【目覚めろ!その魂!】仮面ライダーは一人で良い?闇医者が変身するアナザーアギトが駆け抜けた宿命とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので11月に入りましたが、皆さまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「覚醒」です。
「覚醒」とは、「目がさめること。目をさますこと」(広辞苑)と定義され、眠りからの目覚め、はたまた「これまでの自分とは別の自分になる」といった表現で、日常生活においても使用されている言葉です。
この「覚醒」ですが、「迷いからさめること」といったプラスな表現の他に、「覚醒剤」といった中毒性の薬物といった、マイナスな言葉としても使用されることは、皆さまもご存知のとおりだと思います。
良いようにも、悪いようにも、表現上の振り幅が広いことが言語的特徴である「覚醒」ですが、この「覚醒」を物語の重きに置き、進化した人間達の戦いと苦悩を描いた特撮ヒーロー番組がありました。
その作品とは、『仮面ライダーアギト(2001)』。本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第2作でした。
そんな『仮面ライダーアギト(2001)』には、4人の仮面ライダーが登場し、それぞれが自分に与えられた力を駆使して、人類を脅かす怪人達と戦いますが、時に誤解や信念の違い等で対立し、傷つけ合うこともありました。
そんな本作に登場する4人の仮面ライダーの中で、特に私のお気に入りだったのが、4人目の仮面ライダー、アナザーアギト。
彼は「とある事件」をきっかけに仮面ライダーに覚醒し、人間を救うために戦いますが、「人助けは全て自分がなさねばならない」という歪んだ信念から、他の仮面ライダー達と対立を繰り返していました。
「仮面ライダー同士が、なぜ力を合わせないの?」
とお感じの方も多いかと思います。そこで今回は、気難しい人物でありながらも魅力に溢れていた「アナザーアギト」に焦点を当て、彼の物語を少しだけ、辿ってみたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【時代をゼロからはじめよう】生まれ変わった仮面ライダーシリーズ!新ヒーロー像を確立した平成仮面ライダーの魅力とは?
さて、ここからはアナザーアギトのお話に入る前に・・少しだけ、仮面ライダーシリーズについてご紹介をさせてください。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーロー。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
しかし時代が昭和から「平成」に移り変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、仮面ライダーシリーズにおける「既成概念の破壊」でした。
この『仮面ライダークウガ(2000)』ですが、徹底した現実志向的な作風で物語が展開されました。仮面ライダーや怪人という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃され、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。
その結果、『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語が描かれました。
そんな平成という新時代における、新たな仮面ライダー像を構築した『仮面ライダークウガ(2000)』の次回作として放送されたのが、『仮面ライダーアギト(2001)』でした。『仮面ライダーアギト(2001)』は、人類が次なる姿である「アギト」へと進化を遂げようとしていた現代を舞台に、その進化を快く思わない人類の創造主が送り込む怪人から人々を守るため、3人の仮面ライダー達が対立・共闘を繰り返しながら人類の進化と繁栄を守る物語。
「なんか、複雑な話だね・・・」と思われるかもしれませんが、ざっくり概説すると下記が物語の流れです。
本作に登場する悪の根源は、謎の青年の姿をした「人類の創造主(闇の力)」、すなわち「神様」でした。神様は人類をまるでペットのように愛しすぎて、かわいい人類のままでいてほしい。しかし人類は次なる進化の段階に突入しており、ひとりひとりが新たな人類の姿である「アギト」になる可能性を秘めていた。よって神様は「アギト」になる可能性のある者を、配下である怪人達を使ってひとり、またひとりと殺害していく。
しかし、本作の主人公である仮面ライダーアギトと、彼と共闘する2人の仮面ライダー(仮面ライダーG3、仮面ライダーギルス)から成る3人の仮面ライダーは、進化へと進んでいく人類の未来を守るために怪人と戦い、最後には神様に勝利する・・・というのが、大まかな本作の流れです。
先述した『仮面ライダーアギト(2001)』には3人の仮面ライダーが登場します。はじめに、仮面ライダーの力を手にした記憶喪失の主人公・仮面ライダーアギト。2人目が、警視庁の人間が特殊なスーツを着て戦う仮面ライダーG3。3人目が、望まず仮面ライダーとなった仮面ライダーギルス。この3者を中心に、物語が展開されました。
仮面ライダーに「なった者」であるアギト、仮面ライダーに「なろうとする者」であるG3、仮面ライダーに「なってしまった者」であるギルス、以上3者の視点から物語が描かれていた『仮面ライダーアギト(2001)』ですが、本作の中盤以降に4人目の仮面ライダーが現れます。
その男こそ、アナザーアギトと呼ばれる闇医者、木野薫でした。
【アギトは俺ひとりでいい!】贖罪に取り憑かれた強き男、アナザーアギトの信念と悲しき過去とは?
