【なぜ平成ライダーは世界で戦い続けるのか?】仮面ライダークウガからはじまった新時代の幕開けとは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
11月もいよいよ後半戦。
皆さまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「平成ライダー」です。
「平成ライダー」とは、『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダージオウ(2019)』まで毎年続いた、全20作の「平成仮面ライダー」シリーズに登場した仮面ライダー達の総称。
今や「毎週日曜日の朝にやっている」という認識が強い方も多いかと思います。
平成仮面ライダーシリーズは毎週日曜日の朝番組(いわゆる「ニチアサ」)としてテレビ朝日系列で放送され、シリーズ第1作『クウガ(2000)』の放送から約25年経過した現在も、日曜朝の仮面ライダーシリーズの放送は継続されています。
またその人気は国内だけに留まらず、今やアジア各国を筆頭に熱い支持を獲得しており、近年は北米でも配信やBlu-ray等で作品を楽しめるようになる等、世界各国に熱狂的なファンが多数いる、国際的なヒーローと呼んでも差し支えないと思います。
そこで今回焦点を当てるのは、平成仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダークウガ(2000)』。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、平成仮面ライダーシリーズの口火を切った特撮ヒーロー番組でした。
本記事では、そんな『仮面ライダークウガ(2000)』について、本作の物語と魅力に焦点を当てていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【塗り替えられた伝説】昭和から平成!新時代に熱くよみがえった仮面ライダークウガの物語とは?
本記事にて取り上げるのは、平成仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダークウガ(2000)』のお話。その前に少しだけ、本作に至るまでの仮面ライダーシリーズの歴史を振り返りたいと思います。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。「変身!」というかけ声と決めポーズで、主人公の姿がパッと格好良いスーパーヒーローに変わり、ショッカーの戦闘員達をなぎ倒し、恐怖の怪人を「ライダーキック」(必殺技)でやっつける描写が、子ども達の心を掴んだのです。
その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになりました。
そして時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、平成という新時代に誕生した本作で試みられたのが、上述した昭和の仮面ライダーシリーズにおいて構築された「お約束の破壊」でした。
『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公・五代雄介(演:オダギリジョー)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語として、約1年間放送されました。
本作は徹底した現実志向的な作風で物語が展開されたのが特徴でした。主人公・仮面ライダーと、それと戦う怪人という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃されたのです。
つまり、本作に登場する悪役・グロンギは悪の秘密結社ではありません。彼らは古代から蘇った戦闘民族であり、キーキー奇声を放つ「戦闘員」も雇用していないのです。原則、グロンギの怪人は単独で仮面ライダーに挑むのが特徴であり、手柄を怪人同士で競い合ったり、怪人達の頂点に立つ者に下級怪人が下克上を行なうことさえありました。
次章からは、そんな戦闘民族・グロンギと仮面ライダークウガとの戦いについて、焦点を当てていきたいと思います。
【繰り広げられる恐怖の殺人ゲーム!】超古代からよみがえった殺戮集団グロンギとは何者か?
さてここからは、『仮面ライダークウガ(2000)』の悪役である、殺戮集団グロンギについて焦点を当てていきたいと思います。
ことのはじまりは現代(2000年)。
長野県北部の九郎ヶ岳の奥深くにある超古代遺跡(九郎ヶ岳遺跡)から、古代文字が書かれた棺が発掘されます。信濃大学考古学研究室の一同が棺を調査したところ、超古代の戦士と思われるミイラと、ベルト状の物体が発掘されました。
・・・しかしこの棺、決して開けてはならないパンドラの箱でした。「勝手に触ったら呪うぞ」というような簡単な代物ではなく、かつて仮面ライダーとなって戦った超古代の戦士(ミイラ)が、超古代の人々の天敵であった殺戮集団「グロンギ」(怪人)を、自身を埋葬することと引き換えに封印していたものだったのです。
