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ラーメンの味が劇的に変わる? 今さら聞けないラーメンのスープの秘密

山路力也フードジャーナリスト
ラーメンは食べ方一つで味が変わる。

スープをどこから飲めば良いのか?

どこにレンゲを入れるかで味が変わる。
どこにレンゲを入れるかで味が変わる。

 ラーメンが目の前に出された時、あなたはどうやって食べるだろうか。箸を持っていきなり麺を引きずり出す人は少数派、ほとんどの人はレンゲを持ってスープをすくうだろう。ではそのレンゲは丼の中のどこに沈めているだろうか。そこまで考えてラーメンのスープを飲んでいるだろうか。

 スープの味の変化を感じ取りたいのならば、まずは出来るだけ具材や薬味が載っていないゾーンにそっとレンゲを沈めたい。香味油や背脂などが浮いている場合は、極力油分が少ないエリアを攻めたい。最初に真っ新な味を舌に記憶しておくことで、その後具材の味や油の味、さらには麺の味も混ざったスープの味の違いを楽しむことが出来るからだ。

 まずは真っ新なスープの味を味わって、麺を引き上げて具を食べていくうちに、少しずつ味が重なり合っていくストーリーを楽しもう。お店によってはどこに最初にレンゲを入れて欲しいかを考えた上で、具材の配置を決めている店すらあるのだ。言うまでもないことだが、初めての店でいきなり胡椒などの調味料を入れるのも実にもったいないことだと思う。

レンゲを使うのか丼から飲むのか

レンゲを使わずに丼からスープを飲んでみよう。
レンゲを使わずに丼からスープを飲んでみよう。

 ラーメンのスープをどうやって飲むのか。最初は穏やかな水面にそっとレンゲを下ろすとして、その後の戦略もスープを味わう上でとても重要だ。そこでぜひお勧めしたいのが、レンゲではなく直接丼から飲むということ。これによって味が劇的に変化するのだ。

 スープをレンゲで飲むのと丼から飲むのでは、口の中に入ってくるスープの量、そして油とのバランス、さらにはスープの温度までもが違う。どちらが美味しい不味いということではなく、同じスープであっても飲み方一つで味がガラッと変わるということだ。せっかくならばその違いを楽しみたい。最初から最後までレンゲだけで飲むのはもったいない。

 またレンゲで飲む場合も材質によって味は変わる。陶器製なのかメラミン製なのか。レンゲの形状や厚みによっても味は変わる。お店によってはたっぷりとスープを飲んで欲しいと大きなレンゲを用意したり、温度を大切にしたいからと扱いにくい陶器製を敢えて選ぶ店もある。ラーメン店は私たちが思っている以上に細部にまで神経を注いでいるものだ。

はたして熱々のスープが正しいのか

熱々では分からない味がある。
熱々では分からない味がある。

 ラーメンと言えば熱々のスープが基本だ。店は出来るだけ熱々のスープを提供しようと、丼をギリギリまで温めて一気に調理する。スープの温度が冷めないようにと、具材も温めて乗せる店も少なくない。それでもぬるいスープが出てこようものなら大騒ぎする客もいれば、写真を撮るのに夢中になってせっかく店が熱々で出したラーメンを自らぬるくしてしまう客もいる。

 しかし、はたしてラーメンのスープは熱々が正しいのだろうか。もちろん旨味や甘味は温度が一定以上高い方が、舌の受容体が活発に働き感じやすくなるというデータはある。しかし熱々過ぎてはかえって旨味は感じにくくなる素材もある。ここで重要なことはラーメンのスープの味わいは温度によって変化するということだ。

 現代のラーメンのスープは様々な食材の旨味が折り重なって出来ている。熱々の時には分からなかった隠れた旨味や甘味が、スープの温度が冷めていくことで少しずつ現れてくる楽しさ。一度騙されたと思って、食べ終わったあとに残った冷めたスープを一口飲んでみて欲しい。食べている時には感じなかった味わいがするはずだ。

 たかがラーメン、されどラーメン。ラーメンの食べ方は人それぞれ、好きに食べれば良いのは言うまでもないが、スープについていつもと違う飲み方をすると、きっと感じる味わいも変わるはず。ラーメンについて知れば知るほど、その美味しさは増していく。もっとラーメンについて知って、もっと美味しく楽しくラーメンを食べて頂きたい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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