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ルイス・ネリを屠ったWBC暫定フェザー級チャンプがKO防衛

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 2021年5月15日に7回KOでルイス・ネリを屠った現WBC暫定フェザー級チャンピオンのブランドン・フィゲロア。

 井上尚弥とネリが前日計量の会場に姿を現す少し前、フィゲロアはラスベガス、Tモバイル・アリーナで、元WBOスーパーバンタム級王者、ジェシー・マグダレノを下して同タイトル初防衛に成功した。

 第9ラウンド終盤、フィゲロアの左ボディアッパーが、マグダレノのレバーを突き上げる。両膝をついてキャンバスにうずくまった元WBOスーパーバンタム級チャンピオンは、そのままカウントアウトされた。

Ryan Hafey & Esther Lin/PBC
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 過去にWBA/WBC統一スーパーバンタム級チャンピオンに就いているフィゲロアは、フェザー級に階級を上げ、自身のパワーが向上していることを示している。フェザー級転向後の3試合で、2度のKO勝ちをマークした。

Ryan Hafey & Esther Lin/PBC
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 とはいえ、今回のフィゲロアは、立ち上がりにペースを掴めず、4回まではマグダレノにリードされていた。頭をつけて打ち合った両者だが、あまり見栄えの良いファイトとは呼べなかった。敢えて述べるなら、井上尚弥のような芸術性が欠如していた。

 マグダレノは左カウンターを武器に、己のボクシングを展開したかったが、次第にフィゲロアの武骨かつ、荒々しい攻撃を持て余すようになる。ラウンドを重ねるに連れ、フィゲロアが攻撃の糸を手繰り寄せた。

Ryan Hafey & Esther Lin/PBC
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 試合後、勝者は振り返った。

「ただただ、我慢するしかなかった。マグダレノは俺のボディショットを腕でブロックしていたが、隙を作るには彼を疲弊させる必要があった。ひたすらチャンスを待っていたんだ。

 14カ月間戦わなかったから、自分は少し錆びていたかもしれない。ジェシーには脱帽だ。素晴らしい試合だった。 リング上ではとてもリラックスできた。ジャブで突破口を開き、ガードの間を破って隙を突かねばと、把捉していた」

Ryan Hafey & Esther Lin/PBC
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 マグダレノも言った。

 「接戦だった……失望しています。何とか起き上がろうとしましたが、あの角度で喰らってしまうと、試合続行は難しいですね」

 KOシーンについては、以下のように語った。

 「ラウンドの残り10秒の音が聞こえたので、スペースを作ろうと考えたんです。右腕を伸ばした瞬間、彼の左が私の肝臓を直撃しました」

 フィゲロアは25勝(19KO)1敗1分けに、マグダレノは29勝(18KO)3敗となった。

Ryan Hafey & Esther Lin/PBC
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 ネリもまた、フィゲロアのボディで沈んでいる。井上戦に向けた計量で、54.8kgとリミットを500gも下回ったネリ。今夜も、また腹をおさえてのたうち回るか。4冠統一スーパーバンタム級チャンピオンが圧勝するに違いない。フィゲロアは、井上尚弥の次戦に名乗りを上げるか。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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