棺を開けてしまった結果、グロンギは現代によみがえり、教授をはじめ考古学研究室の一同は、グロンギの頂点である怪人(ダグバ)に惨殺されてしまいました。現代に解き放たれたグロンギ(怪人)は、日本社会に潜伏して殺戮を開始します。
しかし、超古代から蘇ったのは悪いことばかりではありませんでした。脅威(グロンギ)と共に希望(仮面ライダー)も復活し、発掘されたベルトを継承した青年(五代雄介)が現代の仮面ライダー、「仮面ライダークウガ」となったのです。
超古代から蘇った怪人(グロンギ)と仮面ライダー(クウガ)の出現、この前代未聞の状況に対し、警視庁はグロンギ(怪人)を「未確認生命体」と呼称し、「未確認生命体関連事件合同捜査本部」を設置しました。グロンギが実社会において悪事を働けば、警察が動いて捜査を開始、実力を行使する体制が整えられました。
超古代に封印され、現代に蘇った殺戮集団である「グロンギ」(怪人)。独自の言葉(グロンギ語)を話し、普段は人間の姿で現代社会に潜伏。特定の条件下で何人の人間を殺害できるのかを競い合う殺人ゲーム「ゲゲル」を展開し、ゲームをクリアすることによって階級が上がるランクアップ競争を行なう死の集団でした。
階級は最下層の「ズ」、中層の「メ」、上位集団の「ゴ」に分類され、階級が上がれば上がるほどゲームの難易度は複雑になっていくルールが展開されました。
まず「ズ」の集団はシンプルに、手当たり次第に人を殺害していく集団であったのに対し、「メ」では、2日で180人の殺害を目指す者や、乗り物(トラック)を使って人を轢死・圧死を行なう者、さらにはJR総武線の千葉行き電車の4両目に乗り合わせた乗客にマーキングを施し、下車した後に老若男女(子ども含む)を斬首して殺害した者等、ゲームにおける過程や条件がより複雑になっていきました。
そして上位集団である「ゴ」は、「グロンギ」の頂点に君臨する最強怪人「ダグバ」と直接対決できる殺人ゲームを展開し、「メ」以上に複雑なゲームを展開。ショパンの名曲「革命のエチュード」の旋律の音階と同じ頭文字のプールを襲い、音符の種類で殺害人数を決定した者や、ネイルアートの色と同じ車(タクシー)を強酸で襲った者、そして警察官のみを襲う「破壊のカリスマ」を自称した者達等、彼らと対峙するクウガも自身を大いに強化しなければ勝利できない強敵揃いでした。
ここまで上述してきたとおり、昭和の仮面ライダー達が戦った世界征服を謳う「悪の組織」に対し、平成の世に蘇った「グロンギ」は全く違った存在だったのです。
余談ですが、私は平成の生まれで、幼少期はまだ仮面ライダーシリーズのテレビ放送がお休み(中断)していた時期でした。その間に昭和の仮面ライダーシリーズにビデオで親しんでいたのですが、少しお兄ちゃんになっていざ『クウガ(2000)』が始まると、グロンギが本当に怖くて・・・。電車から降りたら首を鎌で切られるんじゃないかとか、トラックのバック時に鳴り響く「バックします」に反応してしまったり、プールで遊んだらムチで打たれて心臓発作を起こすんじゃないか等、実社会に潜む怪人を描いた『クウガ』の世界観と自分の日常をダブらせてしまい、恐怖に震え上がったものです。それだけ『仮面ライダークウガ(2000)』はリアリティ溢れる描写に溢れており、悪役であるグロンギも、かつての悪の秘密結社とは異なるアプローチで視聴者に絶大なインパクトを与えていた存在でした。
そんな数あるグロンギの怪人達の中でも、視聴者に特に強烈なインパクトを残したのが「ゴ・ジャラジ・ダ」(未確認生命体第42号)でした。
緑川高校2年生の少年達を12日間で90人殺すという殺人ゲームを展開。4日経過すると数センチの大きさに拡大する微細な針を少年達の脳内に撃ち込み、4日後に死ぬという死の宣告を実施。ターゲットとなった少年の周囲に現れ無言の存在感を発揮し、死に怯える少年達の姿を見て楽しむだけでなく、死んだターゲットの葬式にまで出現し、同級生にも恐怖を与えるという許し難い暴挙を繰り返す外道中の外道でした。
死の恐怖に耐えきれず自殺した少年も出してしまう程、極めて陰湿な戦術を展開するジャラジ。身を隠したターゲットの別荘に無言電話をかけたり、さらには「君達が苦しむほど・・・楽しいから」と、相手を苦しめることに快楽を感じる旨をターゲット達に直接伝える悪質さに留まらず、自身は滅多に姿を現わさない凶悪怪人でした。
しかし、そんな一瞬のジャラジの油断を突いて挑んだのは、クウガ(五代雄介)でした。怒りに満ちたクウガはジャラジに飛びかかり、マウントポジからジャラジの顔面を何度も殴りつけます。跨がった状態から何度もパンチを振るうクウガの拳には、本気の怒りが込められていました。
ジャラジの口元から飛び出す血反吐。地面に転がるジャラジを、絶大な怒りの鬼神となったクウガは決して逃しません。クウガは愛車のバイク(ライジングビートゴウラム)に乗り込み、ジャラジに突進。苦しむジャラジをフロントに乗せたまま、近くの湖面まで追い詰めます。
クウガはジャラジの針さえ跳ね返す、紫色の強固な姿「ライジングタイタンフォーム」へと変身し、怯えるジャラジを怒りと憎しみで何度も剣で斬りつけます。クウガの脳裏に浮かんだのは、殺された少年達の顔ー。
クウガは溢れる怒りを込め、地に仰向けになったジャラジを渾身の一撃で刺し殺します。怪人が死ぬ爆発の炎の中、クウガ(五代雄介)が見たのは、怒りと憎しみが頂点に達した凄まじき「黒いクウガ」の姿でしたー。
