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「ウ戦争が長引くほど、米露が直接戦争するリスクが高まる」識者 プーチンはどんな場合米を核攻撃するのか

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(提供:Russia Ministry of Defense/REX/アフロ)

 ロシアが核弾頭をめぐり不穏な動きを始めている。

 国営インタファクス通信によると、ロシアは、米国のミサイル防衛を「無効化」できるとプーチン大統領が2018年3月に述べていた新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」を実戦配備し、核弾頭を搭載できる兵器としての運用を開始したという。「サルマト」は10以上の核弾頭が搭載可能で、射程距離は1万8,000キロと世界最長、テキサス州と同等の面積を壊滅できる威力があるという最大級の大陸間弾道ミサイルだ。

 ちなみに、2022年のウクライナ侵攻の2ヶ月後、プーチン大統領は「サルマト」について、「外部の脅威からロシアの安全を保ち、攻撃的なレトリックで我が国を脅かそうとする者を踏みとどまらせるだろう」と「サルマト」の抑止力の強さについても言及していた。

米国市民はベラルーシから退去するよう警告

 また、去る8月22日には、ポーランドのドゥダ大統領が、ポルトガルのデソウザ大統領との共同記者会見で「私は、ロシアの戦術核兵器がベラルーシに移送されるとのプーチン大統領の発言について、デソウザ大統領に伝えた。移送のプロセスは進行中であり、我々はそれを目撃している」とロシアがベラルーシに戦術核兵器の移送を始めたと述べていた。

 ちなみに、この前日の8月21日には、ベラルーシのアメリカ大使館が、同国にいる米国市民に同国からすぐに退去するよう警告を出している。

 さらに、8月31日放送のウクライナのテレビ「1+1」によると、ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ局長が、ロシアの戦術核兵器がベラルーシに納入されたと述べたという。

 もっとも、ブダノフ局長は“核兵器担当のロシア国防省第12総局は、ベラルーシが核兵器運用の準備が完全にできていないことを認識している“とも言及している。

プーチンが核を使うケースとは?

 戦術核兵器のベラルーシへの納入に「サルマト」の実戦配備。ロシアは米国やNATOとの戦いに備えているかに見えるが、エキスパートはどう見ているのか?

 Doctrine & Strategy Consultingの社長で、元国防情報局職員のレベッカ・コフラー氏は、「サルマト」の実戦配備について、フォックス・ニュース・デジタルで「プーチンは、米国やNATOに、ウクライナで核を使うオプションがあるという戦略的メッセージを明らかに送っている」と述べつつも、「プーチンはアメリカ本土を核兵器を使って物理的に攻撃することはないだろう。もちろん、アメリカがロシアを最初に攻撃する兆候をロシアが検知したなら話は別だ。つまり、サルマトの配備は抑止を目的としている。また、ロシアのメディアの多くは、サルマトは6分でロンドンを壊滅させると主張している英文記事をロシア語に翻訳したものを掲載している。抑止はこの場合、ウクライナを支援しているイギリスに向けられている。しかし、ロシアの情報機関がロシアがNATOに攻撃される寸前だと結論づけない限り、プーチンはロンドンやNATO諸国を攻撃しないだろう」との見解を示している。

 コフラー氏が懸念しているのは、多くのエキスパートの懸念同様、誤算により核兵器が使用されることだ。

「情報機関が誤った評価をしたことにより攻撃が許可された場合、紛争は制御できなくなる。ロシアとウクライナの間で起きているような地域紛争が誤算や誤解によって広がり、米国やNATOが巻き込まれると、ロシアはNATOに対して従来的に劣勢であることから、核を使用しなければならないと考えるだろう。そのため、核兵器は常に、ロシアの戦闘戦略の中心にある」

 同氏はまた、戦争の長期化による米露の直接対決も懸念している。

「この紛争が長引くほど、ロシアとアメリカが直接戦争するリスクが高まる。また、プーチンはバイデン政権がロシアとの戦争を恐れていることを知っている。だから彼は核というカードを強調している。これは私たちには難問だ」

 ロシアによるウクライナ侵攻から約1年半。バイデン政権はこの難問にどう対処していくのか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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