【日米ゴジラはどちらが強い?!】日本の特撮怪獣映画がアメリカに進出した戦略と葛藤とは?
こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので3月になりました。
いよいよ桜の開花が楽しみになってきましたね♪
今回は「日本の怪獣」をテーマに、ゴジラをはじめとする怪獣達がいかにアメリカ文化に浸透し、現地で愛される存在となったかについてお話をしたいと思います。
日本では、東宝のゴジラシリーズや大映のガメラシリーズ等、これまでたくさんの人気怪獣映画がつくられてきたほか、円谷プロのウルトラマンシリーズのように、テレビでも毎週怪獣が登場する番組が放送されています。
各シリーズは長い歴史を持っており、現在も世代を超えた人気を獲得し続けています。
またその人気は日本だけに留まらず、海外まで及んでおり、
アメリカでは新たなゴジラやウルトラマンシリーズの製作が進行中であるほか、
現地のファン達が集まる大型イベントの開催、おもちゃ屋さんやスーパーで気軽に
グッズが購入できる点など、海外での人気は留まることを知りません。
実は、このように日本の怪獣達が国際的な認知を得た背景には、
作品を海外へと送り出すことを踏まえた製作者達による戦略と葛藤がありました。
そこで今回は、東宝製作の怪獣映画「ゴジラ」シリーズに焦点を当て、日本の怪獣映画がアメリカで認知されるようになるまでの歴史を紐解いていきたいと思います。
※本記事は、「私、怪獣映画を観たことがないわ」という方にもお楽しみ頂けますよう、概要的にお話しますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。
ゴジラは『GODZILLA』か?『GOJIRA』か? 呼び名に対する日米議論の末に・・・
突然ですが、皆様は東宝のゴジラシリーズをご覧になったことはありますでしょうか?
少しお話しすると、ゴジラは、1954年に公開された東宝製作の怪獣映画「ゴジラ」に登場した怪獣のことです。本作は、ビキニ環礁の水爆実験によって眠っていた生物が怪獣ゴジラとなり、東京を破壊するというのが主な内容です。また核実験に対する警鐘や平和への祈り等、戦後の日本を想起させるメッセージ性が強かったのも特徴でした。
円谷英二ミュージアム tette テッテ 須賀川市民交流センター
・住所:〒962-0845 福島県須賀川市中町4-1
・TEL:0248-73-4407
・公式サイト:https://s-tette.jp/museum/index.html(外部リンク)
さらに、この『ゴジラ(1954)』という映画は、1956年に『ゴジラ・キング オブ モンスターズ(Godzilla:King of Monsters)』と改題してアメリカのブロードウェイで公開されました。本作は日本の『ゴジラ(1954)』の内容を一部編集したもので、4日間で1万7千ドル(当時の日本円で約600万円ほど)の大ヒットを記録しました。
実は『ゴジラ』をアメリカで公開する上で、ひとつ大きなポイントとなったのが、「ゴジラを英語でどう表記する?」という、いわばお名前の問題でした。
ゴジラそのものは「ゴリラ」と「クジラ」という陸と海の大きな動物達の名前を合わせた造語で、ローマ字表記では「GOJIRA」となります(よかったら、試しにワープロでタイプしてみてください)。
しかしながら、英語圏ではゴリラは”gorilla”、クジラは”whale”と全く別の言葉。
「この2つの動物の日本語でのお名前を組み合わせたのがゴジラなんですよ」といっても、アメリカ人の視点から見ればピンときません。そこでアメリカ側の議論ではゴジラを「破壊神」とみなしていたことから、「ゴジラ(GOJIRA)」を「神(GOD)」を含み、さらにアメリカの人達が発音しやすい形に整えて「GODZILLA」となったそうです(他にも諸説あります)。
(この怪獣に対する英語名の表記の違いはゴジラに留まらず、ラドンはRODAN、バランはVARAN、ヘドラはHEDORAHと、後に登場したゴジラシリーズの怪獣達も、現地での発音に合わせて整えられてきました。)
「ちょっと待て、GODZILLA(ゴジラ)のGODが神なのはわかった。
じゃあ残りのZILLAはどういう意味なの?」
・・・実は、このZILLA(ジラ)は英語圏でも「(ゴジラのような)大きなもの」を表わす言葉として使われています。例えば、ディズニー映画『シュガー・ラッシュ オンライン』では、映画の終盤で主人公ラルフのクローンという形で、「Ralphzilla(ラルフジラ)」(外部リンク)と呼ばれる巨大な怪物が登場します。さらに現在公開中のマーベル映画『アントマン&ワスプ クアントマニア』(外部リンク)でも、巨大なアントマン(ジャイアントマン)とキャシーの再会シーンで自分達のサイズをゴジラと呼称したりと、大きなものを象徴する言葉として、ゴジラあるいはジラという呼称が使われています。
つまり、ゴジラは「英語」という言語そのものにも少なからず影響を与えてしまったわけです(ちょっと誇らしくも感じますが・・・)。
実は存在する「ジラ」という怪獣!初のアメリカ版ゴジラが真のゴジラに及ばなかった理由とは?
