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アジアで話題のGrabタクシーに乗ってみた

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
空港でタクシー呼び込みは無視してGrabタクシーを呼んでみた

KNNポール神田です!

UberのCEOのトラビス・カラニックが休職する話題や、アカウントハッキングが横行する中、アジアで好調に業績を伸ばしている配車アプリがGrabタクシー(本社:シンガポール)だ。

Grabタクシーは2012年からサービスが始まり、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、東南アジアで利用者が急増している。

Uberとの差は、面談により、身元確認ができたドライバーとだけ契約している点だ。

2014年にソフトバンクらが300億円を出資し、筆頭株主に躍り出た。ソフトバンクは中国最大手のディディ・チューシン(滴滴出行)と各国の配車サービスに共同出資し、インドやインドネシアでも展開し、携帯電話事業以外の第二、第三の次世代プラットフォームを睨んでいる。

何よりも、ディディ・チューシン(滴滴出行)には、ソフトバンクが約50億ドル(約5650億円)を出資、他にも中国の騰訊控股(テンセント)や中国アリババ集団、米アップルなども出資し、配車サービスによる、ステークホルダー連合ができつつあるのだ。しかし、それらの情報を日本で知っていても、なぜそんなに配車サービスがそんなに熱いのか今ひとつわかりにくい。筆者はそんなネット最新のサービスを享受できない日本からではなく、それらの熱い最新ITを体験すべくクアラルンプールに拠点を増やした。

もはや、かつての東南アジアではない…

エアアジアで、マレーシアのランカウイ島に到着した。空港では東南アジアでは昔からおなじみの空港でのタクシーでの客引きが横行している。ホテル名を告げても、遠回りしたり、チップを要求したり、悪徳タクシーは東南アジアの旅の日常茶飯事だった。しかし、GoogleマップのGPSで行き先をチエックできてからは、助手席に乗り込み、スマホでマップをチェックしながらで悪徳タクシーを監督することができるようになった。…しかしだ、Grabタクシーを利用することによって、そんな煩わしいことは一切必要にならなくなった。

Grabタクシーの7つのメリット

筆者のスマホとドライバーのスマホ
筆者のスマホとドライバーのスマホ

Grabタクシーのメリットはとてつもなく大きい。7つのメリットがある。

'''1.料金が安い

2.行き先を伝えなくてもよい

3.会話がいらない

4.会計がいらない

5.評価できる

6.愛想がいい

7.ボッタクリのタクシーに乗らないですむ'''

料金は3割ほど通常のタクシーより安く設定されている。乗車する前に料金がわかるので、とても安心だ。自分のいる場所から目的地で検索するので、行き先を伝える必要がない。アイコンの車がこちらに向かっているのかもスマホでよくわかる。

車が近寄ってくることが車のアイコンでわかる!
車が近寄ってくることが車のアイコンでわかる!

それはドライバーがGoogleが買収したサービスWazeを使って渋滞情報を会話は相手の車種とナンバーを確認して、自分の名前を名乗るだけだから、その後の会話は必要ない。そして、ドライバーはWazeの音声の指示通り、運転しているから、道を間違うことがない。つまり道を知らないドライバーや英語が喋れないドライバーでもGrabの業務につくことができる。

Wazeは多言語対応の音声ナビゲーションでドライバーに道を指示する。

Wazeが音声ナビゲーションする画面
Wazeが音声ナビゲーションする画面

GoogleMapよりも便利とドライバーは言う。GoogleがうまいのはGoogleMapと統合しなかったことだ。Wazeはドライバーに特価したアプリだからだ。

そして何よりも現地に到着したら、何もせずに、「テレマカシー(ありがとう)」と言っておりるだけだ。現地貨幣で支払ってお釣りをもらったり、領収書とかいうと、ペンを探し出す始末のあの時間が一切ない。クレジットのサインもいらない。ついたら、降りるだけなのだ。これはもう、普通のタクシーに乗る意味が見出さえない。さらに、ドライバーを評価する画面がでているので、おちついた頃にその画面で何もトラブルが無ければ満点をつければ良い。この評価制度のおかげで、Grabのタクシーの人たちは、とても愛想がいい。イスラム社会ではサービスに対して興味を持つ人はあまり多くない。特にタクシーの運転手ともなると、いやいや仕事しているケースも多く、無愛想であったりするが、Grabのタクシーは評価が報酬につながることをよく知っている。逆に愛想がいいのはかつては悪徳ドライバーだったりする(笑)そう、ボッタクリほど愛想が収入に関係するからだ。

平均収入をはるかに超えるGrabドライバー

KL市内で多く見るGrabタクシーの広告 Uber広告はなし
KL市内で多く見るGrabタクシーの広告 Uber広告はなし

5つ星ドライバーの人に月給を聞いてみた。2年で連続満点のドライバーはWazeに頼ることなく、ガンガンスピーディーに飛ばし、愛想もよい。月給はなんと8000リンギット約20万円だ(@25円換算)。マレーシアの平均月給は5000リンギット約12.5万円だから160%増である。また、頭にヒジャブをまとったイスララムの女性ドライバーは、英語が全く話せないドライバーだったが、マレー語でもドライバーができる。彼女は育児の合間にGrabタクシーで働いているという。月給を聞いたが、言葉がうまく伝わらず「Good」だけ答えてくれた(笑)。

そう、道がわからなくても、英語がしゃべれなくても、Grabは面接で合格すれば、ドライバーになれる。そう、女性でも、雇用先のない若者でも、車さえあればGrabタクシーで生計を立てることができるのだ。一方、かつてタクシー運転手だったGrabドライバーは、「いずれタクシー業界はなくなるから、Grabで働く、タクシーで客待ちしながら流すのって非効率。しかしGrabはいずれ自動運転に変わるだろう。しかし、その頃の俺はGrabで儲けて引退しているから大丈夫!」と笑っていた。思わず、彼にはチップを上げたくなったが、Grabにはそのチップをリアルタイムにあげる機能がない(笑)。

Grabタクシーの進化はそのまま自動運転へと引き継がれるだろうが、すべての車が自動運転化するにはかなりの時間がかかる。それまでに配車アプリはいろんなサービスを開始する。

間もなく、Grabは富裕層向けにヘリコプターの配ヘリコプターサービスを開始する。

そう、このネットサービスが起こす社会への大変化は、日本で「知っている」だけだと享受しにくいのだ。

最初は戸惑うGrabタクシー

今では、慣れたGrabタクシーだが、最初は戸惑うことが多い。

※注意点

・自分の居場所に必ずくるとは限らない

・GPSの精度の問題

・青いピンのところが集合場所

・青いピンにこないドライバーもいる

・ダメならばキャンセルできる

・余裕をもって呼ぶ 5分くらい先に呼ぶ

・スマホの電池が無い時は注意。乗り込むまでには電源必須。

・待っている間に、暇つぶしできる、到着予想ゲームや早く着いたら、チップを上げるなどの「暇つぶし」の仕組みがほしい。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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