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岸田首相 #所信表明 で言及した #ライドシェア とは?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

KNNポール神田です。

2023年10月23日月曜日、岸田首相の臨時国会においての『所信表明』では、8600文字分のうち、『経済』32回 0,74% 『デジタル』13回 0.6% 使われた。

そのうち、『ライドシェア』は1回のみ。0.06%の出現率だった。

所信表明全文 8,600文字

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231023/k10014234351000.html

■所信声明で、『デジタルと社会』について言及

(デジタルと社会)

デジタル技術は、社会課題を新たなアプローチで解決する「力」を持ちます。

新型コロナ対策の「デジタル敗戦」を二度と繰り返さない

デジタル化への変化の流れを確実につかんでいかなければならない。

「誰一人取り残さない」デジタル化を実現する。

こうした思いで、「マイナンバーカードの早期普及」、「デジタル田園都市国家構想」を進めてきました。

この固い決意の下に、アナログを前提とした行財政の仕組みを全面的に改革する「デジタル行財政改革」を起動します。

人口減少の下でも、これまで以上に質の高い公共サービスを提供するために、子育て、教育、介護などの分野でのデジタル技術の活用を、利用者起点で進めます。

地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります

私自ら、現場で奮闘する各分野の方々の生の声を聞いて、制度設計にいかします

規制・制度の徹底した改革、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を活用した予算事業の見える化にも取り組み、社会変革の実現、それを支える令和版の新たな行財政の構築を目指します。

あわせて、マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に向けて、原則として十一月末を目途に総点検を終えるよう、政府を挙げて対応しています

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231023/k10014234351000.html

■『ライドシェア』と『カーシェアリング』との違い

まずは、『カーシェアリング』は広義の意味での『レンタカー』の部類に値する。1台のクルマを共有して、自ら利用するという意味あいだ。

現在の日本では、一台のクルマを共有する『カーシェアリング』ビジネスは、レンタカー型、BtoC型、CtoC型の3つの型でしかない。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/assets/internet_committee_230330_08.pdf

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)

日本の『カーシェアリング』の車両台数は5万1,745台、会員数は2,63万6,121人、カーシェアリング車両ステーション数は2万0,371カ所となっている(2022年3月)。

1世帯あたりの『レンタカー・カーシェアリング料金』の年間支出は 2,627円(2019年)という驚くべき数値だ。総世帯に占める利用率がこの市場を物語る。2021年は1,780円だった。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2023年3月10日)

しかし、CtoC型の『anyca(エニカ)』などに代表される、個人のクルマを事業として、共有するという『CtoC型カーシェアリング』の普及率もまだまだ低い。※エニカの累計会員数70万人以上、累計クルマ登録台数2.8万台以上

筆者は、沖縄でメルセデスを専門として、『カーシェアリング』を複業としているが、まだまだ浸透していないと思う。レンタカー不足といいながらも、カーシェアリングは余っている状態だ。

CtoCカーシェアを利用するメリットとして「比較的安価な料金で利用できる」(51.9%)、「月会費が必要ない」(46.1%)、レンタカーやBtoCカーシェアでは提供されていないような自動車を利用できる」(40.7%)、「受け渡し場所を相談できる」(40.2%)を挙げる者が多い』が、まだまだ認知が低いので母数が伸びていない。

■ライドシェアとは?カーシェアリングとの違い?

ライドシェアとカーシェアリングは、共有の交通手段を提供するサービスであり、一見、似ているように見えるが、それぞれ異なるコンセプトと運用方法を持っています。

ライドシェアとカーシェアリングの主要な違いはこのように違う。

出典:筆者
出典:筆者

■伸び悩むタクシーへの年間支出金額1世帯あたり3,823円

一方、『ライドシェア』と比較されるタクシーの1世帯別の年間支出金額は、70歳以上の世帯が8,709円と最も多くなっており、最も支出が少ない30~39歳の世帯(2,919円)の約3倍となっている(平成22−24年平均)。

出典:総務省統計局
出典:総務省統計局

また、1世帯あたりの、全国平均年間支出額は5,103円だが、都市部によっての開きが大きい。東京都では1万2,238円

出典:総務省統計局
出典:総務省統計局

https://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/25_11.pdf

さらに、1世帯当たりの年間タクシー代の消費支出額は落ち続けている。

2022年のタクシー代の家計消費支出は前年比25.1%増の3,823円

前年より増加となったのは3年ぶり(2022年)

出典:GDFreak
出典:GDFreak

https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050001070100457/4#download

■『ライドシェア』の可能性にまだ『ライド』できないのか?

