たけし氏の襲撃から1週間 なぜ犯人の実名が報じられないか、今後の捜査は?
ビートたけし氏を襲撃した男の逮捕から1週間。社会に衝撃を与え、暴力団関係者だとも言われているのに、いまだに警察は男の実名や顔写真などを明らかにせず、マスコミも同様の姿勢を貫いている。
確かに、もし襲撃が顔と名前を売り込むためだったとか、組織を背景にしているといった事情があれば、実名などを大きく報じると男の思うつぼなので、これを避けるという配慮が働くのも当然だろう。
しかし、刃物を所持した銃刀法違反の容疑であれば、警察は逮捕時に実名などを明らかにするのが通常だし、マスコミも当たり前のように広く報じる。むしろ警察は、男の責任能力に疑いを抱き、慎重に見極めているのではないか。取調べでも、つじつまが合わない供述をしているという。
芸能界に入りたくて土下座したが無視されたとか、6月にもテレビ局付近で待ち構えていたと説明しているというものの、だからといってつるはしなどで襲撃に至るには飛躍がありすぎる。裏付けすらも取れていないのかもしれない。
一部メディアでは、男には覚醒剤の前科があり、周囲の関係者に対し、テレビを見ていたら画面に出ていたビートたけし氏から名前を呼ばれ、暴力団をやめて芸能界に来いと呼びかけられたので会いに行ったが、無視されたと憤慨していたなどと報じられている。
こうした話が事実であれば、幻覚や幻聴により被害妄想を抱いた末の犯行だった可能性が出てくる。そうなると、警察が実名を明らかにすることはないし、マスコミも仮名による報道が原則となる。
動機や経緯が了解可能なものか否かは責任能力の有無や程度を左右する。検察としても、捜査段階で簡易鑑定や本鑑定といった精神鑑定を実施し、これを見極めなければならない。しばらくは捜査の推移を見守る必要があるだろう。(了)