その後、何人もの犠牲者を出しながらも、仮面ライダークウガ(五代雄介)の戦いは続きます。クウガは自身が見た凄まじき力の「黒いクウガ」へ進化の道を歩んでおり、怒りや憎しみだけに力を振るえば、戦うだけの怒りの超人になり得る危うさを秘めていました。
来るグロンギの頂点「ダグバ(ン・ダグバ・ゼバ)」との最終決戦ー。五代は凄まじき「黒のクウガ(アルティメットフォーム)」になる決意を固めますが、彼の内に秘めたる優しさと精神は、クウガを憎しみの超人に変えることはありませんでした。「黒のクウガ」の目は五代の人格を秘めた赤い目に輝き、雪山での涙ながらの激しい殴り合いの末、ダグバを滅ぼします。
グロンギとの激しい戦いを終え、旅に出た五代の姿はどこかの国の青空の下にありました。青々と拡がるビーチで、揉める子ども達のもとに駆け寄り、得意のジャグリングを披露します。五代の凄技に子ども達はみんな笑顔。
五代は子ども達にさよならをします。
五代は青空の下で、美しい砂浜のビーチを歩きながら、またどこかへと旅立っていくのでしたー。
かつて仮面ライダークウガとなって人々の笑顔を守り抜いた彼は、これからもきっと世界中のみんなを笑顔にしていくことでしょうー。
上述してきた『仮面ライダークウガ(2000)』は、約1年に渡る放送を終了し、その放送枠は、次回作『仮面ライダーアギト(2001)』へと継承されることになります。その後も仮面ライダーシリーズは1年ごとにシリーズを新生させる形で放送が継続されることとなり、やがて「平成仮面ライダーシリーズ」として定着していきました。
まもなく平成が終わりを迎える2018年放送のシリーズ第20作目『仮面ライダージオウ』を最後に、「平成」の仮面ライダーシリーズは、次なる時代である「令和」の仮面ライダーシリーズへとバトンを手渡すことになります。
現在は令和シリーズ第6作『仮面ライダーガヴ(2024)』が放送中ですが、約25年の長期間に渡り、毎年シリーズを一新しながら朝番組として放送を継続してきた特撮ヒーロー番組というのも、国際的な見地から見ても非常に珍しいと思います。
私達にとっての「当たり前」は、異国では「当たり前」ではないので、故に海外の人達は仮面ライダーに熱い関心を向けるのかもしれませんー。
私事ですが、幼少期より日本とハワイの二カ国を拠点に生活をしてきたので、現地で『人造人間キカイダー』をはじめとする日本の昭和特撮ヒーローや、海外版スーパー戦隊シリーズである『パワーレンジャー(Power Rangers)』が浸透してきた状況の中、現地で仮面ライダーの話をする機会は、昔は限定的だったのに対し・・。
昨今では、平成や令和の仮面ライダーシリーズの話題をハワイ(米国)で見たり聞いたりする機会が着々と増えてきたほか、日本のキャラクター商品をハワイで買える場所が多数新設されるようになったりと、現地での仮面ライダーシリーズの浸透をより身近に感じられるようになってきた印象です。
特にコロナ前とコロナ後では、現地の人達の平成や令和の仮面ライダー達に対する反応もすっかり変わっていて、『仮面ライダーカブト(2006)』のTシャツを着て靴屋さんに入れば、店員さんと日本の特撮ヒーローの話に花が咲いたり、レコード屋さんで平成仮面ライダーのBlu-rayが並んでいたり、さらには『仮面ライダーゼロワン(2019)』をTシャツを着て歩けば、『それって仮面ライダーゼロワン?』と声をかけてもらったりと、ハワイに里帰りする度に仮面ライダーシリーズの浸透を直接感じる機会も増えてきました。
作品の放送や配信、玩具にコミック等の関連商品を通じて、今や日本だけでなく、国境を越えて活躍し続ける仮面ライダー達。
世界を舞台に輝き続けるその勇姿は永遠に不滅であり、次なる時代へ向けて、仮面ライダーシリーズはこれからどんな進化を遂げていくのか、期待に胸が高鳴ります。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(仮面ライダークウガを視聴するなら)
・東映特撮ファンクラブ(TTFC)(外部リンク)
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.1 仮面ライダークウガ』、講談社
・鈴木康成、『語れ!仮面ライダー』、KKベストセラーズ
・宇城卓秀、『僕たちの「仮面ライダー」怪人ランキング』、株式会社宝島社
(本記事でご紹介した米国ハワイ州 観光地アクセス)
・Ala Moana Center
住所:1450 Ala Moana Boulevard, Honolulu, HI 96814
公式サイト:https://www.alamoanacenter.com/ja/(外部リンク)
・ドン・キホーテ カヘカ店
住所:801 Kaheka St. Honolulu HI 96814
公式サイト:Shop Groceries, Food, Electronics, Apparel, and Cosmetics at Don Quijote Hawaii! Your one-stop shop. | Don Quijote Hawaii (外部リンク)