日本のタクシー業界は、1世帯あたりの金額が下がるだけでなく、最大の課題は、毎年1.3万人減少する22万人のタクシードライバー問題だ。毎年▲5.9%(1.3万人)以上もドライバーが、減少するとなると、17年後の2039年には、まったく無策だとタクシードライバーは、日本からは一人もいなくなってしまう計算となる。しかも、平均年齢59歳、そして、65歳以上が3割のタクシードライバーなので若返りが急務だ。業界が若返るには、それだけのポテンシャルが必要だ。

2023年、アメリカの大都市であるサンフランシスコでも自動運転のライドシェアサービスによる自動運転タクシーが動きはじめた。これからタクシードライバーに応募させるには、観光名所の『人力車』くらいの差別化が必要だろう。

アメリカの『UBER』は、2009年からのサービスを開始している。すでに14年。シンガポールの『GRAB』は、2012年からサービスを開始している。すでに、11年目の歴史を持つ。双方のサービスは共に、日本では『ライドシェア』ではなく、食べ物を運んでいる、まったく本業ではない、『フードサービス』でしか事業を行っていない。完全に出遅れるどころか、「デジタル敗戦」を二度と繰り返さないではなく、『デジタル敗戦』まっしぐらである。

筆者がマレーシアにいた頃は、GRABとUBERを比較しながら、利用していた。雨が降ったりイベントがあると、料金が極端に変わったりするからだ。共に、Waze.comというドライバー向けの地図アプリも秀逸であったのでドライバーと外国語であっても問題なく、車内での支払いもまったく不要だ。

■『ライドシェア』Grabタクシーの7つのメリット

出典:筆者マレーシアにて撮影
出典:筆者マレーシアにて撮影

1.タクシーよりも、料金が安い

2.行き先を伝えなくてもよい

3.会話がいらない

4.会計がいらない

5.互いに評価できる

6.愛想がいい

7.ボッタクリのタクシーに乗らないですむ

料金は3割ほど通常のタクシーより安く設定されている。乗車する前に到着地までの料金がわかるので、とても安心だ。

自分のいる場所から目的地で検索するので、行き先を伝える必要がない。アイコンの車がこちらに向かっているのがスマホでよくわかる。

それはドライバーがGoogleが買収したサービスWazeを使って渋滞情報を会話は相手の車種とナンバーを確認して、自分の名前を名乗るだけだから、その後の会話は必要ない。そして、ドライバーはWazeの音声の指示通り、運転しているから、道を間違うことがない。つまり道を知らないドライバーや英語が喋れないドライバーでもGrabの業務につくことができる。

Wazeは多言語対応の音声ナビゲーションでドライバーに道を指示する。

■深刻な社会問題に対応しつつ『ライドシェア』の課題に取り組む?

タクシードライバーの高齢化と共に、移動サービスの需給バランスを解決するためにも、『ライドシェア』の解禁が、首相の『所信表明』で聞かれたことは、わずかな期待を抱かせてくれた。

『地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります』

ただ、岸田総理の表明では、具体的にどのように取り組むのかは全くの謎である。

『ライドシェア』は、小さな国土で人口が密集している地域であればあるほど、利用の可能性と日本ならではのサービスの高度化、おもてなしが活かせる分野である。

新たな変化を閉ざして10数年、外資だけではなく、国内のスタートアップの成長も妨げたまま、明日もまた、65歳以上のドライバーが増え続ける社会構造を疑ってかかるべきである。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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