海上自衛隊の最新鋭もがみ型護衛艦搭載のUUV「OZZ-5」の詳細が明らかに
海上自衛隊の新型護衛艦である「もがみ型」1番艦の「もがみ」が4月28日に三菱重工業長崎造船所で就役する。それに先立ち、防衛装備庁は20日から22日まで東京ビッグサイトで開催された国際海事展「Sea Japan 2022」で、このもがみ型護衛艦に搭載する無人水中航走体(UUV)の「OZZ-5」の詳細を明らかにした。
●もがみ型護衛艦とは
もがみ型護衛艦は基準排水量3900トンで、多機能護衛艦(FFM)と呼ばれる。従来の護衛艦と比べて船体をコンパクトにし、乗組員数も通常型の汎用護衛艦の半分程度の約90人に抑えた。22隻の配備が予定されている。2番艦「くまの」が3月22日、1番艦「もがみ」に先立ち、岡山県玉野市の三菱重工マリタイムシステムズの玉野本社工場で就役した。
●もがみ型搭載のUUV「OZZ-5」とは
防衛装備庁は2013年度から2017年度まで、「OZZ-X」という事業名の下、自律的に障害物などを回避しながら水中の情報を収集し、従来よりも探知が困難な機雷や海底下に埋没した機雷を探知するUUVを開発した。この事業成果として、OZZ-5が装備化され、もがみ型護衛艦に搭載される。三菱重工業が製造している。
日本ではこれまで、ノルウェーのコングスベルグ・マリタイム傘下にある米ハイドロイド社製の「REMUS 100」をOZZ-1とOZZ-3、それより大型の「REMUS 600」をOZZ-2とOZZ-4との名称で、それぞれ機雷捜索用に導入してきた。ハイドロイド社は自律型無人潜水機(AUV)のトップメーカーとして知られる。
イギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」によると、もがみ型に搭載されるOZZ-5は全長約4メートル、幅0.5メートルで、重さは900キロ。OZZ-5には、ステルス機雷など探知しにくい機雷を自動探知する仏タレス社製の高周波合成開口ソーナー(HF-SAS)「SAMDIS」と、海底に埋没した機雷を探知するNEC製の低周波合成開口ソーナー(LF-SAS)とが搭載されている。フランスはHF-SAS、日本はLF-SASにそれぞれ技術的な強みを持っている。
●水中無人機高度化へ日仏共同研究
日仏防衛当局は「次世代機雷探知技術」の共同研究開発を推し進めている。下記の事業計画の概要の通り、防衛装備庁とフランス国防省装備総局(DGA)は、MCM(Mine Countermeasure)-UUV(=対機雷戦用UUV)についての技術開発の実証実験を行っている。
仏タレス社は2020年12月、三菱重工業が海自に提供する自律型水中航走式機雷探知機向けにSAMDISを提供する契約を締結した。
また、三菱重工業も2021年3月、機雷探知用の水中無人機(UUV)の高度化に向けた日仏共同研究事業の契約を防衛省と結んだと発表した。タレス社と協力し、人工知能(AI)などを活用した次世代の機雷探知技術を開発する。
防衛装備庁は「本共同研究では、高精度な自動探知と類別技術を取得することを目指している」と説明する。日仏双方が保有する技術的なノウハウや強みを相互にうまく活用した効率的な共同研究開発が期待されている。
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