日本型『 #ライドシェア 』は、単なるタクシー会社の進化系?市場解禁の3大懸念点
日本でも2024年、ようやく『シェアリングエコノミー』のひとつである『ライドシェア』が許可されそうな雰囲気になってきたと期待している。
■ライドシェア運転手、タクシー会社が雇用 業務委託認めず
しかし、…なんだか、雲行きが怪しくなってきている話もリークされはじめている。
つまり、一般の人が自分のクルマを使い、有償で人の送迎を助けるという『ライドシェア』というよりも、『二種免許』を持たない一般の人が、『マイカー』で『タクシー会社』との『雇用契約』を結び、『タクシー会社の雇用者』として人を運ぶという飯櫃(いびつ)なビジネスモデルになりそうだ。
これには3つの事態が懸念されると思う。
1.『ライドシェアの本質の喪失』
1つ目は、『ライドシェア』とは、名ばかりで『マイカー持ち込み』の『タクシー会社』の管理下である『雇用者』にすぎないことだ。この政策により、『ライドシェア』の基本的なアドバンテージが失われる可能性が多いにある。
元来、『ライドシェア』は、一般人が自分の車を使って他人を有償で運ぶサービスであり、フレキシブルで、伝統的な雇用形態でないところに価値が生まれている。従来のタクシー業界でカバーできなかった、
1.事前に乗車位置や降車位置の特定できることによる価格の比較や検討(行き先を伝えなくても可能)が可能。
2.支払いの手間がなく、当然、キャッシュレス、相互評価によるサービスとマナーの向上などの多彩なイノベーションが生まれた。
これらはタクシー業界でも、努力目標としてできたことだが、現状では、まったくできていない。さらに『タクシー配車』となると、『迎車』扱いとなり、乗車料金以外に『迎車料金』が上乗せされる仕組みとなっていることが多い。
米国では2023年12月18日より『UBER』がS&P500銘柄のインデックスとして登録されるなどの構成銘柄となっている。ソフトバンクGは所有する『UBER』全株を売却しているが、『DiDi』や『Grab』『OLA』は保有。楽天は『Lyft』を保有。
さらに、『タクシー会社による雇用を条件』にすることで、一般ドライバーは、単にタクシー会社の従業員として機能することになり、ライドシェアの革新性や独立性が損なわれる可能性がある。副業としても、社会的立場は、本業のタクシードライバー雇用者以上にはならないだろう。
2.『市場競争の制限』
『ライドシェア市場の競争を制限する恐れが考えられる。
タクシー会社がライドシェアの運営に関与することで、新規参入者や小規模なライドシェア事業者が市場に参入しにくくなる可能性があるだろう。
これにより、消費者にとっての選択肢が限られ、料金やサービスの質にも影響を及ぼす可能性がある。
むしろ、ライドシェアというよりも、ドライバーのいるカーシェアリングに近いのかもしれない。
3.『ドライバーの権利と福祉の問題』
タクシー会社による雇用が義務付けられると、ドライバーはタクシー会社の厳格な規則や条件に従わなければならなくなる。これにより、『ライドシェア・ドライバー』としての柔軟な働き方が制限され、収入や労働条件の面で不利益を被る可能性がある。また、タクシー会社の管理下にあることで、ドライバーのや自立性や給与、自由の選択肢が制限される恐れもある。
『隔日勤務』の1日16時間勤務のタクシードライバーから、勤務体制の自由度の高い『ライドシェアドライバー』へ転職できる機会も同時に失われる。
筆者は、海外でのGRABタクシーやUBERも経験しており、質やマナーの悪い、ぼったくりタクシードライバーよりも、『ライドシェア』の方が良いと感じたことが多い。実際に、GRABでは、ドライバーとしても登録し、言語を介さずにアプリのみで解決するので、英語の話者でなくても『ライドシェア』ならば『アプリ』を介して、道路がわからなくても、現地通貨を持っていなくても送迎が可能であった。
また、耳が不自由なドライバーさんでも登録でき、利用者にも、障害ありドライバーとして事前に知ることもできる。
事前に顧客の行きたいコースを見て、送迎をするしないを選択できるのも、ドライバーにとって受け入れない権利があることも利点でもある。日本の『UBER EATS』でもドライバーは同様に客を選べているのは意外に知られていない。
だからこそ、プラットフォームの事業者たちが『相互評価』を大切にし、道路案内システムの『Waze(ウェイズ)』などが発達してきたなどの経緯がある。
日本国内でも、『相乗り』相手を見つけるためのプラットフォームとして『notteco(ノッテコ)』というサービスがある。同じ目的地に向かう場合に、ガソリン代や高速代金をワリカンにすることによって、リーズナブルな移動体験が実現できる。
鳥取県ではライドシェア関連費用として7,000万円を補正予算として計上し、交通が失われている部分をコミュニティー全体で支えていく『鳥取型ライドシェア』として、タクシーやバス事業者と地域住民が連携した『ライドシェア』を計画している。
広義の意味あいで『ライドシェア』は、フレキシブルな働き方や移動を実現する。
有償で、アトランダムに顧客を送迎する『タクシー業界』とは全く違う特性を持っていると筆者は考えている。
■タクシー業界との共存が可能な『ライドシェア』
何よりも、タクシードライバーとの共存もエリア限定や、人口というよりも、需給のバランスの時間や曜日の市場原理で、デマンドが多い時には、『ライドシェア』も解禁時間というような、本業のタクシードライバーとの棲み分けが可能なはずだ。
日本の『Uber』といえば、デリバリーの『UberEats』のイメージだが、本来の『ライドシェア』ではなく『配車アプリ』としての側面も強い。それが、『UberTaxi』だ。行き先を伝え、配車をして、迎車がおこなわれ、精算もできる。
日本のタクシー業界との共存の方法のひとつでもある。
■タクシー業界の本質的な問題は『ライドシェア』ではない
もちろん、『ライドシェア』ではなく、『タクシー』でないと嫌だという消費者の選択もあるのだから、『ライドシェア』で言及される諸問題は、消費者側が『タクシー』のみを選択すればすむ話だと思う。同時にずさんなプラットフォーマーは厳重にとりまるべきだ。
『タクシー』乗り場にいきなり、『ライドシェア』と称する『白タク』がやってくるわけではない。『ライドシェア』ではなく『タクシーを選択してもらうためのサービス』をもっと考えるべきではないだろうか?
『ライドシェア』が問題で『タクシー業界がなくなる』わけではない。
むしろ、勤務体系や若年層が働きたくなる環境が重要だ。65歳以上が3割。さらに、低所得、長時間労働、多休日な労働条件などだ。
しかし、現在のままだとすると、自動車が登場してきた時代の、19世紀の英国の『馬車業界』が『赤旗法』で抵抗していたのとなんら変わらないのではないだろうか?
一番、重要なのは、『タクシー業界』ではなく、『モビリティ業界』全体として、現在の社会に最適化された利用者の移動手段を提供することではないかと思う。