原油価格や食材価格が高騰 ラーメンは値上げしかない?
原油価格や食材価格の高騰による値上げラッシュ
原油価格や食材価格の高騰による、食品などの値上げのニュースが連日のように報じられている。『セブン‐イレブン・ジャパン』はサンドイッチの一部商品について3月2日から税抜き価格で5~12%程度値上げした。『味の素冷凍食品』や『ニッスイ』などの冷凍商品メーカーも商品の一部を値上げ。さらに『キユーピー』『キッコーマン』などの調味料類も値上げするなど、私たちが日常利用している食品や商品が軒並み値上げになっている。
新型コロナウイルスの感染拡大による輸入の停滞、中国の需要拡大やアメリカの天候不良など、様々な理由によって大豆や小麦などの輸入作物が高騰しているほか、原油価格の高騰や経済回復によるコンテナ不足によって輸送コストが上昇。様々な要素が複雑に重なり合い、ありとあらゆるものが高騰している。
食材は全般的に価格が高騰しているが、中でも肉類の価格上昇率はかなり高く、輸入牛肉はこの10年間で倍以上の価格になっている(参考資料:World Bank Commodity Markets)。スーパーなどでは国産牛と輸入牛との価格差が縮まっており、2021年秋から冬にかけて大手牛丼3チェーンは牛丼メニューの値上げを断行した。
小麦価格高騰でパンやケーキ、麺も値上げへ
小麦価格の高騰も深刻だ。日本は小麦の約9割を輸入に頼っている。2021年10月、政府は輸入小麦の製粉会社への販売平均価格を19%値上げし、製粉会社からの小売価格も値上げされた。上げ幅は過去2番目に大きく、価格の水準は2009年以来の高値となっている。
これらの要因は小麦の国際相場の高騰、海上運賃の上昇及び為替が円安傾向で推移した影響によるが、ここに来て世界有数の小麦生産国であるロシアとウクライナの紛争によって、さらに価格が高騰する懸念が出ている。2022年2月、米シカゴ商品取引所では小麦などの先物価格が一時約9年5ヶ月ぶりの高値を記録した。
小麦が上がると製パン、製菓などへの影響は必至となる。『山崎製パン』は2022年より食パンと菓子パンの出荷価格を平均7.3%上げた。同業の『フジパン』『敷島製パン』も同様に値上げした。『ミスタードーナツ』を運営する『ダスキン』も、3月1日よりドーナツ、パイ、マフィン合計33品目とセットなどを値上げしている。『銀座コージーコーナー』も3月1日より生菓子11品目、焼菓子7品目を平均で約2.7%値上げしている。
製麺についても同様だ。『はごろもフーズ』は2022年2月の出荷分から、家庭用のパスタ製品など計35品目を値上げした。人気ラーメン店の麺を製麺する老舗製麺所『浅草開化楼』の製麺師、不死鳥カラス氏は「ラーメンは安くて美味しい食べ物。これまで小麦価格が値上げした時も麺の価格は出来るだけ据え置いていたのですが、今回ばかりは価格を上げざるを得ないです」と語る。
ラーメン1,000円は高いのか?
例えば、ラーメンは安くて美味しい庶民の食べ物というイメージがあるが、今のラーメンと昔のラーメンとでは設計そのものが異なり、手間隙や材料にかけるコストが増えており、安く提供することが難しくなっている。しかし消費者側のイメージは従来のままなので、ラーメンに高いお金を払おうと思う人は少数派で、それに合わせてラーメン店側は材料費をかけていながらも価格を低く出さざるを得ない。つまりラーメンの味の向上幅と価格の上昇幅が比例していないのだ。
飲食店、中でも麺類や丼物など単品勝負で1,000円以下という低価格帯のメニューを提供している店は、原価率が高く利益率が低い、いわゆる薄利多売のビジネスモデルになっている。一般的にラーメン店の材料原価率は30%前後とされており、そこに人件費や地代家賃、光熱費なども加わり、最終的な利益としては10%ほどとなる。一杯800円のラーメンであれば、材料費が240円、利益が80円ということだ。
小麦の価格が上がり、肉の価格も上がり、野菜の価格も上がり、調味料の価格も上がっている。さらに人件費も上がっている。しかしながら、低価格帯の飲食店の場合はなかなか売価をいじれないために、原価の上昇は利益の減少となってしまう。私たちは日々のスーパーなどでの買い物や、ガソリンを給油する時に値上げを実感しているだろう。飲食店の仕入れも同じこと。だから飲食店の料理の値段も上がるのは当然のことなのだ。
「ラーメンは安い食べ物」「ランチは1,000円以下で」などという消費者マインドによって、薄利多売の飲食店はなかなか原価上昇分を価格に反映出来ない状況が続いていたが、今回はありとあらゆるものの価格が上がっている。店は適正な利益を取るべきであるし、私たち消費者もその構造を理解すべきだ。さらに長引くコロナ禍によって、客数そのものも減少している。飲食店は今こそ値上げすべきなのだ。
※写真は筆者によるものです(出典があるものを除く)。
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