【なぜウルトラマンは人間に怒られたのか?]可能性は無限大!ウルトラマンメビウスの熱き友情物語とは?
皆さま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので11月も中盤ですが、皆さまいかがお過ごしですか?
気温の高低差が激しい日々が続いておりますので、どうぞご自愛くださいませ。
さて、今回のテーマは「メビウス(∞)」です。
「突然どうした?」と辟易される方もいらっしゃるかと思いますが、
そんなに難しいお話は致しません。
「メビウス」とはもともと、ドイツの天文学者・数学者である人物(アウグスト・フェルディナント・メビウス)の名前。彼は表裏のない「メビウスの帯」を発見し、数論の世界に大きな飛躍をもたらしました。
この「メビウスの帯」ですが、その表裏のない図形の性質から、無限を表わす記号「∞(infinity)」としても用いられています(数学でも、総和や極限を示す記号としてお馴染みですね)。
おカタい話はこの辺にして・・・無限という言葉を象徴する「メビウス」。
私達が暮らす現代の日本でもこの言葉は浸透し、数学だけでなく、日本が世界に誇る特撮ヒーロー番組のタイトルにも用いられました。
その番組とは、『ウルトラマンメビウス(2006)』。1966年に放送が開始された国民的特撮ヒーロー番組『ウルトラマン』シリーズの誕生40周年記念作品として放送されました。
そこで今回は、歴代ウルトラマンシリーズの中でも、人間と極めて深い友情を結んだウルトラマンであり、未来へ無限の可能性を秘めたヒーロー、ウルトラマンメビウスの物語を少しだけ辿ってみたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【バカヤロウ!それでもウルトラマンかよ!】地球人に怒鳴られたルーキーウルトラマン、メビウスのデビュー戦とは?
さてさて、本記事では『ウルトラマンメビウス』の物語に焦点を当てていきますが、その前に少しお時間を頂戴し、ウルトラマンシリーズについて概説をさせて頂けたらと思います。
ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とする特撮シリーズ。1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『帰ってきたウルトラマン(1971)』、『ウルトラマンエース(1972)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンレオ(1974)』、『ウルトラマン80(1980)』とシリーズが続いていきました。
今回ご紹介する『ウルトラマンメビウス(2006)』は、上述した『ウルトラマン』から『ウルトラマン80』までの7作品の世界観を継承した、ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作。
つまり、初代ウルトラマンからウルトラマン80まで、先輩ウルトラマン達が守り続けてきた地球を舞台に、ウルトラの父から地球防衛の命を受けたルーキー・ウルトラマン、メビウスが地球人の若者達と熱い友情を結んで地球を守る物語として放送されました。
ここまで概説すると、華々しいウルトラマンの活躍が描かれる物語なのでは?と期待してしまいますが、現実は違いました。
なんとこのメビウス、地球での最初の戦いでやらかしてしまい、あろうことか地球人に怒鳴り散らされるという大失敗をしてしまいました。
本作第1話において、メビウス最初の相手となったのは宇宙斬鉄怪獣ディノゾール。もともと群れで渡りをする怪獣でありながら、とある理由から1体のみが地球に進路を向けてしまいました。鈍重な巨体と共に、口から出す舌はビルをも切断する威力を持っている上、体中から光弾を放つ。さらに防衛チームの編隊をたやすく全滅させたという、1話にしていきなりの難敵ー。
そんなディノゾール相手にメビウスは戦いを挑みますが、彼にとって厄介だったのは、やはり何でも切断する舌でしたー。
この舌から避けるため、なんとメビウス氏、いきなりビルを盾にしてしまったのです。
これには「ビルを盾にしやがった!」と、戦いを目撃した特捜チームの隊員(特捜チーム『CREW GUYS』リュウ隊員)も怒りの指摘・・・。
当然ながら切断されたビルは音を立てて崩れます。その数、なんと一瞬で3棟。
さらにメビウスは、ディノゾールの体から放たれる光弾を避けるため、市街地の中をしきりに避け続けますが、建造物の間で避け続けたため、光弾が当たったビルはどんどん大破していきます。
避けに避けを重ねたメビウスは必殺光線(メビュームシュート)でディノゾールを仕留めます。しかし大変だったのはその後・・・
「バカヤローーーーーーー!なんて下手くそな戦い方だ!まわりを見てみやがれ!」(リュウ隊員)
メビウスの視界に広がるのは、無残にも破壊されたビルの数々・・・
「それでもウルトラマンかよ!なんも守れてねえじゃねえか!」(リュウ隊員)
泣きながら膝をつくリュウ隊員の姿を観たメビウスは、その後リュウ隊員が所属する特捜チーム『CREW GUYS』にヒビノ・ミライ隊員として入隊し、リュウをはじめとする隊員達と共に地球を守る決意を固めます。
「一緒に戦わせて下さい!あなたと一緒に戦いたいんです!」(ミライ隊員)
ミライの入隊後、新たな怪獣(地底怪獣グドン)が出現しますが、初陣での大失敗から学んだメビウスは、周囲に建造物のない更地へとグドンを誘導し、『CREW GUYS』の隊員達との連携でグドンを倒すことができました。
こうして、ウルトラマンメビウスと『CREW GUYS』の隊員達による友情と成長の物語がはじまったのでしたー。
【番組途中で仲間に正体がバレた?】故郷へ帰れと命令されたウルトラマンメビウスの決断は?
