『マイナ保険解除』の『資格確認書』申請は紙ベース申請 なぜダウンロードさせないのか?マイナポータルは
KNNポール神田です。
従来の『健康保険証』は2024年12月2日に廃止され、新規発行が終了する。それに伴い、ICカードの搭載された『マイナンバーカード』に『健康保険証』の情報が紐づけされ電子化された『マイナ保険証』として運用でき、合理化でき、偽装なども防げ、医療費削減に最大の効果を発揮すると言われている。※従来の保険証も有効期限まで利用できる。
しかし、個人情報の漏洩などを危惧し、『マイナンバーカード』との紐づけを拒否したい人向けに『健康保険証』の廃止に変わり『資格確認書』が発行されることとなっている。それがか今回の『マイナ保険証の利用登録の解除申請』という手続きとなっている。『資格確認書』があれば最大5年間(2024年の発行で2029年まで)の有効となる。しかし、『マイナ保険証』のような医療情報の紐づけの恩恵は預かれない。いまから申請しても1〜2ヶ月かかるので2024年ギリギリの到着だろう。
現在、全国民のうち『マイナ保険証』と紐づけをしている人は6割。つまり4割の4,700万人には新たに『資格確認書』を交付することとなる。封書は2024年10月1日から1通110円。郵便代だけでも51.7億円発生することとなる。
何よりも、今年(2024年)12月2日に現行の保険証の新規発行は停止されるが、現在、使用している保険証は、その有効期限まで(最長、来年(2025年)12月1日まで)、使用可能であることをもっと告知すべきであろう。
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/faq-insurance-card
『利用登録の解除申請』の792件の少なさは?
今回の『利用登録の解除申請』の792件というのは恐ろしく低い数字だと筆者は感じた。それだけ解除がしずらいと考えることもできる。そして発行プロセスに2週間くらいかかるので2024年10月28日からの受付なのでこの量は氷山の一角にすぎない。
デジタル化を掲げるにもかかわらず、解除のプロセスが『紙ベース』に依存し、処理の遅延や複雑さが制度の信頼性を損ねているのだ。
マイナンバー関連の情報の一元化を唱えている『マイナポータル』のサイトでさえも、『具体的な解除手続きはご自身が加入している保険者に対してお問い合わせください』という文言のタライまわしになっている。
https://faq.myna.go.jp/faq/show/3570
紙ベース申請の現状 送り送られの郵送の時間が必要
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001317966.pdf
マイナ保険証の登録解除は、デジタル利便性を享受するための制度にもかかわらず、申請には紙ベースの手続きが必須である。ユーザーは健康保険組合や自治体の窓口を訪れ、申請書を提出しなければならない。このアナログ的な対応は、デジタル化を求める国の方向性と逆行している。ユーザーにとって、デジタル管理の恩恵が損なわれていると感じざるを得ない。
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001317966.pdf
協会けんぽの場合は専用ダイアルへ 3分8.5円の有償
協会けんぽの場合、まずは協会けんぽマイナンバー専用ダイアル 0570-015-369(ナビダイヤル)へ電話し、オペレータに『マイナ保険証登録解除希望』を伝える。住所、氏名、電話番号を伝える。
すると1週間から10日で解除のフォームが送られてくる。家族分の申請も可能だ。そしてそれを記入し、各協会けんぽの支部へ送付するやりとりが必要となる。
しかし、これらも解除の用紙が『ダウンロード』ができれば、このスキームはまったく必要がなくなる。
そして、現在、保険証を持っている人であれば、その保険証は2025年12月1日までは利用できるので、焦って登録解除をする必要はない。マイナンバーに医療情報が紐づけられるのが嫌という人にとっては、この処理が必要だ。
いったい、何のためのデジタル化なんだろう?
遅延する処理期間
さらに、申請手続きに1〜2ヶ月の時間がかかるという現実も深刻である。この遅延は、特にプライバシーに敏感なユーザーにとって許容できない問題である。迅速な処理が期待されるデジタル制度であるにもかかわらず、あまりに非効率であることが制度の根幹的な問題を露呈している。
遅延の理由は、現在の『保険』の有効期限が切れて『無保険状態』にならないように慎重に確認する手間に時間がかかると、協会けんぽのオペレーターは話す。
デジタル化の恩恵を享受できないユーザー
マイナンバー制度の根本的な目的は、サービスの一元管理を通じてユーザーが利便性を享受できるようにすることであった。しかし、多くのユーザーはその利点を実感できず、デジタル手続きが直感的でなく、煩雑な解除手続きが信頼を損ねる原因となっている。このギャップがデジタル化の信用問題を招いている。政府の取り組みが、表面的なものであると指摘する声も少なくない。
登録解除申請の現状と今後の課題
登録解除の申請は、制度開始から2週間で全国792件が記録されている。厚労省は、申請の具体的な理由を把握していないが、福岡資麿厚生労働相は『政府として原因の把握と分析が必要である』と述べ、制度の周知に努める意向を示した。当初解除不可だった仕組みが、2024年10月28日以降、ユーザーの声を受けて変更されたことは注目に値すると筆者は思う。
『資格確認書』の導入
登録を解除すると、新たな健康保険証の発行が終了する2024年12月2日以降、代わりに『資格確認書』が交付されることになっている。この対応は一時的な解決策に過ぎず、真のデジタル化を実現するための根本的な改善が急務とされる。
『資格確認書』を政府主導で発行するならまだしも、各保険証発行団体が行うので、デジタルによる合理化どころか、デジタルによるカオス化を招いてしまっているのだ。通常業務以上に、デジタル化することによって業務が増えるというカオス化だ。このあたりの制度設計に関しても、新たなデジタル大臣の平将明氏に総合的なデザインを期待したいところだ。
https://www.digital.go.jp/about/member/tairamasaaki
真のデジタル変革に向けて
この制度の課題は、迅速かつ利便性の高いデジタル変革が求められていることを示している。
例えば、マイナポータル上でのオンライン一括解除機能の提供が必要であり(※一部の自治体では可能)、これによりユーザー体験の向上と、エラーフリー処理が可能となるだろう。デジタル化の意義を取り戻すためにも、簡素化されたプロセスと信頼性の向上が強く求められている。
また、デジタル庁の統括は、デジタル大臣なので、組閣のたびにコロコロ変わるようでは、長期的なヴィジョンを策定しずらくなっている。
政府管轄であっても、デジタル化に関する長いヴィジョンを遂行するためには、政府の任命責任からは、離れた場所におかなければならないのではないだろうか?