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日本型『 #ライドシェア 』は、単なるタクシー会社の進化系?市場解禁の3大懸念点

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:イメージマート)

日本でも2024年、ようやく『シェアリングエコノミー』のひとつである『ライドシェア』が許可されそうな雰囲気になってきたと期待している。

□自民党の小泉進次郎元環境相ら超党派の国会議員は(2023年12月)12日、一般のドライバーが有料で顧客を送迎する「ライドシェア」の導入へ提言案をまとめた。第1段階として現在は認められていない都市部での導入を目指す。
第2段階は全面解禁に向け2024年にも新法制定などの法整備を求めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA085CU0Y3A201C2000000/

□「ライドシェア」の導入をめぐり、政府は、タクシーが不足している地域や時間帯などにかぎって、タクシー会社の管理のもとで一般のドライバーが有料で人を運ぶことができる新たな制度を、今年度中に設ける方向で調整していることが明らかになりました。
□一方、タクシー会社以外の事業者の参入については結論を持ち越し、議論を続けるとしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231212/k10014285911000.html


■ライドシェア運転手、タクシー会社が雇用 業務委託認めず

しかし、…なんだか、雲行きが怪しくなってきている話もリークされはじめている。

□一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」について、政府がタクシー会社による雇用を条件に認める方針を固めた。
□政府はタクシー不足の解消に向け、地域や時間を限ってライドシェアを認める方向で検討している。過疎地などで例外的に認めている「自家用有償旅客運送」制度を見直し、都市部や観光地でもできるようにする。運行管理はタクシー会社とする方針だ。
□ドライバーはタクシー会社と雇用契約を結ぶことを条件とする。海外で普及しているライドシェアとは異なる。
https://www.asahi.com/articles/ASRDD6T62RDDULFA00Y.html


つまり、一般の人が自分のクルマを使い、有償で人の送迎を助けるという『ライドシェア』というよりも、『二種免許』を持たない一般の人が、『マイカー』で『タクシー会社』との『雇用契約』を結び、『タクシー会社の雇用者』として人を運ぶという飯櫃(いびつ)なビジネスモデルになりそうだ。

これには3つの事態が懸念されると思う。

1.『ライドシェアの本質の喪失』


1つ目は、『ライドシェア』とは、名ばかりで『マイカー持ち込み』の『タクシー会社』の管理下である『雇用者』にすぎないことだ。この政策により、『ライドシェア』の基本的なアドバンテージが失われる可能性が多いにある。

元来、『ライドシェア』は、一般人が自分の車を使って他人を有償で運ぶサービスであり、フレキシブルで、伝統的な雇用形態でないところに価値が生まれている。従来のタクシー業界でカバーできなかった、

1.事前に乗車位置や降車位置の特定できることによる価格の比較や検討(行き先を伝えなくても可能)が可能。
2.支払いの手間がなく、当然、キャッシュレス、相互評価によるサービスとマナーの向上などの多彩なイノベーションが生まれた。

 これらはタクシー業界でも、努力目標としてできたことだが、現状では、まったくできていない。さらに『タクシー配車』となると、『迎車』扱いとなり、乗車料金以外に『迎車料金』が上乗せされる仕組みとなっていることが多い。

米国では2023年12月18日より『UBER』がS&P500銘柄のインデックスとして登録されるなどの構成銘柄となっている。ソフトバンクGは所有する『UBER』全株を売却しているが、『DiDi』や『Grab』『OLA』は保有楽天は『Lyft』を保有。

さらに、『タクシー会社による雇用を条件』にすることで、一般ドライバーは、単にタクシー会社の従業員として機能することになり、ライドシェアの革新性や独立性が損なわれる可能性がある。副業としても、社会的立場は、本業のタクシードライバー雇用者以上にはならないだろう。


