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トランプ大統領とイーロン・マスクの未来戦略、それはエネルギー事業

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

2024年11月6日(水)、第47代米国大統領にドナルド・トランプ氏が返り咲いた。
テスラなどの代表をつとめるイーロン・マスク氏は、トランプの署名活動に参加した人に『毎日1人に100万ドル』キャンペーンをやるほど、トランプ陣営について、これみよがしにもほどがあるほどの支援を続けてきた。

X.com でも早速、『アメリカはまた朝になった』とイーロン・マスク @elonmusk は意味ありげなポストを残している。

一方、x.comの凍結から復活した @realDonaldTrump のx.com は選挙モードで、まだ当選の声明を発していない。 

■多大なイーロン・マスクのメリットとなる『政府効率化委員会』や『政府の要職』の可能性

(2024年)11月の米大統領選を戦う共和党大統領候補のトランプ前大統領は選挙戦で勝利すれば、政府効率化に向けた委員会を設立し、米実業家イーロン・マスク氏がトップに就任すると表明した
https://jp.reuters.com/world/us/MFDHBGE6CNNAVMRSMRFI2427XY-2024-09-05


2024年9月6日にトランプは『政府効率化委員会』へのイーロン・マスクのトップ就任を表明していた。また、トランプは、『マスク氏が望むのであれば要職に起用(2024年8月19日)』ともコメントしていた。

イーロン・マスクにとっては、千載一遇のチャンス到来ともなる。
また、今後のトランプ政権にとっても、2016年の組閣時の失敗を繰り返さないよう念入りに組閣がなされることに期待したい。

出典:KNN 図解 第一次トランプ政権2016年
出典:KNN 図解 第一次トランプ政権2016年

https://4knn.tv/trump-6/

イーロン・マスクの事業はすべて、国の規制に大きくかかわってきている。
テスラ社の事業だけでも、トランプ政権の打ち出す、『EV補助金の廃止』についてもイーロンは、米国内の競合のほうが打撃があるとし、中国の関税が課さられれば、『安価な中国産EV』の締め出しにもつながる。
『スペースX』ともなれば、『NASA』の予算は年間240億ドル(3兆6,000億円)にもなるが、『スペースX』に委託することにより、予算規模を縮小させることも可能となるからだ。『政府効率化委員会』のトップともなれば、利益誘導と揶揄されても、理屈がかなえば縮小案も考えられるだろう。
ちなみにテスラの第3四半期(2024/7-9)売上は251億ドルだった。テスラの純利益は21億ドル(10.8%)なので、単純に4倍すると84億ドル NASAの予算240億ドルはテスラの年間純利益の2.8倍の予算という読み替えることもできる。


■自動運転ロボタクシー『サイバーキャブ』などの規制緩和にも…

 

ロボットタクシーの『サイバーキャブ』の投入は2026年の予定だ。200万台〜400万台の生産でテキサス州やカリフォルニア州での導入を予定している。

自動運転のロボタクシーにとって、各州ごとによる法律による規制緩和も大きな事業の展開となる。
しかし、テスラにとって、実はEV事業よりも優先すべき事業が急成長していたのだ。


■テスラの好調な決算の立役者は、『EV事業』ではなく『エナジー事業』だった

出典:TESLA Q32024
出典:TESLA Q32024

https://digitalassets.tesla.com/tesla-contents/image/upload/IR/TSLA-Q3-2024-Update.pdf

2024年10月23日、テスラのEV事業の営業利益はYoYでは2%だが、エナジーストレージのエネルギー事業は、『YoY(前年比)』で52%、サービス事業で29%の伸びをみせ大きな可能性をみせている。

『エネルギー部門』には、『太陽光発電システム』や『エネルギー貯蔵システム』が含まれており、これらの製品が消費者および企業の両方での需要を喚起している。特に、住宅用および商業用の『Powerwall』や『Megapack』といったエネルギー貯蔵システムは、再生可能エネルギーの利用を最大限に引き出すために重要な役割を果たしている。さらに、気候変動への対応が急務となっている現代において、エネルギー自給を目指す個人や企業の間で、これらの製品の需要が急増しているので、TESLAはEVの事業は成熟期にはいるが、エネルギー部門の伸びは期待できるところだ。

エネルギー部門の成長を支える要因は、まず、世界的なエネルギー転換のトレンドが背景にあるのだ。

気候変動対策や化石燃料からの脱却が急務とされる中で、再生可能エネルギーへのシフトは加速している。特に、企業や自治体が環境負荷を軽減しようとする動きが強まっており、それに伴ってテスラのエネルギー関連製品への需要も増加する。

また、エネルギー貯蔵システムは、従来の電力供給における不安定性や、需要と供給のバランス調整における課題を解決するための手段として注目されている。これにより、電力のピーク時使用料を削減し、災害時のバックアップ電源としても有効だろう。加えて、各国の政府による再生可能エネルギー関連の補助金や規制緩和も、エネルギー貯蔵システムの普及を後押ししていると考えられる。

イーロンがトランプ政権と近づくことによって、これらのエネルギー部門での規制緩和は、テスラを大きく飛躍する関係性をもたらす可能性が高い。

さらに、テスラ自身がエネルギー事業への積極的な投資を行っていることも、成長を促進する要因となっている。工場の拡張や技術革新、そしてコスト削減を通じて、より多くの消費者や企業に向けたソリューションを提供できるようになっており、今後の『金のなる木』の成長が期待できる。


テスラって、昔はEVを作っていたんだよという時代がくるのかもしれない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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