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1ヵ月マクドナルド食だけ!の大ヒット映画『スーパーサイズ・ミー』監督 53歳で逝く

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
「肥満」という文字のバッジでポーズをとるスパーロック監督(2004年)。(写真:ロイター/アフロ)

大ヒットしたドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』(2004年)のモーガン・スパーロック監督が23日、ニューヨーク州で亡くなったことがわかった。

享年53歳。死因は癌による合併症だと、複数の米メディアが発表している。

肥満が深刻な社会問題になっているアメリカで、当時33歳だったスパーロック氏は1日3食&30日間、マクドナルドの商品だけを食べ続けるチャレンジをし、心身がどう変化するかを自ら検証、映像として記録した。この間は水を含むすべての食事をマクドナルドの店舗で調達し食べ続け、健康のための運動を行なわずだった。検証開始から程なくして、ポテトのスーパーサイズ(Lサイズより多いサイズ)を食べ切るも、その直後に苦しそうに嘔吐する姿などが映し出され、観る者にショックを与えた。

公表されているスパーロック氏の30日間の変化

  • 体重:11kg増加
  • 体脂肪率:18%に上昇
  • 体格指数( BMI ):27に上昇
  • うつ状態に
  • 胸部に圧迫感や動悸
  • 肝機能障害を発症
  • 性欲や性機能の減退

同氏はこの映画を通し、企業利益のために人間に本来必要な栄養を犠牲にしているファストフード業界に警鐘を鳴らした。ただし「特定の企業を批判するために制作したものではない」というメッセージも出していた。マクドナルドが選ばれたのは、同社がファストフード業界でもっとも突出した大企業だからということだった。

アメリカでは貧困層や忙しい人ほど食事をファストフードに頼り、栄養不足で肥満などあらゆる生活習慣病を発症しがちだが、同氏はそんな「現代社会の危うい食文化」に対して問題提起をした先駆者の一人だった。

彼はその年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、サンダンス映画祭で最優秀監督賞を受賞した。

またこの映画のリリース以降、マクドナルドではスーパーサイズが廃止され、サラダなどの健康的なメニューもオプションに加わるようになった。

2013年10月、別の人気のファストフード店、イン・アンド・アウトでハンバーガーを頬張るスパーロック氏。
2013年10月、別の人気のファストフード店、イン・アンド・アウトでハンバーガーを頬張るスパーロック氏。写真:Splash/アフロ

以前メディアのインタビューで、スパーロック氏は「自分にとって作らなければ気が狂ってしまうようなものでなければならない」と、映画制作への情熱を語っていた。また別のインタビューで「またいずれマクドナルドを食べたいか?」と聞かれた際、100人の栄養士に聞いたらほとんどの人が(ファストフードは)「1ヵ月に一度程度ならOK」と答えたとし、(1ヵ月に1回食べるとして)「8年分のマクドナルドをこの実験の1ヵ月間で食べたことになるから、2012年になればまた食べるかもしれないね」と答えていた。

2017年12月、#MeToo運動が高まる中、スパーロック氏はSNSを通して「自らも問題の一部」と、これまで関与したセクハラ疑惑やレイプ容疑を告白。これ以降は鳴りを潜め、監督として目立った活躍はなかった。

モーガン・スパーロック監督のほかの主な映画やTVシリーズ

30 Days(30デイズ)(TVシリーズ)(2005年 - 2008年)
最低賃金での生活、アンチエイジング生活、イスラム修行、自給自足での生活、酒浸りの生活など、スパーロック氏、もしくはほかの人物がそれぞれのライフスタイルを30日間体験するドキュメンタリー。

Where in the World Is Osama Bin Laden?(ビン・ラディンを探せ! ~スパーロックがテロ最前線に突撃!~ )(2008年)
スパーロック氏がテロリストを探しイスラム諸国を訪問するドキュメンタリー。

Freakonomics(ヤバい経済学)(2010年)
全米でベストセラーとなった同名経済書を原作とした映画。さまざまな「常識」をユニークな視点で解説。

Super Size Me 2: Holy Chicken!(スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !)(2017年)
今度はスパーロック氏自らがファストフード店を開き、再び食品業界との闘いに火蓋を切った作品。ファストフード業界がいかにして健康的なものに再ブランド化しようとしてきたかを取り上げた。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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