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米国とNATOのウクライナ支援“軍事機密文書”がロシアのSNSに流出 米紙 漏洩した極秘情報とは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナによるロシア攻撃に先立ち、アメリカとNATOがウクライナ軍を増強させるために立てた極秘計画の詳細を記した機密文書が、今週、米露のソーシャル・メディア上で拡散され、漏洩した。米紙ニューヨーク・タイムズ(4月6日付電子版)が、 バイデン政権の高官から得た情報として報じている。

 「トップ・シークレット」とラベル付けされ、「3月1日時点でのコンフリクト状況」と記されているその機密文書は、ツイッター及びロシアで約5億人の利用者を有す「テレグラム」というSNS上に投稿されたという。

 バイデン政権はその投稿を削除しようとしたが、うまくいっていないようだ。この機密文書は何者かによってリークされたか、あるいは、盗難されたと考えられており、ペンタゴンは現在調査中だ。

 機密文書には、極秘にされてきた重要な情報が含まれているという。たとえば、アメリカがウクライナに供与している高機動ロケット砲システムの使用率だ。高機動ロケット砲システムは、遠隔地から、弾薬庫やインフラ、軍隊密集地域などのターゲットを攻撃することを可能にするシステムだ。ペンタゴンはこれまで、ウクライナ軍がどれだけの頻度でこのシステムを使用しているか公表していなかったが、この文書はそれを明らかにしているという。

 また、機密文書は、いつ、どこで、どのようにウクライナ軍が攻撃を始めるかなどの具体的な戦闘計画は提示していないものの、兵器や軍隊の輸送予定、増強されるウクライナ兵の数、ウクライナ軍の部隊、装備、トレーニング、1月から4月までのスケジュールなどの重要な情報も含んでいるという。9つの軍隊に必要な装備は、戦車250台以上、機械化車両350台以上という具体的な数まで記されているようだ。

 さらに、この機密文書にはオリジナルの文書を変更している部分があると見られることから、ロシア政府がプロパガンダのために変更したのではないかとアナリストは分析している。

 例えば、文書はロシア兵の死者数は1万6,000人から1万7,500人と過小評価し、反対に、ウクライナ兵の死者数は7万1,500人と過大評価しているという。ペンタゴンはウクライナとロシアの死傷者数を20万人と推定していることから、アナリストはロシア政府による偽情報作戦ではないかと述べている。

 同紙は「ウクライナを支援する取り組みにおける、アメリカ情報機関の重大な(義務の)不履行」と機密情報が守られなかった事態を問題視している。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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