上述したグドンとの戦いの後も、メビウスと『CREW GUYS』の隊員達は、迫り来る怪獣や宇宙人達との戦いに身を投じていきます。
幾度となく起こる隊員同士の対立、その対立を乗り越えさらに深まっていく友情。さらに、もうひとりのウルトラマンである「ウルトラマンヒカリ」の登場や、かつて地球を守った「ウルトラ兄弟」達をも巻き込んだ一大決戦等、戦いが激しさを増していく中・・。
そんなある日のこと、メビウスことミライ隊員に、彼の故郷である「M78星雲・光の国」への帰還命令が、ウルトラの父とウルトラの母により告げられます。
その理由は、メビウスでは対処できない強大な敵が地球にやって来るためでした。
「どうして、地球にいてはダメなんです?」(メビウス)
「地球には、途方もない脅威が迫りつつある。」(ウルトラの父)
「だったらなおさら、僕が地球にいなければ。」(メビウス)
「いいえ。既に兄弟のひとりが地球に向かっています。あなたは戦ってはなりません。」(ウルトラの母)
「今の君が望めば、命を落とすのは確実だ。」(ウルトラの父)
ウルトラの父、母の警告のとおり、その後地球に姿を現したのは無双鉄神インペライザー。メビウスの必殺技はおろか、『CREW GUYS』の攻撃をも一切跳ね返す難敵でした。
「今まで、ありがとうございました!」(ミライ隊員)
死を覚悟したミライは、彼が入隊するきっかけをつくったリュウ隊員の目の前で変身します。
「ミライ・・・なんでお前が!」(リュウ隊員)
圧倒的な力の差・・・難敵・インペライザーを前に倒れ伏したメビウスを支援するために現れたのは、ウルトラの父と母の息子であり、かつて地球を守った「ウルトラ兄弟」のひとり、ウルトラマンタロウでした。タロウはメビウスが地球へとやって来る前、彼を教え導いた教官ー。即ち、タロウとメビウスは師弟関係にありました。
タロウの活躍でインペライザーは一旦退きますが、怪獣退治のベテランであるタロウでさえ完勝できなかった難敵は必ずまたやって来る・・・。
再出現したインペライザーを前にタロウは奮闘しますが大苦戦。タロウを助けるため、ミライ隊員はこれまで一緒に戦ってきた『CREW GUYS』の隊員達全員に自らの正体を明かします。
「ミライ。行け!行ってお前の強さを・・・ウルトラマンメビウスの強さを、タロウに証明してこい!」(リュウ隊員)
奮起したミライ隊員はウルトラマンメビウスに変身。かけがえのない仲間達の声援を受けたメビウスは、彼らとの友情の炎(ファイヤーシンボル)を胸に描いた新たな姿である、ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブへとパワーアップし、インペライザーを葬り去るのでした。
「メビウスは・・・俺達の仲間なんだよ!これからも一緒に・・・地球を守りてえんだ!頼む。一生のお願いだ。ミライを・・・メビウスを帰さないでくれ!」(リュウ隊員)
懇願するリュウをはじめ、『CREW GUYS』の隊員達の願いを聞き入れたタロウは、これからも途方もない脅威が地球にやって来ることを警告し、メビウスが地球へ残ることを許可します。こうして、メビウスことミライと、その正体を知った『CREW GUYS』の隊員達による新たな物語がはじまるのでしたー。
これまで放送されたウルトラマンシリーズにおいて、ウルトラマンに変身する隊員が、番組の途中で同僚達に正体を明かす展開は一種の「禁じ手」でした。各シリーズの主人公が自らの正体を明かすのは番組の終盤ないしは最終回がこれまでのお約束なのですが、あえて禁断の展開を試みたことにより、『ウルトラマンメビウス(2006)』という一作品としての厚み、さらにはミライと『CREW GUYS』の隊員達の友情はますます深まっていったのです。
【今度はマスコミに正体が暴露された!】地球人との友情が試された、ウルトラマンメビウス最後の決戦とは?
