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中国、初の「ドローン母艦」就役

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
就役した中国初の「ドローン母艦」の珠海雲(写真:珠海市)

中国で無人航行が可能な「ドローン(無人システム)母艦」が初めて就役した。中国共産党系の英字ニュース「グローバルタイムズ」が1月13日、報じた。中国メディアは「世界初のスマート型無人システム科学調査母船」「世界初の自動航行機能および遠隔制御機能を持つ科学調査船」などと銘打ち、この船をアピールしている。

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」は、この「ドローン母艦」を複数の空・海・潜水用無人システム装備品を搭載できる無人水上艦(USV)とみなしている。

このUSVは「珠海雲」と命名され、中国の海洋科学研究やその他の観測を行う科学調査用の母船だと報じられている。海上航行試験を終えて、12日に中国南部の広東省珠海市にある珠海高欄港で引き渡された。

グローバルタイムズによると、自律型USVである珠海雲は、パスプランニング(経路計画)能力を持ち、12時間にわたって単独航行できるという。経路を決めるパスプランニング能力によって、無人機をはじめとする「無人アセット」は目標物までの最短で最も障害のない経路を進むことができる。

珠海市のウェブサイトによると、珠海雲は全長88.5メートル、幅14メートル、深さ6.1メートル、設計喫水3.7メートル、設計排水量約2000トン、最高速度18ノットとなっている。小型の無人システムがUSVの甲板に設置されており、目標を観測するためのインテリジェント移動式海洋立体観測システム(IMOSOS)の一部として機能する。甲板には数十台の無人システム機器を搭載可能と説明されている。

就役した中国初の「ドローン母艦」の珠海雲(写真:在スイス中国大使館のツイートより)
就役した中国初の「ドローン母艦」の珠海雲(写真:在スイス中国大使館のツイートより)

珠海雲の画像をジェーンズが分析したところ、この船には小型の無人システムを起動したり、回収したりするシステムが装備されていることが確認された。珠海市のウェブサイトによると、珠海雲の動力システム、推進システム、ソフトウェアツール、調査支援システムはすべて中国で開発されたという。

珠海雲は、珠海市の南方海洋科学・工学広東省実験室が発注した。2020年12月に中国艦船研究設計センターと中国船舶工業集団公司(CSSC)傘下の中船黄埔文冲船舶有限公司との間で、「中国初のスマート型無人システム母艦」の設計、建造契約が締結された。

●軍事利用の可能性も

中国国営メディアの報道によると、珠海雲は海洋測量、海洋観測、海上パトロールに使用される予定だ。しかし、中国国営メディアが珠海雲は民間の科学研究業務を実行するために開発されたと主張するものの、軍事目的にも使用される可能性がある。特に珠海雲に搭載された無人観測システムは監視や偵察に活用できる。

建造に関わったCSSCは、中国海軍向けの艦艇の建造に力を入れていることが知られている。

また、インド太平洋地域に配備された中国の調査研究船は、軍事利用の可能性があり、日本やオーストラリア、インド、フィリピンを含む同地域の国々にとって懸念材料になっている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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