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石原さとみ、スタイルは崩れ肌は荒れ…「自分が崩壊するほど苦しかった」 出産を経た復帰作で悲劇の母親役

武井保之ライター, 編集者
『ミッシング』(C)2024「missing」Film Partners

3年ぶりの連続ドラマ復帰となった『Destiny』(テレビ朝日系)が話題の石原さとみ。5月17日からは、出産休業を経て1年9ヶ月ぶりに撮影現場に臨んだ復帰作となる映画『ミッシング』が公開される。

石原が演じたのは、幼女失踪事件の当事者となる母親。想像を絶する悲劇に見舞われ、世間の好奇の目と悪意に抗う母親の終わらぬ苦しみを痛切に演じている。

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幼女失踪事件を題材に切り取る現代社会

本作は、現代の社会問題にフォーカスし、その渦中にいる“人”を独自の視点からすくいあげてきた社会派作品で知られる、吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品。

幼女失踪事件を題材に、事件を“ネタ”として扱い、煽るように報道するマスメディアのあり方や、その報道に振り回されずにはいられない人々と、愛娘の失踪が事件か事故かもわからず終わらぬ苦しみのなかを生き続けなければならない母親の姿を通して、現代社会のひとつの姿を描いた。

娘を突然失った母親の苦しみの日々を描く

本作の舞台は、ある地方の街。娘が突然行方不明になった母親の沙織里はあらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。

ある日突然いなくなった幼い娘の帰りを懸命に待ち望みながらも、自分たちの力ではどうにもできない現実との間でもがき苦しみ、事件をめぐるマスコミと世間の声に翻弄される母親とその家族。

時間はどんどん過ぎていき、2年の月日が流れる。地獄のような苦悩と後悔、葛藤に心を失っていく日々のなか、沙織里にできるのはいつか必ず会える、その日を信じて生きることだった。

母親になったばかりの石原さとみの覚悟

本作に臨む石原には覚悟があった。愛する娘を失う母という役は、2022年に子どもを授かったばかりの石原にとって何よりも過酷なものだったはず。

それでも「母となった今だからこそ、この役と向き合える」とする石原は、失われた日常に疲弊した沙織里を演じるため、撮影中はわざと添加物の多い食事を摂り、ジム通いを控えてスタイルをゆるめ、肌は荒れた状態。

髪はシャンプーではなくボディソープで洗い、手入れの行き届かないパサつきから、くたびれた佇まいを醸し出す。

沙織里の基本スタイルとなる衣装を自分で選び、自前のメイク道具を使っていくつものパターンを試して、1年9ヶ月ぶりにカメラの前に立った。

30代になり女優業に悩み自分自身に焦った6年前

石原がそこまで徹底して本作に向き合う背景には、30代になり女優としての成長と自身のあり方に思い悩んでいた6年前がある。確固たる人気とポジションを築いている一方、「自分のことがつまらなくて、このままではいけない」と痛感し、現状の自分自身に焦りを募らせていた。

「どこかで私自身が自分に飽きてしまっている感じがしていました。私が自分自身に対して“つまらない”と思っている部分は、おそらく世間からも同じように思われているんだろうなと。そんなとき、吉田監督の映画と出会ったんです」(石原さとみ)

石原の熱意を汲んだ吉田監督は、2020年に結婚した石原の出産を待つ形で本作を始動させる。脚本の完成からは3年が経っていた。そんな吉田監督と石原、双方の熱量がぶつかりあった本作は、観客の心を大きく揺さぶるであろう大いなる悲劇を描く作品に仕上がった。

娘を探して奔走し、苦悩し、疲弊して、どんなにがんばっても娘は見つからない。世間に傷つけられ、苦しみぬく母親に成り切った石原は「母親となった身で沙織里を演じられたことは、自分が崩壊しそうなぐらい苦しかったけれど、今でも泣けてくるくらい幸せです」と笑顔を見せる。

石原さとみの女優としての第二章のはじまりとなるであろう、渾身の作品になっている。

※吉田の「吉」は「つちよし」

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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