ラーメン、本格中華にステーキまで? 30年間行列を作り続ける福岡の人気屋台とは?
30年間愛されている人気屋台『おかもと』
福岡のラーメンを語る上で、屋台の存在は欠かせない。戦後に生まれた福岡の屋台は、最盛期には400軒以上もの屋台が軒を連ねた。一時は縮小傾向にあったが、公募制になった今では中洲エリア、天神エリアを中心に多くの屋台がオープンしている。福岡ならではのラーメンはもちろん、おでんや串焼き、中にはフレンチやバーなどの個性的な屋台もあり賑わいをみせている。
天神南の渡辺通沿いで連日行列を作る『屋台おかもと』(福岡県福岡市中央区渡辺通4)は、1984年の創業と今年で30周年を迎えた人気の屋台。現在は中洲に程近い川端商店街にも『居酒屋 屋台おかもと』(福岡県福岡市博多区上川端町9-154)を構える。岡本さんが店主かと思いきや、店主の名前は吉村大輔さんだ。
屋台の世界はそう甘くはなかった
「独立して自分の屋台を持つという時に、もう辞められる方の屋台を引き継いだんです。その岡本さんというご夫婦がとても良い方たちで、お名前を残したいなと思って屋号はそのままにしました」(屋台おかもと 店主 吉村大輔さん)
サラリーマンを経て、20歳の時に中華料理店で飲食の世界に入った吉村さんは、店舗を持つよりも屋台であればすぐに独立出来るだろうと考えた。6年間中華の勉強をした後に、屋台のノウハウを学ぼうと人気の屋台に修業で入った。しかし屋台の世界はそう甘くはなかった。
「中華の経験もありましたし、1年くらいで独立出来ると思っていたのですが甘い考えでしたね。町中華では厨房で調理だけしていれば良かったのですが、屋台では調理だけではなくお客様ともコミュニケーションを取らなければなりません。あれもこれも出来るようになるまでに5年もかかりました」(吉村さん)
1994年、白金に屋台を構えて独立。その後、取締りが厳しくなり移転を繰り返し、現在の渡辺通沿いにたどり着いた。2009年には念願の実店舗を中洲に構えた。生粋の料理人である吉村さんは、屋台では出せない料理もお客さんに食べて欲しかったのだ。
屋台でも料理には一切手を抜かない
『屋台おかもと』は他の屋台よりもメニューが多い。おでんや焼き鳥など屋台の定番メニューはもちろん、自慢の中華料理は町中華なみの品数がある。飲み屋ではなく料理店という矜持。長年中国料理の料理人として腕をふるった吉村さんだからこそ、料理には一切手を抜くことがない。
人気の「牛さがりの炭火焼き」は九州産黒毛和牛を炭火で香ばしく焼き上げたもの。外国産よりも国産、ガスよりも炭火が美味しい。価格を考えると原価も手間も合わない採算度外視のメニューだが、美味しいものを出したいという思いから生まれたものだ。
豚骨の旨味が凝縮された博多ラーメン
手を抜かないのはラーメンでも同じこと。『屋台おかもと』ではラーメン専門店顔負けの本格的な豚骨ラーメンも楽しむことが出来る。臭みが一切なく豚骨の旨味をストレートに味わえる正統派の博多豚骨ラーメンだ。しかしこのラーメンが出来るまでには紆余曲折があった。
「屋台での修業時代にラーメンの作り方は教わったのですが、ニンニクなどは使わずに豚骨だけの味のスープを出したいと思ったんです。そこで最初は油も足さず化学調味料も使わずにラーメンを作っていたのですが、お客様に『おいしくない』と叱られて目が覚めました。自己満足の物を出していては、客商売としてはダメなのだと気づかされましたね」(吉村さん)
白濁したスープは豚頭と背ガラだけを使用し8時間炊いたもの。丁寧に下処理をしているので臭みが全くなくまろやかな仕上がり。麺は一般的な博多ラーメンの低加水麺とは異なり、しなやかさとしっとり感のある麺で、創業以来地元福岡の『川部食品』の麺を使う。試行錯誤の末に完成した醤油ダレは、チャーシューを煮た醤油をベースに肉の旨味を凝縮させた。
真面目に料理を作り接客するだけ
『屋台おかもと』は一見客はもちろん、常連客も実に多い。美味しい料理にこだわるだけではなく、いかにお客様に満足して貰えるかを重視する。屋台はもちろん店舗でもどう楽しく過ごして貰えるか。独立して30年経った今も吉村さんは考え続けている。
「私たちが出来ることは、手を抜かずに一生懸命考えて、真面目に料理を作り接客をするだけ。その点だけは誰にも負けない自信があります。あとはそれをお客様にどう感じて頂けるかだと思っています。帰り際に笑顔で『美味しかった』『楽しかった』と言って頂けるのなら何よりも嬉しいですね」(吉村さん)
※写真は筆者によるものです。
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