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誰もが思った『シティーハンター』なぜいま実写化?結果はSNSでバズる人気ぶり Pに聞いた企画開発経緯

武井保之ライター, 編集者
Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

80〜90年代の人気漫画をNetflixが実写映画化した『シティーハンター』。多くの漫画が実写映画化されるなか、「なぜいまそこ?」といった声が当初は少なくなかったが、フタを開けてみればNetflix週間グローバルTOP10(非英語/映画)初登場1位(4/22-28)。“鈴木亮平がすごい”とネットでバズっている。本作を企画から立ち上げたNetflixコンテンツ部門ディレクターの髙橋信一氏に聞いた。

なぜいま『シティーハンター』だったのか

ーーまず、なぜいまこの作品だったのか。企画開発の経緯を教えてください。

2020年にNetflixに入社した直後くらいに、企画元のホリプロさんからご提案いただきました。

鈴木亮平さんが『シティーハンター』に強い思い入れがあり、彼の主演想定で実写映像作品化したいと、ホリプロさんは以前から動いていたんです。

僕は鈴木亮平さんとは前職の映画会社・日活でご一緒しており、『シティーハンター』が好きで主人公の冴羽獠に強い憧れがあるという話は聞いていました。

話を聞いていた当時は、彼の願いが叶えばいいなとシンプルに応援していたのですが、幸いなことにNetflixにお話をいただき、挑戦してみたいと思って一緒に開発をさせていただきました。

漫画を思い起こさせる激しい(?)アクションシーンも見どころ/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985
漫画を思い起こさせる激しい(?)アクションシーンも見どころ/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

ーーこの原作をいま実写化する意味や意義はどこに見出していたのでしょうか。

正直に言えば、最初は本当に実写映像化できるのか、という思いもありました。なぜいまなのか、実写化するにあたっての新規性は何なのか、本当に『シティーハンター』の魅力を表せるのか、ということをずいぶん考えました。

ただ、僕自身も作品のファンでしたから、日本でまだやれていない実写ならではのアプローチや、世界観の魅力を表せることは何なのかを考え抜き、この原作でしかできないガンアクションの新時代へのアップデートにたどり着き、ひとつの挑戦として開発をはじめました。

日本のガンアクションをアップデートしたい

銃の扱いも含めてガンアクションを極めた鈴木亮平/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985
銃の扱いも含めてガンアクションを極めた鈴木亮平/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

ーーガンアクションは素晴らしかったです。劇中の前半の冴羽獠が拳銃をバラすシーンには銃を扱うこだわりが見られ、後半の拳銃の連射で防弾ガラスを打ち破る、漫画にもあるアクションにはカタルシスがありました。また、鈴木亮平さんの武道の動きを連想させるスタイリッシュなガンアクションは、ハリウッド映画など洋画とは異なる日本映画ならではの迫力が宿っています。モデルガンや空気銃が好きだった頃を思い出し、思わず引き込まれました。

そこを評価していただけるのは本当に嬉しいです。

まさにガンアクションは本作の肝なのですが、一方で、銃社会ではない日本ではなかなか成立しづらいアクションでもあります。日本の実生活においては銃が身の回りにあるわけではないなかで、銃がどのように登場するかを含めて、映画としての見方を観客に理解をしていただくのには、ひとまわり大きな嘘(シティーハンターの世界ならではのリアリティ)をつかないといけない。

でも、この作品は実写においてその世界観を提示できると思ったんです。鈴木亮平さんは、冴羽獠を演じるにあたって銃の扱いを日夜猛特訓して、よくぞそこまでというレベルに達していただきました。銃をパッと解体したり、拳銃のリロードをノールックでできることも含めて、銃が自分の手足になっていました。

その強い思い入れも含めて、日本においてガンアクションを新しくしたい、この作品でアップデートしなければならないと思っています。

リズムが耳から離れない強烈なインパクトのもっこりダンス/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985
リズムが耳から離れない強烈なインパクトのもっこりダンス/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

ーー 一方、冴羽獠の80年代ふうの軽い男感や下ネタもふんだんなギャグは、いまの時代性と合うのかという疑問も浮かびました。

ちょっと気が抜けて笑えるシーンで緩急をうまく入れて、いまの若い人たちにも伝わるように、チームで考え抜いて作っていました。ありがたいことに、イベントや配信直後からSNSですごく大きな反響をいただいています。

そのほとんどがポジティブな声で、熱量もものすごく高い。幅広い年代の方が楽しんでいただける作品にしたつもりです。そうなっていれば嬉しいですね。

本作がはらむ社会問題との時代性のリンク

Netflixコンテンツ部門ディレクターの髙橋信一氏(筆者撮影)
Netflixコンテンツ部門ディレクターの髙橋信一氏(筆者撮影)

ーー映画のヒットには共感性、社会性、時代性などがフックになることが多くあります。本作がいまの時代に受け入れられるポイントはどう考えていますか?