2.『市場競争の制限』


『ライドシェア市場の競争を制限する恐れが考えられる。

タクシー会社がライドシェアの運営に関与することで、新規参入者や小規模なライドシェア事業者が市場に参入しにくくなる可能性があるだろう。

これにより、消費者にとっての選択肢が限られ、料金やサービスの質にも影響を及ぼす可能性がある。

むしろ、ライドシェアというよりも、ドライバーのいるカーシェアリングに近いのかもしれない。

出典:筆者作成
出典:筆者作成


3.『ドライバーの権利と福祉の問題』

タクシー会社による雇用が義務付けられると、ドライバーはタクシー会社の厳格な規則や条件に従わなければならなくなる。これにより、『ライドシェア・ドライバー』としての柔軟な働き方が制限され、収入や労働条件の面で不利益を被る可能性がある。また、タクシー会社の管理下にあることで、ドライバーのや自立性や給与、自由の選択肢が制限される恐れもある。

『隔日勤務』の1日16時間勤務のタクシードライバーから、勤務体制の自由度の高い『ライドシェアドライバー』へ転職できる機会も同時に失われる。

筆者は、海外でのGRABタクシーやUBERも経験しており、質やマナーの悪い、ぼったくりタクシードライバーよりも、『ライドシェア』の方が良いと感じたことが多い。実際に、GRABでは、ドライバーとしても登録し、言語を介さずにアプリのみで解決するので、英語の話者でなくても『ライドシェア』ならば『アプリ』を介して、道路がわからなくても、現地通貨を持っていなくても送迎が可能であった。
また、耳が不自由なドライバーさんでも登録でき、利用者にも、障害ありドライバーとして事前に知ることもできる。

事前に顧客の行きたいコースを見て、送迎をするしないを選択できるのも、ドライバーにとって受け入れない権利があることも利点でもある。日本の『UBER EATS』でもドライバーは同様に客を選べているのは意外に知られていない。


だからこそ、プラットフォームの事業者たちが『相互評価』を大切にし、道路案内システムの『Waze(ウェイズ)』などが発達してきたなどの経緯がある。

日本国内でも、『相乗り』相手を見つけるためのプラットフォームとして『notteco(ノッテコ)』というサービスがある。同じ目的地に向かう場合に、ガソリン代や高速代金をワリカンにすることによって、リーズナブルな移動体験が実現できる。

鳥取県ではライドシェア関連費用として7,000万円を補正予算として計上し、交通が失われている部分をコミュニティー全体で支えていく『鳥取型ライドシェア』として、タクシーやバス事業者と地域住民が連携した『ライドシェア』を計画している。


広義の意味あいで『ライドシェア』は、フレキシブルな働き方や移動を実現する。

有償で、アトランダムに顧客を送迎する『タクシー業界』とは全く違う特性を持っていると筆者は考えている。


■タクシー業界との共存が可能な『ライドシェア』

何よりも、タクシードライバーとの共存もエリア限定や、人口というよりも、需給のバランスの時間や曜日の市場原理で、デマンドが多い時には、『ライドシェア』も解禁時間というような、本業のタクシードライバーとの棲み分けが可能なはずだ。

日本の『Uber』といえば、デリバリーの『UberEats』のイメージだが、本来の『ライドシェア』ではなく『配車アプリ』としての側面も強い。それが、『UberTaxi』だ。行き先を伝え、配車をして、迎車がおこなわれ、精算もできる。
日本のタクシー業界との共存の方法のひとつでもある。


■タクシー業界の本質的な問題は『ライドシェア』ではない

もちろん、『ライドシェア』ではなく、『タクシー』でないと嫌だという消費者の選択もあるのだから、『ライドシェア』で言及される諸問題は、消費者側が『タクシー』のみを選択すればすむ話だと思う。同時にずさんなプラットフォーマーは厳重にとりまるべきだ。

『タクシー』乗り場にいきなり、『ライドシェア』と称する『白タク』がやってくるわけではない。『ライドシェア』ではなく『タクシーを選択してもらうためのサービス』をもっと考えるべきではないだろうか?

『ライドシェア』が問題で『タクシー業界がなくなる』わけではない。
むしろ、勤務体系や若年層が働きたくなる環境が重要だ。65歳以上が3割。さらに、低所得、長時間労働、多休日な労働条件などだ。
しかし、現在のままだとすると、自動車が登場してきた時代の、19世紀の英国の『馬車業界』が『赤旗法』で抵抗していたのとなんら変わらないのではないだろうか?
一番、重要なのは、『タクシー業界』ではなく、『モビリティ業界』全体として、現在の社会に最適化された利用者の移動手段を提供することではないかと思う。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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