2023年世界『完全自動運転タクシー』時代の日本のタクシードライバー問題
KNNポール神田です
コロナ禍からの経済が復活し、インバウンド観光客が増え始めた。新たな需要に、供給が追いつかない『移動難民』状況が各地で現れている。コロナ禍で高齢者ドライバーが退職したタクシー業界が、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間となる『物流2024年問題』よりも先に、人手不足で、インバウンド対応に追われている。
■『移動難民』急増タクシー業界が抱える深刻な諸問題
■1年間で、1.3万人ドライバーが減少する、22万人タクシー業界
ドライバー全体の9割を占める法人タクシー運転者数が、『2019年(令和元年)では26万人に減少、2021年(令和3年)では22万人にまで減少』3年間で4万人減少している。1年で1.3万人減少する市場ということだ。2023年(令和5年)では、2.6万人減り19.4万人と推定できる。
しかも平均年齢が60.9歳
と高齢化している。2006年(平成18年)の平均年齢は55.3歳だった。
毎年▲5.9%(1.3万人)以上もドライバーが、減少するとなると、17年後の2039年には無策だとタクシードライバーは、日本からは一人もいなくなってしまう計算となる。
■低所得、長時間労働、しかし多休日なタクシードライバーの労働条件
タクシードライバーが、不人気な理由は、低い年収と1日16時間に及ぶ長労働時間のふたつだ。
年間所得が全産業の平均の半分で、労働時間が全産業平均よりも長いという労働条件を改善するしかない…。一方、実質労働日数は13日間と、一ヶ月のうち半分は休みだが、24時間のうち2時間の休みはあれど、16時間はクルマの中で、同じ姿勢で運動することなく乗務するのは、事故リスクも含めて激務といえよう。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/toushi/160127/item1-2-1.pdf
■平均年齢59歳、65歳以上が27%のタクシードライバー
さらに、拍車をかけるのが、タクシー運転手の高齢化だ。全産業に占める65歳以上の比率は5%にもかかわらず、タクシー業界では3割に至る(2015年当時)
https://mainichi.jp/articles/20170211/k00/00m/040/167000c
さらに、2022年には、20〜30代は5%未満、最大のボリュームゾーンは、70-74歳で2割強、65-69歳で2割弱と高齢者が支える労働環境となっている。65歳以上が4割前後となっている。いわば、世間では定年している人たちが働いているイメージだ。平均年齢が60.9歳というと、5年先には、必ず大量の退職者離職者がでることが想定できる。
■『移動難民』解消にはデジタル化シェアリング化自動化が必須!
インバウンド需要回復は、2023年度で5.9兆円とコロナ前の2019年の4.8兆円を大きく上回る予測だ。これでも中国の団体客が復活が1/4の状況だ。現在の訪日観光の中国人のビザ発給には年収50万元(1,000万円)必要で敷居が高い。ビザなしの入国が可能なクルーズ船が中国観光客に人気なのはこのためだ。2019年訪日観光客は過去最高の3188万人で中国は3割(959万人)を占めている。
■2023年8月10日以降、中国の団体客が解禁!3年半ぶり
2023年8月10日より、日本への団体旅行を中国政府が解禁した。これにより、ホテルや移動の混雑はコロナ以前の状況へ回復しつつある。いや、2019年から、タクシードライバーは、▲6.6万人(2019-21年比▲4万人+2022-23比▲2.6万人)を考慮すると、『移動難民問題』は今後、さらに拍車をかける。
もう、日本では、特に人間がタクシーを運転する発想はやめたほうがよいのは明確だ。
一方、都内の運転手では新卒採用を進め、16時間業務で『配車アプリ』利用が3割を占めるようになった。16時間業務には2時間以上の休憩時間が義務づけられ、1ヶ月の労働日数は11〜13日と月の半分は休みという働き方が選べる。副業も可能な場所も増えた。運転している間は、いろんなことを考える時間に充てることも可能な職場だ。
