総理夫人に「無邪気」な振る舞いは許されるのか
フーテン老人世直し録(288)
弥生某日
安倍昭恵総理夫人が7日に都内で開かれたイベントに出席したニュースを見て、あまりの「無邪気」さに開いた口が塞がらなかった。
「無邪気」とは「素直で悪気がないこと」と同時に「思慮が足りないこと」も意味する。フーテンの「開いた口が塞がらなかった」のは、日本の最高権力者夫人としてあまりに「思慮が足りない」と思ったからである。
昭恵夫人は「森友問題」の渦中の人物であるにも関わらず、そのことには全く触れず「私個人では仕事ができる訳でも家事ができる訳でもないのに、こんなに注目を集めすごく戸惑っている。首相夫人になったことで活動の幅が広がり、人と人とをつなぐことが自分の役割と思っている」と無邪気に語った。しかしその立場は「無邪気だから良い」とはならないのである。
総理夫人に公務支援の職員が配置されたのは第一次安倍政権の時である。それまでの総理夫人にそうした制度はなかった。それが安倍政権で初めて税金を使って職員が配置され、外務省OBの現在テレビでおなじみの宮家邦彦氏が「総理公邸連絡調整官」というポストに就任した。
おそらくあまりに「無邪気」な夫人を見て外務省がファースト・レディ外交に支障が出ては困ると配慮したからではないかと当時のフーテンは推察したが、そこで初めて税金が使われることになったのだから、森友学園が問題になった現在、その経緯は改めて検証される必要がある。
宮家氏は安倍総理が政権を投げ出すまで「調整官」を務め、次の福田康夫総理はその制度を廃止した。それを見ると昭恵夫人のための一時的な制度だったようにも見える。ところがその次の麻生総理がこれを復活させ、それが現在まで継続されることになり、現在では昭恵夫人に外交以外の場でも経済産業省の職員2名が配置されているという。
その職員が昭恵夫人の塚本幼稚園での2014年と2015年の計3回の講演に同行したことが明らかとなり、8日の国会では政府が「公務」として同行したことを認めた。政府は昭恵夫人と塚本幼稚園の関係や講演内容をすべて把握していたことになる。
フーテンは税金を使って職員が配置された以上、総理夫人には公的な役割と責任が付与されたと思うし、そうであるならば総理夫人の「無邪気」さが問題を引き起こせば行政府にも責任の一端はあると思う。
ところがフーテンは第一次安倍政権の頃にこんな経験をした。ある中国人が「日本の総理夫人は誰にでも電話番号入りの名刺をくれる」と驚いた表情でフーテンに言ってきたのである。その中国人は中国大使館のパーティに訪れていた昭恵夫人から名刺をもらったが、名刺には個人の電話番号やメールアドレスが記されていたという。
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