ウルトラマンタロウが警告した途方もない脅威ー。その正体は、かつてメビウスの故郷である「M78星雲・光の国」に大戦争を仕掛けた張本人であり、暗黒宇宙大皇帝を自称するエンペラ星人でした。
ある日、エンペラ星人は13体のインペライザーを世界各国の主要都市へ送り込み、ウルトラマンメビウスの引き渡しを要求してきます。
「余は皇帝。この宇宙に君臨する者。地球人に余の意思を伝える。ウルトラマンメビウスを追放せよ!奴は人間に化け、ある場所に潜伏している。奴を探し出せ。そして地球人自らの手で差し出すのだ。」(エンペラ星人)
「見ての通り、メビウスを倒すことなど造作も無い。即座に地球を滅ぼすことも可能だ。メビウスを地球より追放せよ。要求を呑むなら、あらゆる脅威から余が地球を守ると約束しよう。」(エンペラ星人)
1体ですら大厄介だったインペライザーを13体も送り込んできた上、言葉巧みに地球人を脅迫するエンペラ星人。そんな大事の最中、「ウルトラマンメビウスの正体はこいつだ」という見出しと共に、ミライ隊員の写真がゴシップ記事に掲載されます。
エンペラ星人による脅迫の渦中にある中、そんな記事を出されては日本政府も世論も動きます。政府関係者が『CREW GUYS』の基地へ押しかけ、ミライ隊員の引き渡しを要求してきたほか、テレビでは「ウルトラマンメビウスの正体」について報道特番が組まれます。
「お願いします。今こそ勇気を持ってください!侵略者の脅しに屈することなく、人間としての意思を示してください。ひとりひとりの心の声に従い、最後の答えを出してください。」(特捜チーム『CREW GUYS』のサコミズ総監)
メビウスの引き渡しに世論が傾倒する中、ミライ隊員が所属する『CREW GUYS』のサコミズ総監のメディアを通じた必死の訴えにより、政府・世論が共に導き出した結論は「メビウスを引き渡さない」でした。
・・・これに大激怒したエンペラ星人。メビウス(ミライ隊員)のいる『CREW GUYS』の基地に自ら襲撃をかけます。傷つき戦えないメビウスの代わりに、もうひとりのウルトラマンであるウルトラマンヒカリや、かつてメビウス達と親交を深めた宇宙人達も駆けつけ、共に戦います。
しかしその戦力は圧倒的。ある宇宙人は攻撃からGUYSを庇い逝った。ヒカリも力尽き、メビウス(ミライ隊員)も消滅した。
絶望に飲み込まれたリュウをはじめとするGUYS隊員達ですが、かつて地球を守った歴代のウルトラ兄弟の声を聞き、彼らのもとに帰ってきたミライ隊員と共に立ち上がります。
「GUYS!サリー!ゴーーーーーーーーーーーーーーー!」(サコミズ総監)
「G.I.G!メビウーーーーーーーーーーーーーーース!」(CREW GUYSの隊員達)
彼の名を冠したかけ声と共に、ミライ隊員と GUYSの隊員達はみんなでウルトラマンメビウスに変身します(G.I.G!とは、了解あるいは「わかりました」の意)。その姿こそ、炎の友情の究極形態であるウルトラマンメビウス・フェニックスブレイブでした。
みんなで変身したメビウスは無敵。エンペラ星人を追い詰めていくほか、メビウスを支援するために、ウルトラ兄弟の長男であるゾフィーも駆けつけます。
ウルトラマンと人間、種族を超えた友情の力でエンペラ星人を撃破したメビウスは、地球を去る決意を固めます。
「最後の戦いが終わった今、僕には新しい使命が出来ました。この星の人達と共に得た、大切なものを、光の国の新たなウルトラマン達に伝えていきます。」
「さようなら・・・。今まで、ありがとうございました。」(ミライ隊員)
目に涙を浮かべながら、メビウスに変身するミライ隊員。ひとり空へと飛び立ち、故郷へと帰っていくメビウスを、リュウ隊員達は見送ります。
「ミライーーーーーーーーーー!ありがとうーーーーーーー!」(リュウ隊員)
エンペラ星人との戦いが終結後、GUYSの隊員達は隊員としての職務を離れ、それぞれの道を歩むことに。ある者はサッカー選手の道へ、ある者は女性ライダーの道へ、ある者は医者の道へ、ある者は保育士の道へ、そしてリュウはCREW GUYSの隊長となったのでした。
ウルトラマンシリーズ誕生40周年作品として、2006年から約1年間に渡り放送された『ウルトラマンメビウス』は全50話の物語で、華々しく完結ー。
ウルトラマンと地球人とのかけがえのない「友情」を描き、好評を得た本作は、その後も複数の続編(派生作品)がビデオシリーズとして展開されました。
ある作品ではメビウスとGUYS隊員達との再会を描き、そしてある作品では、広大な宇宙を舞台にメビウスと絆を結んだメカ戦士との哀しき別れが描かれましたー。
そんなウルトラマンメビウスの登場から約18年の月日が流れた2024年現在ー。
メビウスの活躍は今日も続いています。後続のウルトラマンシリーズでは次世代のウルトラマン達を教え導く先輩ヒーローとして描かれているほか、その人気は中国やタイといった諸外国にも及び、本作の放送や関連商品も発売され続けている等、メビウスと地球人達との絆は途切れることを知りませんー。
約60年に渡るウルトラマンシリーズの歴史の中でも、地球人と極めて深い絆を結んだ唯一無二のヒーローであるウルトラマンメビウス。
これからも紡がれていくであろうウルトラマンシリーズの物語の中で、無限の可能性を秘めたメビウスはどんな活躍を見せてくれるのか?
期待に胸が高鳴りますー。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(『ウルトラマンメビウス』を視聴するなら)
・TSUBURAYA IMAGINATION(通称:ウルトラサブスク、外部リンク)