日本の「自動運転」に見る現代における『赤旗法』
KNNポール神田です!
2018年、自動運転中のUBERによる死亡事故(3月19日)、TESLAドライバー本人の死亡事故(3月23日)が相次いで発生し、TOYOTAやnVIDIAなども自動運転の実験を自粛している。
その一方で、米カリフォルニア州では、公道で完全無人の自動運転試験の申請受付を開始した。
自動運転による死亡事故が発生していながらも、完全無人自動運転の申請受付を開始するところが米国のテクノロジーに対する考え方を標榜している。それでは、日本の自動運転に関しての取り組みはどうだろうか?
高速道路での自動運転走行は「65秒」以内
日経新聞によると、国土交通省による「自動運転」の安全基準の見解はこうだ
15秒以上手放しでの自動運転で警報が表示され、そのまま手放しでの運転を続けると、自動運転のシステムが停止し、50秒後つまり65秒経過すると自動運転が手動運転に切り替わるプログラムの搭載を義務づけている。他にも、自動駐車の際は時速10キロ以下という基準がある。これって、高速道路では65秒しか自動運転できないこととなる。2019年10月以降の日本を走る自動運転のクルマには、こんな自動で運転できない規制が義務づけられるのか?これでは、19世紀のイギリスの『赤旗法(1865年)』が現代に甦ってきたようなものだ。
車線維持支援機能に関する国際基準を導入します(国土交通省2017年10月10日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000255.html
国土交通省の「自動運転の実現に向けた今後の国土交通省の取り組み(2018年3月)」の中にも、「全国4箇所において1名の遠隔監視・操作者が複数車両を担当する自動運転技術の検証や社会受容性の実験評価などを行う」とある…。これも3人いないと自動車が走れない『赤旗法』を想起させる。さらに…
19世紀の『赤旗法』で遅れをとったイギリス自動車業界
自動車が蒸気機関で動いていた19世紀後半のイギリス。自動車は必ず運転手、機関士、赤旗を振り、先導する人らの3人が揃って初めて市街地を走行することができた。また自動車は人の歩行速度以下(時速3km)で運行しなければならなかった。それが1865年に施行された『赤旗法(Red Flag Act,Locomotive Act)』であった。赤旗法は、蒸気自動車の普及を恐れた馬車業界の圧力が成立させたのだ。
1896年に31年続いたイギリスの『赤旗法』はついに廃止された。しかし、同様に20世紀初頭まで米国でも必ず誰か一人が赤い旗を持って自動車の十数ヤード先を歩かなければならないという法律は残った。
このチャールズ・スチュアート・ロールズこそ、1906年にフレデリック・ヘンリー・ロイスと組み、「ロールス・ロイス40/50HPシルバーゴースト」を誕生させた「ロールスロイス」だった。赤旗法への不満がドイツ、フランスに遅れをとっていたイギリスに「世界最高の自動車」をもたらした。
自動で走れない『自動車』に意味はない
日本において、テクノロジー的や問題や法的な縛りもあるかもしれないが「特区」であったり、「特例」をもうけてでも「自動運転」に関するイニシアティブを官民を総動員してでも作り上げるべきだ。「AI」や「ドローン」「自動運転」は、次の元号を迎えた時には、三種の神器、いや融合した形態で、新たな「モビリティ・テクノロジー」として未来のニッポンの起爆剤となっていることだろう。1日も早く、現在における日本の『赤旗法』を撤廃し、2020年、東京オリンピックという明確なゴールを目標の前に、すべての叡智を結集させなければならない。自動で走れない『自動車』に意味はないということを、真剣に考えるべきだ。
大砲を運ぶために生まれた蒸気で走るニコラ=ジョゼフ・キュニョーの砲車(1769年)から249年経過、カール・ベンツのガソリン自動車(1886年)から132年経過…。自動運転はそれらのパラダイム・シフトに近い革命を見せてくれるはずだ。ハンドルのない自動車が登場してはじめて『自動車』といえるのではないだろうか?