さて、この4人目の仮面ライダーであるアナザーアギト。
このアナザーアギトに変身する人物こそ、木野薫と呼ばれる闇医者でした。もともとは天才外科医であった彼は、数年前に雪山で弟(雅人)と共に遭難し、重度の凍傷で右腕を失ってしまいます。失った右腕の代わりに彼に移植されたのは、凍死した弟の右腕でしたー。
この事件をきっかけに、木野は弟を死なせてしまったことへの責任を感じ「全ての者を自分の手で救わなくてはならない」という強迫観念に取り憑かれてしまいます。
とはいえ、木野の右腕は死んだ弟の腕。これを機に正常な医療活動はできないと判断された木野は、医師免許を剥奪されます。木野に残ったのは「全ての人を自分が助ける」という強い信念と、死んだ弟の右腕から伝わる激痛でしたー。
結果、困難な手術を高報酬で請け負う「闇の名医」となった木野ですが、異なる右腕でも健在な天才的手腕を駆使し、多くの人命を救います。しかしそんな彼の運命を大きく歪めたのが、彼が乗船した「あかつき号」での海難事故でした。
後に「あかつき号事件」と呼ばれるこの事件ー。当事件は、瀬戸内海上を航行していた船舶「あかつき号」が、怪人の出現に伴う超常現象に巻き込まれ、乗客全員がアギト(本作での仮面ライダーの総称)に変身する力の元である「謎の光」を浴びてしまうも、勇敢な香川県警のひとりの巡査(氷川誠)によって、乗員乗客全員が無事救助された事件でした。
この事件をきっかけに、アギトに変身する兆候のある人物を抹殺する怪人(アンノウン)の存在、そして自身が近いうちにアギトへと覚醒することを知った木野は、ついに4人目の仮面ライダー、アナザーアギトへと変身する力を得ます。
例え仮面ライダーに変身しても木野の信念は変わりません。「全ての者を自分の手で救わなくてはならない」という彼の信念は、「アギトは俺ひとりでいい」という歪んだものへと移ろいます。その矛先は人々を守る他の仮面ライダーや、時にアギトに覚醒する兆候のある者にも向けられました。
しかし、そんな彼もパワーアップした他の仮面ライダーの前に敗北。さらに怪人達を率いる存在(闇の力)によって、仮面ライダーへの変身能力を奪われたことを機に、自身がアギトの力に飲み込まれかけていたこと、そして己の弱さを悟ります。
そんな人間らしい感情を取り戻してきた木野に待ち受けていたのは、あまりにも切ない運命でしたー。
木野は怪人に襲われている少女を救助している最中に致命傷を受けてしまいます。
そんな状況でも、怪人の攻撃で傷ついた津上翔一(仮面ライダーアギト)に必死の治療を施す木野は、彼に呼びかけます。
「津上……俺は、アギトであることに飲み込まれてしまった人間だ。だがそれはアギトのせいではない! 俺という人間が弱かったからだ。俺は、自分の弱さと戦う。おまえも負けるな!」(木野)
木野の決死の緊急手術で、津上(仮面ライダーアギト)は無事に回復し、戦線へと復帰。木野(アナザーアギト)も力を合わせて、悪しき怪人を葬ります。
決死の戦いを終え、リビングでコーヒーを飲む木野。そんな彼に呼びかけたのは、木野を尊敬しながら行動を共にし、翔一への緊急手術に励む木野の懸命な姿を見た青年(浩二)でした。決死のオペを間近で見た彼は、「医者を目指したい」という自分の夢を木野に語ります。
木野は「お前なら出来る。」と微笑みます。
「浩二。コーヒーを頼む。」(木野)
木野は雪山で遭難した弟との記憶の中で、静かに息を引き取るのでしたー。
木野亡き後も、残った3人の仮面ライダー達の戦いは続き、最後は敵の総本山である「闇の力」を撃退することに成功します。
人々の未来は、仮面ライダー達によって守られたのでした-。
ここまで上述してきたとおり、『仮面ライダーアギト(2001)』は4人の仮面ライダー達が登場し、それぞれが掲げる信念の下で戦い、時に対立を繰り返してきました。私も本作を子どもの頃に視聴していましたが、たくさん仮面ライダーが出てくるのに、なかなか仲良くすることはなく、生じた誤解から仮面ライダー同士が本気でぶつかり合う状況を歯がゆく感じたこともありました。
しかしアナザーアギトという4人目のヒーローの登場によって、これまでの仮面ライダーシリーズが貫いてきた「人を守る」という使命にも様々な形があり、簡単に一括りに出来るものではないからこそ、幾度の対立を通じて最後に力を合わせる展開に歓喜するのだと学んだ興奮と体験は、大人になった今でも大切な財産です。
「アナザーアギト(木野薫)」という仮面ライダーは、物語の中で死んでしまいましたが、己の弱さと向き合い、人々の未来を守るヒーローへと駆け上がっていった彼の姿は永遠に輝き続ける、唯一無二の「仮面ライダー」であったと思います。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(仮面ライダーアギトを視聴するなら)
・東映特撮ファンクラブ(TTFC)(外部リンク)
(参考文献・URL)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.2 仮面ライダーアギト』、講談社
・鈴木康成、『語れ!平成仮面ライダー【永久保存版】』、KKベストセラーズ
・仮面ライダー図鑑(外部リンク)
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