配車アプリも増え、「GO」や「S.RIDE」「Uber Taxi」「DiDi」などの配車アプリによって働き方が効率的にかわりつつある。経験値に頼り、非効率で非エコな『流し』の文化からDX化された予約と目的地指示、精算システムが生まれている。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/612412
インバウンドの復帰を超えて、新たなインバウンドの大量流入問題が2023年内に発生するのは明確なのだ。
観光立国推進基本計画(国土交通省)では、2025年大阪・関西万博もふくめ、インバウンド消費5兆円、国内旅行消費20兆円、訪日外国人消費20万円/人 が目標として掲げられているが、移動問題、宿泊問題の具体的な解決策は論じられていない。
出典:国土交通省観光庁 観光立国推進基本計画 2023年
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001597357.pdf
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001597355.pdf
■サンフランシスコの『完全自動運転タクシー化』の黒船を前にして
2023年8月10日、米カリフォルニア州は、サンフランシスコ全域で自動運転タクシーの自律走行車数に制限を加えない営業運行を承認した。
合計500台ものGoogle傘下の『Waymo』とGM傘下の『Cruse』の『完全自動運転タクシー』が稼働できることとなった。
特筆すべきは、2023年、坂道も多く、人口も多く、停車しているクルマも多い、そして霧も多い、有数の市街地のサンフランシスコ全域で完全自動運転タクシーが商用で走行できるようになったことだ。
日本で『UBER』といえば、『デリバリー』の代表だが、本来は、『UBER TAXI』というカーシェアリングのサービスである。
日本は、シェアリングエコノミーの『後進国』としても著名だが、『完全自動運転タクシー化』も遅れることによって、さらに多大な『機会損失』を生み出してしまうことだろう。
業界の反発やロビー活動だけではない、日本独自のファンダメンタルズが『労働人口問題』だ。
■日本の労働人口問題を解決するには…
『物流2024年問題』も現在のタクシーによる『移動難民』の問題はすべてワン・イシューの理由であり、『労働就労人口』の減少である。就業者数(15〜64歳)は,2021年平均で 6,667 万人と,前年に比べ9万人の減少だ。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/report/2021/pdf/summary1.pdf
さらに、2022年の出生数が80万人を割り、77万人となった。合計特殊出生率は1.26人と2005年と並んで過去最低。松野官房長官は『出生数が5年間で20万人近く減少した』『静かな有事』と見解している。
https://jp.reuters.com/article/birth-rate-idJPKBN2XO0EB
■『団塊ジュニア』の『ジュニア』に異次元政策必須!
https://www.daiwa.jp/lp_dc/ideco/column/article_201/
また、2022年の国内死亡者数は156万人だった。2022年は、77万人生まれて156万人が、お亡くなりに、つまり▲79万人の人口減だ。生まれて来る2倍のスピードでお亡くなりになる。そして、高齢化が進む。
そして、『団塊世代』が要介護世代となり、『団塊ジュニア世代』が支えるのはなんとか維持できそうだが、『団塊ジュニア世代』が要介護世代となった時に支える方法は、現在の5年で600万人弱の『団塊ジュニアジュニア世代(20〜29)』が、家庭を持ち、子供を2人、いや3人以上産めば、安心という、本当の異次元の政策が今すぐに必要だ。しかも妊娠してから大人になるまでの20年間にわたる施策でないと意味がない。
『団塊ジュニアのジュニア世代』は、1年あたり120万人で構成されているが、80万人割れの出生数だと、毎年▲40万人+▲156万人(お亡くなり)=約200万人の人口機会の損失が継続することとなる。
これを、埋め合わせるだけの人口と産業と保障の財源を確保するならば、すべての『シェアリングエコノミー』の規制を全撤廃するなどで新たな産業と、労働人口に依存しない『全自動社会』が必要となってくる。
■異次元の少子化対策 子供手当、一人当たり1,000万円は?
