ歩けない、ろれつが回らないなど、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態

→最高で懲役5年、罰金だと100万円以下

 自転車は長らく酒酔い運転罪だけが処罰の対象だったが、11月1日に改正道交法が施行され、自動車やオートバイと同じく酒気帯び運転罪も処罰されることになった。それから1か月以上が経過したが、すでに全国各地で検挙例が相次いでおり、逮捕者まで出ている状況である。

自動車の運転免許にも影響が

 さらに、もし自動車の運転免許を保有していれば、これにも影響を与えかねない。確かに自転車の飲酒運転と自動車の運転免許とは直接関係がない。しかし、自転車で飲酒運転をするような人物は、法律を守ろうという意識が低く、自転車はもちろん、自動車でもやりかねない。事故を未然に防止するため、免停の措置をとろうというわけだ。

 もっとも、免停と聞くと、違反点数の積み重ねで下される処分だと思っている人も多いのではないか。確かにほとんどがそのパターンだが、道交法は次の場合に一発で免許を取り消したり停止したりできるという規定を置いている。

「免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」

 警察も、自転車の飲酒運転を繰り返す者や事故を起こした者など、悪質な違反者が自動車の運転免許を保有していれば、この規定に基づいて免停処分を行うという方針を示している。

 現にこれまで自転車の酒酔い運転罪で30~180日の免停処分を受けた例が多々ある。11月1日に施行された改正道交法の酒気帯び運転罪を巡っても、すでに次のとおり大阪府の公安委員会が複数の違反者に対して免停処分を下しているところだ。

「公安委員会は改正道交法の施行を受け、酒気帯び運転で検挙された40~50歳代の男3人に、運転免許を6か月以内で停止する処分を行った」

読売新聞オンライン 2024/12/3(火)

 飲酒の機会が増えるこれからの時期は、繁華街などで自動車だけでなく自転車をも対象とした一斉検問が実施され、取り締まりも強化される。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」は自転車も同じだ。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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