1956年の『ゴジラ・キング オブ モンスターズ(Godzilla:King of Monsters)』公開後、本作が大ヒットしたことを皮切りに、日本から次々と各社の怪獣映画がアメリカに輸出されました。
これを機に、アメリカではゴジラやガメラ、ウルトラマンといった日本の怪獣やヒーロー達が次第に認知されていくようになりました。日本企業の進出が著しかった1980年代から1990年代には、アメリカ初のウルトラマンである『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS(邦題:ウルトラマンUSA)』や、アメリカ版スーパー戦隊シリーズである『Mighty Morphin Power Rangers(マイティ・モーフィン・パワーレンジャー)』が製作される等、アメリカでも日本の怪獣やヒーローをつくろうとする機運が高まっていくようになりました。
そんな中、アメリカでもゴジラを製作することが決定し、1998年に全米公開されたのがハリウッドリメイク版『GODZILLA』でした。アメリカ公開後に日本でも公開され、観客動員数は360万人と健闘はしていました。
しかしながら本作、言ってしまえば「不評」でした。ゴジラが巨大なイグアナであるような容姿である上、スリムな足で飛び上がるわ、卵を大量に産んで巣はつくるわ、「破壊神」であるはずなのにミサイル撃ち込まれて絶命するわで、日本のゴジラとは大きくかけ離れた産物だったのです。
数字だけを見るならば『GODZILLA』は興行的な成功こそ収めてはいたものの、ゴジラシリーズのファンのみならず一般の観客にも受け入れられない存在として認知されてしまいました。その結果、日本で再び正統派のゴジラ映画をつくる動向へと繋がり、新たな国産ゴジラ映画(1999年公開『ゴジラ2000(ミレニアム)』)が公開されることとなりました。
「じゃあ、もうアメリカ版ゴジラは黒歴史みたいに出てこなくなったの?」と言われると、
・・・実はそうでもないのです。
このアメリカ版ゴジラですが、なんとその後にアニメシリーズがつくられたり、日本のゴジラと一対一で真っ向から対決したりと、後のゴジラシリーズにおいて度々活躍していたのです。
まず、『GODZILLA』の続編としてアニメシリーズ『Godzilla: The Series』が1999年から2000年までの全40話がアメリカで放送されました。内容は、アメリカ版ゴジラの子どもであり、「刷り込み」効果で人間の味方となったゴジラが、地球を脅かす他の怪獣達と戦うもの。
続いて、2004年公開の国産ゴジラ映画『ゴジラ FINAL WARS』では、宇宙人率いる怪獣軍団の一体として、オーストラリアのシドニーを舞台に日本のゴジラと対決。なんと本作では、彼は「ジラ(ZILLA)」という名での登場でした。つまり、もはや彼は日本のゴジラのような破壊神ではなく、GODを抜いたZILLAという別物にされてしまったのです。
「日本のゴジラとアメリカのゴジラはどちらが強いんだ?」と幼心にワクワクものでしたが、いざ対決すると日本のゴジラのストレート勝ち。対決時間も約1分と良いとこ無し。いわば「雑魚キャラ」のような扱いにアングリした記憶があります(泣)。その上、主人である宇宙人に「やっぱマグロを喰ってるようなのはダメだな」と吐き捨てられるなど、散々な扱いだったのです。
ハワイに残された足跡?!いまだに存在感を発揮し続けるアメリカ版ゴジラの功績とは?