新宿・歌舞伎町を舞台のひとつにしたことが大きいと思っています。東洋一の繁華街と言われた街が、この10年ほどで大きく様変わりしていますが、個人的にはいま再び10年前当時に戻ってきている感覚があります。

影や闇の部分が排除されクリーンな歌舞伎町になり、その流れで再開発がはじまって、ゴジラヘッドが歌舞伎町を見下ろす新宿東宝ビルや、東急歌舞伎町タワーができましたが、その周辺のシネシティ広場にはトー横キッズと呼ばれる若者たちが集まったり、当時の街の危うさが今現代にまた戻ってきている。

この街特有の光と闇のコントラストは、時代によって形を変えながらも引き継がれている。そして、こうした若者たちの集まりは、歌舞伎町だけではなく、全国各地でいま起きている社会問題のひとつかもしれない。

それがこの作品に向き合うときに時代性や現代性のリンクとして入れたかったポイントです。

黒板の伝言板は漫画原作の設定がそのまま残された/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985
黒板の伝言板は漫画原作の設定がそのまま残された/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

ーー 一方、ネット時代に淘汰された駅の黒板の伝言板は、そのまま劇中に残されました。いまの若い人たちにはわからないと思いますが。

まさにそこのバランスは企画時にすごく議論をしたところです。ネットの掲示板に置き換えるのがいちばんわかりやすいし、自然なアップデートだと思います。

しかし、黒板の伝言板に「XYZ」のメッセージを書くことが『シティーハンター』の根幹にある魅力のひとつなので、それを損なってはいけない。実写映像化にあたって失ってはいけないものであり、フィクションとして許容する覚悟を決めました。

劇中では、駅の雑踏のなかで伝言板を振り返る人は誰一人いないんです。立ち止まる人はなく、伝言板自体が忘れ去られている。それは時代性も交えて出さないといけないと考えて、演出的に気をつけたところです。

ただ、駅の黒板の伝言板自体は、まだ実際に場所によってはあるそうです。SNSに投稿してくれた方がいて、それで僕も知りました。いまの時代に必ずしもなくなっているわけではないのは、いちファンとしても嬉しかったです。

ーー原作漫画を楽しんでいた世代にとっては、当時の感情を呼び起こす装置になっていた気がします。

打ち捨てられ、忘れ去られた風景として駅の伝言板を映したいと考えていたので、それはまさに狙っていたところです。あの黒板の伝言板を現代に残したからこそ、物語を強くさせる装置にもなると思っていました。

まだまだ2人の物語は続くと思っていただけるのであれば…

ーー冴羽獠役の鈴木亮平さんと、槇村香役の森田望智さんのキャスティングが、これ以上ない組み合わせでした。

森田さんは、トレードマークだったロングヘアをこの役にあわせて切る覚悟を持って臨んでいただきました。原作漫画やアニメをすべてご覧になり、『シティーハンター』の生き字引ともいえる鈴木亮平さんが隣にいて香っぽさのアドバイスを受けながら、2人で雰囲気を作り上げていきました。

激しいアクションシーンも多いなか、細かいバランスまで計算しながらお芝居をされています。作品をご覧になって、冴羽獠と香がいると思っていただけるのは、ご本人の努力の賜物です。

槇村香を演じた森田望智のクランクアップ時の鈴木亮平との2ショット。最高の笑顔を見せる/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985
槇村香を演じた森田望智のクランクアップ時の鈴木亮平との2ショット。最高の笑顔を見せる/Netflix映画『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス1985

ーーSNSでは鈴木亮平の冴羽獠がバズっていますが、続編への期待は高まっていると思います。

お客様に楽しんでいただけたうえでの話だと思っています。ただ、今回の映画は、槇村秀幸が亡くなったことで冴羽獠と槇村香がバディになるエピソードゼロ的なストーリーです。

ここから2人は、仕事の相棒であり、お互いにとって特別な存在になっていきながら、恋人ではない。個人的には、原作で恋人っぽいシーンが来たときはドキドキしました(笑)。

本作はまさに2人が相棒としてスタートラインに立ったところで終わるので、その先の物語を見てみたいという気持ちは僕自身にもあります。お客様にまだまだこの2人の物語は続いていくんだなって思っていただけるのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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