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【国勢調査】不詳補完値の正式採用により、2020年の生涯未婚率は男28.3%、女17.8%へ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

従来計算式と不詳補完値

社人研による2022年の「人口統計資料集」が発表された。

その中に生涯未婚率(50歳時未婚率)のデータもあるが、今回より社人研は従来の配偶関係不詳を除く未婚率計算方式を改め、総務省統計局が参考表として出した「不詳補完値」による計算方式を採用したようである。

従来の計算方式では、2020年の生涯未婚率は男25.7%、女16.4%であることはすでにこちらの記事で速報としてお伝えした通りだが(【速報】2020年国勢調査確定報より、男女の生涯未婚率は何%になったのか?)、不詳補完値によって再計算した2020年の生涯未婚率は、男28.3%、女17.8%となる。従来の不詳除く掲載方法より男女とも数字があがった。

もはや男の3人に1人は生涯未婚ということになる。

写真:アフロ

不詳補完値が出た背景

私は、昨年11月の国勢調査の本データ公開時に、この不詳補完値の意図について総務省統計局に問い合わせをしている。その時点で伺った話では、不詳補完値の公表は「配偶関係不詳及び年齢不詳のデータが増えている。今後も増える見込み」のため、今回2020年の国勢調査結果から取り組んだものだそうだ。

あわせて、5年前の2015年との比較のために2015年の不詳補完値に関しても遡及計算している。但し、2010年以前に遡及することは不可能という話だった。

その上で、不詳補完値はあくまで現段階では「参考表」としてあげているものであり、たとえば生涯未婚率のような長期の時系列推移をみる時に、従来の不詳除く計算値と新しい不詳補完値を連続して並べることは適正でない。これは統計局も明言していたことである。

よって、私は12月の時点で、従来通り、配偶関係不詳を除いた数字にて生涯未婚率を計算し公開したのであるが、今回の社人研は「不詳補完値」を正として判断を下したようである。

あわせて修正された2015年の生涯未婚率

社人研の最新の「人口統計資料集」には、2020年だけではなく、遡及集計した2015年のデータも「不詳補完値」にて修正されている。

2015年の生涯未婚率は、不詳を除く従来の計算方法にて、長らく男23.4%、女14.1%とされてきたが、それが今回密かに男24.8%、女14.9%に書き換えられているので、注意が必要である。

このタイミングで社人研が2015年から遡及修正した意図については問い合わせをした。回答の概略は以下のようなものである。

「不詳が増えるにつれて不詳の扱い方が指標に与える影響が増しており、不詳が今後更に増える可能性を考慮すると早めに変更した方がよいと考えた。また、総務省統計局から今後も不詳補完された統計表が公表される可能性が高いこと等を考慮し、このタイミングで2015年以降は配偶関係不詳補完統計表値を掲載することにした」

とのこと。

社人研の人口統計は、国をはじめとする各種資料の大本のデータであるため、前述した通り、今後2020年の生涯未婚率は男28.3%、女17.8%が正式データとして使用されることになるだろう。

従来計算値との差

お上が決めた以上、それに特に異を唱えるつもりもなく、その方針に準じて、今後私の記事でも不詳補完値を正として採用していくつもりである。

以下に、従来計算値と不詳補完値との差がわかるようなグラフを用意した。

2025年以降は、もしかしたら「不詳補完値」が参考表ではなく、原票として公開されるかもしれない。

そうなれば、統一指標として何の問題もないのだが、現段階(2020年の公表値)では原票は相変わらず不詳は不詳のままの実数が掲載されている。すべてのデータが不詳補完値となっていない以上、今後年齢別世帯単位などで細かいクロス集計をする際には、「不詳除く」従来の計算式を使用せざるを得ない場合も生じてくる。

つまり、少なくとも今後5年間は、「不詳除く数値」なのか「不詳補完値を使った数値」なのかの注釈を入れた上で使い分けていく必要があると思われる。

総務省統計局によれば、この不詳補完値は、ホットデック法、コールドデック法などの統計の法則を活用して算出したものらしいのだが、それにしても、男の未婚の割合が増えすぎではないかという気もする。

男の生涯未婚率は30%で頭打ちではないかと予測していたが、もっと上までいくかもしれない。

※不詳補完値を正とすることで、都道府県別の生涯未婚率も変更になる。その一覧は明日公開予定。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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