遂に日本を下回った中国の出生率。インドも含め軒並み下がるアジアの出生力
日本以上のアジアの少子化
日本の人口減少は不可避であり、確実にやってくる未来であることは繰り返し伝えてきているが、それを「なんとかすればなんとかなる」という精神論でとらえている人がいまだにいて閉口する。まるで竹槍でB29と戦おうとした戦時中の人達を見ているような気になってしまう。
そして、少子化とそれに伴う人口減少は日本に限らず、全世界的に今世紀中にやってくる現実である。世界一の金持ちであるイーロン・マスクが大騒ぎしようが、その現実を変える力などない。
→イーロン・マスクが日本の少子化を心配したが、やがて世界も日本同様人口減少する
日本の2021年の合計特殊出生率は1.30で、これもまた大騒ぎするメディアもあるのだが、実はその日本以上に急激に出生率が低下しているのがアジア諸国である。
先ごろ公開された最新(2022/7月 )の国連WPP統計によれば、韓国は、同出生率0.88でこれは世界最下位である。台湾も1.11であり、シンガポールも1.02、タイですら日本とほぼ同等の1.33なのである。
※国連WPPのデータと各本国が発表するデータとでは違いがある場合がある。
中国が遂に日本を下回った
そして、衝撃的なのは、中国の近年の出生率の急降下である。
中国の統計はその出所や公開年によってバラバラで、何が本当の数字なのかが曖昧であるが、国連の数字を正として判断すれば、2021年の中国の出生率は1.16となっている。日本よりも低いのだ。ほんの数年前まで1.6-1.8をキープしていたとは思えないほど、直近の4年間でガタ落ちとなった。
1995年以降の日本との比較をすれば一目瞭然である。コロナの影響など関係ない事はコロナ以前から下がっていることからもわかる。
※日本のデータを人口動態総覧のデータに修正
中国の「結婚滅亡」状態
中国の低出生率の原因は明らかである。
よく「一人っ子政策」のせいだと勘違いしている人がいるが、実際すでにもうその制限は撤廃されているどころか、当局は出産を推進しているにもかかわらず子どもの数は増えていない。母親が産まないから少子化なのではなく、そもそも結婚の数が減っているから出生が増えないのである。その原因は日本の「少母化」と同様だ。つまり、婚姻数の減少と離婚数の増加に伴う「結婚持続率」の低下なのである。
中国の結婚難については、過去の記事でも紹介している通り(参照→「婚難時代の到来」日本を追い抜く勢いでソロ社会まっしぐら中国の「結婚滅亡」状態)だが、中国は日本に先駆けて「結婚滅亡」に突入しているのである。
子育て支援を充実してもそれは少子化対策にはならないこともこの連載で何度もお話してきていることである。少子化は婚姻数(事実婚制度のある国ではパートナーとなる数)の減少がその最大要因であるからだ。そもそも論を言えば、少子化対策などとは関係なく、子育て支援は常時やるべきことであり、少子化改善のためにやるという政治家の方便こそおためごかしなのである。
インドも2.0を切る勢い
中国の低出生率も衝撃だが、もうひとつの人口大国であるインドですら、2021年の出生率は国連の統計によれば2.03となった(一部ネットの情報では1.99になったというのもあるが、本稿では国連統計を採用する)。
インドも2.0を切るのが目前にきているということであり、これは、中国とインドという2国あわせて30億人の人口の国が少子化と人口減少モードに突入したことを意味する。それは自動的に、世界の人口が大きく減少していくことにつながる。
但し、いまだにアフリカ全体では、4.28という高い出生率をキープしている。逆に言えば、アフリカと一部の中東を除けば、それ以外のすべての国は今世紀中に大きく人口が減る。
気合ではなんとかしようとする愚かさ
「出生率なんとかせにゃいかん」と大騒ぎしたところで意味はない。なぜなら今後、多少出生率があがろうが、確実に人口が減るもうひとつの理由は「多死化」だからだ。
平均寿命が延びたからといって人間は不老不死ではない。いつか全員死ぬ。そうした長寿化によって高齢化した人口が一気に死亡していくタイミングが間もなくやってくる。生まれる数より死ぬ数が多い自然減現象がどこの国でも起きるのだから、人口が増える道理がないのである。
世界の人口減少は天気予報より確実に的中する。であるならば、確実にやってくる未来の現実に対して、事前に何をどう準備し、どう対応しておくべきなのか、それに注力することが最善であり、気合で「なせばなる!なさねばならぬのだ!」などという雄叫びをあげる行動がいかに無意味で愚かな事かがわかるだろう。
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