一人っ子は結婚できない?兄弟姉妹数別に生涯未婚率を計算してわかった驚きの数字
第3子以上の出生比率はあがっているが…
もう何年も前から、少子化のニュースが出るたびに、「少子化ではない。問題の本質は少母化である」という話を根気強く続けてきたおかけで、最近ようやくテレビでもネットでも「少母化」が言われるようになり、その本質的な部分について議論しようとする地方の議員さんなどが増えてきた。
→出生数が増えない問題は「少子化」ではなく「少母化」問題であり、解決不可能なワケ
そもそも、一人の母親が産んでいる子どもの数は変わっていないどころか、直近2021年の出生順位別の構成比でいえば、第3子以上の出生構成比は約18%と、およそ30年ぶりの高水準で、1970年代前半の第2次ベビーブーム期の15~16%より多い。つまり、比率だけでいえば、子を産んでいるお母さんたちは1970年代よりも3人以上を産んでいる。
しかし、3人以上産む母親がいる一方で、いろいろな事情により一人しか産めなかったという母親も増えていることについては、以前こちらの記事に書いた。
→「貧乏子沢山」どころか「裕福じゃなければ産めない」経済的少子化と「裕福でも産まない」選択的少子化
一人っ子が多い世帯というのは、低所得世帯と高所得世帯との二極化しているのである。
一人っ子率はジワジワ増加
では、男女年代別で一人っ子の推移がどのようになっているのかというグラフが以下である。
これは、健在する兄弟姉妹の数を表したものであり、死亡した人は含まれていない。よって、高齢者になればなるほど死別により兄弟姉妹の数は減少するため64歳までの統計にとどめている。
これによれば、現在35-49歳あたりの年齢層が男女とももっとも一人っ子率が低かったことを示している。2019年の調査なので、生まれ年にすれば1970-1984年あたりに生まれた人たちである。
男女比を見ると、若干だが男の一人っ子が多い。一方で、20代をみると、男女逆転して女の一人っ子率が高くなっている。
0-19歳はまだ今後出生が増える場合もあるためグラフから割愛しているが、この年代の一人っ子率は男15%、女21%であり、女の一人っ子率が高いという傾向は、今まさに出産世代の人たちにも継続している傾向である。
もちろん、女児一人っ子率が高いからといって、出生性比が大きく変わるほどのボリュームにはならない。出生性比は女100に対して男105という傾向は相変わらず続いている。
一人っ子の生涯未婚率
さて、この一人っ子率の割合は将来の未婚率に関係するのだろうか。
一都三県の20~50代未既婚者約1万5000人を対象にそれぞれの兄弟姉妹構成について調査したデータを元に、2020年国勢調査の配偶関係別不詳補完値データと掛け合わせて、兄弟姉妹構成別に生涯未婚率(50歳時未婚率)を推計したものが以下である。
男女とも「一人っ子」の未婚率は全国平均より高く、男性は40.1%、女性も22.1%となっている。対象が一都三県なので若干全国平均より高く出る傾向はあるが、それにしても男の一人っ子の「結婚できなさぶり」は激しいものがある。
決して、一人っ子は結婚できないとまで断じるつもりはないが、これだけ明らかな数字の違いが出るのは何かあると思ってしまう。
一人っ子男性の未婚率が高い理由についてはまた別の記事で述べるが、中国の最近の出生率が激減していることと「一人っ子政策」とは決して無関係ではない。
→遂に日本を下回った中国の出生率。インドも含め軒並み下がるアジアの出生力
一方、女性は一人っ子でも安心かというとそうも言えない。生涯未婚率は対象が45-54歳である。前掲のグラフにある通り、30-49歳までは男の一人っ子が多かったが、29歳以下では逆転している。つまり、今後、このまま女の一人っ子が増えていくということは、女の生涯未婚率も急上昇するのではないかという懸念もある。
だからといって、兄弟姉妹がいれば劇的に未婚率が下がるかといえば、それほどでもない。子の将来の結婚を考えるならば2人以上産んだ方がいいまではとても言えない。が、少なくともまだ出産できる年齢の範囲内の親であるならば、「もうひとり」と考える動機となればと思うところである。
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