「じゃあアメリカ版ゴジラはとことんダメ怪獣なのね?」といわれると、ご指摘の通り否定的な意見の多い状況ではありました。しかしながら、その後の彼の活躍はゴジラシリーズを誘致資源化した観光地の造成や、商品化を見据えた人気投票において上位にランクインするなど、今日も存在感を発揮し続けています。つまり、
「ゴジラの歴史を語る上で、作品そのものを全否定出来るものではない」と私は考えます。
ここからは、アメリカ版ゴジラの世界を体験できる観光地をご紹介します。
アメリカ・ハワイ州オアフ島内の北東に位置する「クアロア・ランチ(Kualoa Ranch)」。
もともとこの土地は、古代ハワイ王朝時代に王族しか立ち入りを許されなかった地であり、連なる山々とプライベートビーチを含め、約4000エーカーの土地の広さを誇る当牧場は、乗馬や四輪バギー等の体験アクティビティのほか、『ジュラシック・パーク(1993)』をはじめ数々の映画やテレビ番組の撮影地としても活用されてきました。
実はこのクアロア・ランチでは、約30年前に『GODZILLA』の撮影が行なわれていました。作品中に登場したゴジラの足跡が、現在も写真のようにちゃんと残されています。
「大して深くないじゃないか。」
・・・ごもっともです。現地のガイドさんによると、実は撮影終了後も、足跡はしばらく深い状態のままずっと残されていたそうです。ところが、撮影時の深さのまま残したところ、牧場内の牛が落下する事故が危惧されたことから、意図的に足跡が浅く埋められることになったのだとか。このクアロア・ランチでは他にも、『GODZILLA』のパネル展示も行なわれていますので、次回もし皆様がハワイ旅行で訪れる際は、是非チェックしてみてくださいね♪
Kualoa Ranch Hawaii
・住所:49-560 Kamehameha Hwy. Kaneohe, HI 96744
・電話: (808) 237-7321
・URL:https://www.kualoa.jp/(外部リンク)
☆また、ゴジラ・ストア様公式ホームページ(外部リンク)では、「第3回 あなたが選ぶ!東宝怪獣ソフビフィギュア!<決選投票>」と題し、先程ご紹介したジラを含めた選ばれし怪獣達の中から、ソフトビニール人形の発売を決定する人気投票が実施されました。ジラは果たして商品化されるのか・・・これからの展開に期待です♪
いかがでしたか?
少し長くお話をしてしまいましたが、日本のゴジラがアメリカに進出するまでには、ここまで述べてきたような海外進出のための戦略と葛藤があったのです。
たとえ「黒歴史」よばわりされたり、ゲテモノ扱いされるような作品でも、
より広い視点から見つめてみると、意外な形で作品が重宝されていたり、観光地振興に一役買っていることに気付けたりと、新たな発見に恵まれることも多いのです。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅野正美、「MAGAZINEHOUSE HOUSE MOOK ゴジラ徹底研究 GODZILLA」、株式会社マガジンハウス
・尾崎明、「pen+完全保存版 ゴジラ、再び」、株式会社CCCメディアハウス
・小野俊太郎、「ゴジラの精神史」、株式会社彩流社
この記事を読んで頂き、「海外での日本特撮やアニメ作品の展開に興味を持った」という皆様、私の過去の記事やTwitterにて、海外現地での様子や商品展開についてもお話をさせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。
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