防衛予算概算要求、いずも型護衛艦の軽空母化改修に18億円 「いずも」と「かが」の工事完成はいつ?
防衛省は8月30日、2025年度防衛予算の概算要求を過去最大の8兆5389億円とすることを決めた。今年度当初予算の7兆9496億円と比べて7.4%増えた。年末の予算編成を受け、来年度防衛予算が11年連続で過去最大を更新することは確実だ。
このうち、海上自衛隊史上最大の艦艇であるいずも型ヘリコプター搭載護衛艦が短距離離陸と垂直着陸が可能なステルス戦闘機F35Bを搭載できるようにするための改修費用としては、今年度予算の423億円に続き、来年度予算でも約18億円が要求された。具体的には、いずも型護衛艦1番艦「いずも」の改修が終わるまでに必要な電源監視制御盤などの工事費用が確保される。
一方、今年3月末に艦首を矩形(くけい)に改修する1回目の大規模工事を終えたばかりの2番艦「かが」の改修費用は来年度予算では要求されなかった。
「いずも」と「かが」の改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われている。防衛省と海上自衛隊はこの改修工事を「特別改造工事」と名付けている。一方、筆者はいずも型護衛艦の大きさなどに照らし、「軽空母化改修」と呼んでいる。また、筆者が「空母化改修」と呼ばないのは、いずも型護衛艦は今でも国際基準では「ヘリ空母」に分類されており、既に空母の一種だからだ。既に「空母化」はされていると考えている。
●「いずも」は今年度から艦首改造に着手
海自横須賀基地を母港とする「いずも」の1回目の改修は2021年6月にジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。飛行甲板には艦首から艦尾まで1本の黄色い標示線(トラムライン)も引かれた。
2回目の改修が始まる今年度予算では約421億円を計上した。内訳は艦首を矩形に変更するための本体改造費に409億円、着艦誘導装置に6億円などとなっている。
いずも型護衛艦のもともとの艦首は台形。海上幕僚監部によると、細い先端部分での乱気流を抑えてF35Bを安全に運用するために、甲板を横に付け足して矩形にすることが必要となっている。
前述の通り、来年度予算では電源監視制御盤など工事費用を要求したが、これは「いずも」の2回目改修が終わるまでに必要なものになるという。
●「かが」の2回目改修は2026年度から実施
海自呉基地を母港とする「かが」は2021年度末から広島県呉市のJMU呉事業所で1回目の改修が始まった。そして、「いずも」に先駆けて艦首が矩形に改修され、前甲板部分が以前と大きく変わった姿で昨年4月20日に初めてドックを出た。「かが」の2回目の改修は2026年度から実施される。
●「いずも」は2027年度、「かが」は2028年度に改修完了
防衛省の最新情報によると、「いずも」は2027(令和9)年度、「かが」は2028(令和10)年度までにそれぞれ改修を終えることを予定している。
●2025年度は3機のF35Bを取得へ
防衛省は来年度予算で、「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの3機の取得費608億円を概算要求した。航空自衛隊はこれまでにF35Bの取得費として2020年度に6機793億円、2021年度に2機259億円、2022年度に4機510億円、2023年度に8機1435億円、2024年度に7機1282億円をそれぞれ計上した。空自は計42機のF35Bを導入する計画で、初号機は2024年度末までに配備される予定だ。
防衛省は、F35Bの国内配備先としては宮崎県新富町にある空自新田原基地を計画している。2024年12月には「臨時F35B飛行隊」(仮称)を新設する予定だ。前述したように、「いずも」と「かが」の軽空母改修の完了は2027、2028両年度が見込まれており、両艦の飛行甲板に日本のF35Bが実際に発着艦するのはまだ月日がかかる。航空と艦船ファンにとっては待ち遠しさが募る日々になるだろう。
(関連記事)
●2024年度防衛予算は10年連続で過去最高、護衛艦「いずも」と「かが」の軽空母化改修費はいくらに?
●海自イージス・システム搭載艦建造に3731億円、新型FFMに1740億円 来年度防衛予算の主な注目点
●海上自衛隊の護衛艦かが、艦首が四角形になった姿で初めて出渠 F35B搭載に向けて軽空母化改修着々と