記憶に残る味と香りを作りたい 福岡一「クサウマ」豚骨ラーメンへの挑戦
豚骨ラーメンの「臭い」の正体とは
豚骨ラーメンには「クサい」ラーメンとそうでないラーメンがある。「クサい」ラーメンはある意味食べ手を選ぶ独特の香りがあるが、実はあの香りを出すのは簡単なことではない。火加減や温度などを考えながら菌を育てて、ベストの状態で発酵熟成させることで、はじめて豚骨ラーメン独特の「クサい」香りが出る。ただ骨を炊いただけではあの香りは出ない。あの香りは経験と技術によって意図的に出されているものだ。
福岡県福津市の『福間ラーメン ろくでなし』(本店:福岡県福津市中央4-22-30)は、2013年の創業以来地元で圧倒的な人気を集めるラーメン店。店主の中村誠さんは地元福津市で生まれ育ち、大学進学で東京に行き、アルバイトでラーメン店に入ったことからラーメンの世界に魅了されて開業を志した。都内の人気店でマネージャーまで担当し、33歳の時に地元に戻って『ろくでなし』を創業した。
どうしても「クサい」豚骨ラーメンが作りたかった
「地元に戻ってラーメン屋をやるのならば、やはり自分も幼い頃から慣れ親しんだクサい豚骨ラーメンで勝負したいと思ったんです。しかし豚骨をクサくするのって結構難しいんですよ。豚骨ならではの独特の臭いを安定させるのに半年ほどかかりました。臭い豚骨ラーメンを作るのがこんなに難しいとは思いませんでしたが、難しいからこそやりがいになってすっかりハマってしまいました」(福間ラーメン ろくでなし 店主 中村誠さん)
スープを作っては一部を残して捨てて継ぎ足し、また新しいスープを作って足すことを繰り返す。時には寸胴全てのスープを捨てることもあった。丁寧に下処理した豚頭骨を長時間炊き上げたスープをベースに、ゲンコツと背脂を加えて味に深みを与え試行錯誤を繰り返し、理想のスープが完成するまでに半年がかかった。
「修業時代に色々なラーメンを作らせて頂いたので、豚骨スープの経験もあったのですが、どうしても臭いが出なかったんです。ネットを調べても作り方は出てこないので、自分で何度も試しながらスープを継ぎ足していくスタイルにたどり着いて、ようやく安定して臭いが出せるようになりました」(中村さん)
福岡一のインパクトを誇る「こってりラーメン」
『ろくでなし』の豚骨ラーメンは「あっさり」と「こってり」の2種類がある。豚頭だけを使って熟成させないスープと、そこにゲンコツや背脂などを足して時間をかけて熟成させたスープを使い分けている。自慢の「クサい」ラーメンである「こってりラーメン」は、食べ進めるほどにクセになるインパクトある味わい。さらに提供時にはしっかりとスープを漉すことで滑らかな口あたりを表現している。
ラーメン好きはもちろん、地元の人にも人気が高いのが「こってりラーメン」。地元福岡の人たちがソウルフードのように食べてきた、熟成臭のする豚骨ラーメンを求めて時には市外や県外からも多くの人がこの店を訪れる。独立開業して10年以上が経ち、今では福津には欠かせない地域密着の人気店となり、市外にも支店を展開して3店舗にまで増えた。
10年が経ってもなお、ラーメン作りには終わりがないと感じている中村さん。どうしたら安定して臭いを出せるのか。異なる環境でも同様の臭いを出すことは出来るのか。解明できていない部分がまだまだたくさんあるという。今でもまだ「クサい」豚骨ラーメンへの挑戦は続いているのだ。
「僕自身が子供の頃から慣れ親しんでいるのもあるのですが、あの豚骨スープの香りが大好きなんです。食べた時に絶対に記憶に残るインパクトがあるじゃないですか。僕も食べた人の記憶に残る香りと味のある豚骨ラーメンを作り続けていきたいですね」(中村さん)
◾️福間ラーメン ろくでなし 福津本店
福岡県福津市中央4-22-30
11:00〜24:00/金土祝前日11:00〜翌2:00
無休(年末年始のみ休業)
※写真は筆者によるものです。
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