同時に少子化対策で、異次元というならば…
5年間限定で、第一子に1,000万円、第二子に1,000万円、第3子に1,000万円を付与すると、年間で100万人の新生児が増える。予算額は10兆円だ。5年間維持できると500万人に増える。予算はそれでも50兆円。国債でまかない、これくらいの政策を打たなければ少子化問題は解決しない。当然、赤ちゃん関連市場だけでなく、家のローンが組める、クルマを買う、旅行をするなどだ。10兆円もの直接の経済対策が打てる。もちろん、20年後、子供が働きだし、一人当たりの生涯収入を2億円とすると、4,000万円ほどの税収も将来的にあるはずだ。
■異次元の規制緩和で『完全自動運転タクシー』へ舵取りすべき!
まずは、日本の巨大産業である自動車関連サービスに、異次元の規制緩和が一番、コストをかけずに、関連産業を発展させることが可能となる。
『マイナンバーカード』ひとつ普及させられない国で、『完全自動運転タクシー』などは夢の夢だと思うが、世界でのテクノロジーの進化をキャッチアップし、そのジャンルでの既得権を確保しなければ、この国の逆ピラミッドの構造化と同様に何も生産性を産まない老齢大国になるのは中学生でも理解できることだろう。
与党は、現在ではなく、将来を見据えた異次元の政策を、野党もウケる批判だけでなく、政策で熱く訴えていくべきだろう。
人口増加は必須条件ではないが、老齢化は確実なので、人的コスト負担か労働力負担かのどちらかは必要だ。
日本でも、まずは、本来のライドシェアアプリの『ウーバー』のようなシェアリングサービスを早急に展開しなければ、『自動運転タクシー』がやってくる前にタクシー業界いや、国内、自動車関連サービスそのものが崩壊してしまう。
参考:
https://wired.jp/article/robotaxis-cruise-waymo-san-francisco/
■西アジア3億人のピラミッドと日本1.2億人は異次元の差!
さらに、日本の問題だけでなく、世界の社会構造を人口ピラミッドで比較すると、現時点での日本の人口政策がいかに重要かが見えてくる。
労働人口をまかなう少子化対策、もしくは、労働力を補うロボットやAI、自動運転、いや、そのどちらも同時に進める国家の経営判断が必要だろう。
日本1.2億人や中国14.3億人のピラミッドは、最終チャンスであり、西アジアの3億人やインドの14.3億人には新たなヤングパワーの将来が見える。同時にUSの3.4億人の安定感さえ感じさせるピラミッドだ。
これらのポピュレーション×自動運転×生成AIという新産業のべき乗での掛け算が必要なのだ。
https://www.populationpyramid.net/japan/2023/
■中国では『完全自動運転タクシー』のゴールドラッシュ!
人口が日本の10倍以上の中国が『完全自動運転』に拍車をかけるのは、20年後の日本の少子高齢化を追いかけるからだ。
中国の『自動運転タクシー』では、キャンペーン中で無料で走っている。
『自動運転タクシー』が社会に浸透するためには、『乗客側の意識変化』が最も重要だからだ。
中国の『完全自動運転型社会』への舵の切り方は、多少、乱暴に見えるかもしれないが、逆人口ピラミッドに対する異次元対策としては、当然なる想定内での、規制緩和なのかもしれない。
中国では、このように、自動運転ベンチャーのスタートアップが大量に誕生している。2023年4月で『レベル4』の自動運転で限定的に、少子高齢化を1.2億人で、ただ眺めている国家と、14.3億人の食いぶちを必死で模索する国家との矜持の違いのような気がする。…とはいえ、どこもまだ2022〜2023年を機会として開始したばかりだが、『実証実験』ではなく『商用サービス』と開始しているのとでは、雲泥の差といえよう。
■世界第二位の検索エンジンの『百度(Baidu)』の自動運転
2022年8月には、重慶市と武漢市の2都市で、中国で初めて公道で完全無人でのタクシーサービス提供の許可『蘿蔔快跑(ルオボークワイパオ)』
2022年12月北京、2023年6月、深センで完全無人商用サービス開始
■中東UAEに進出 『WeRide』
■世界最多1,000台の『AutoX』
■トヨタ出資の中国『Pony.ai』
中国の『トヨタ(TMCI)』『広汽トヨタ』と自動運転の合弁会社