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森友問題で安倍政権が打った手はことごとく裏目に出た

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(292)

弥生某日

森友学園の籠池理事長が国会に喚問された23日の証人尋問とその翌日の参議院予算委員会を見ると、森友問題の中心には「祈る人」がいることがよく分かった。

「祈る人」とは安倍昭恵内閣総理大臣夫人である。森友問題が発覚して以来昭恵夫人は何かにつけて神に祈っていることが公表されたメールから分かる。しかし安倍政権はこの問題で打つ手のすべてが裏目に出て「祈り」は神に通じていない。

豊中市にある国有地が森友学園に安く払い下げられ、そこに開校予定の小学校の名誉校長に安倍総理夫人が就任していた問題が初めて国会で追及されたとき、安倍総理は「私も妻も払い下げ問題には関わっていない。もし関わっていたのなら総理大臣も国会議員も辞める」と強く否定した。その強い否定が逆に国民の関心を呼び起こす。

次に財務省理財局長は「面談の記録はすべて廃棄された」と答弁し、なぜそれほど疑惑解明の道を閉ざすのかと思わせた。この否定によって疑惑はますます深まることになる。そして記録がないのなら当事者を呼んでその記憶に頼るしかないと思わせた。

ところが安倍政権は会計検査院にこの問題を処理させて片づけようとした。すべての記録が破棄されたのにどうやって会計検査院は解明することができるのか。フーテンは初めから国政調査権に基づく立法府の調査以外に解明する方法はないとブログに書いた。

検察や警察を含め行政機関はすべて総理官邸の意向通りになるのがこの国の悪しき仕組みである。一方で税金の使われ方をチェックするのが立法府の役目で、国有財産の不適切な問題を解明することはまさに立法府の仕事にふさわしい。

ところが国会では自民党と公明党が「違法性のない案件で民間人を国会に呼ぶわけにはいかない」とかつて聞いたことのない理由で参考人招致を否定した。この否定によって問題の疑惑は全く晴らすことが出来ない状態になった。

一方、建設中の小学校は目を引く派手な造りで、しかも名誉会長は我が国のファーストレディである。さらに森友学園の教育方針は戦前回帰そのもので、幼稚園の園児に教育勅語を暗唱させ、「安倍総理万歳」を叫ばせる。

テレビのワイドショーが飛びつかない訳のない格好の素材である。いやがうえにも関心は高まるが、しかし疑惑解明の道は完全にシャットアウト。それが関心と疑惑をいやがうえにも高めることになる。

しかも大阪では小学校の認可が先か土地の取得が先かの問題で、大阪府と近畿財務局との間に責任のなすりあいが始まり、安倍総理夫妻、財務省、大阪府がそれぞれ保身を強める中で「ただの大阪のおっちゃん」籠池理事長が「しっぽ切り」の対象となった。

安倍総理が籠池理事長を「しつこい」と国会で答弁し自分たちは被害者であることを強調、かつて同志的関係にあった稲田防衛大臣も「関係を断った」と厳しく対応する。そのうち籠池理事長の経歴詐称や申請書類のインチキなど負の材料がどんどん出てきた。

そうなれば籠池理事長の国会招致要求は高まるが、全面否定してきた与党は金縛りの状態から抜けられない。それがまた関心と疑惑を強めさせ、森友問題がメディアに取り上げられない日はなくなった。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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