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恋愛相手がいないことで不幸になる「恋愛の呪い」にかかっているのは女性ではなく男性の方である

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

未婚男性の不幸の要因

未婚は既婚より幸福度が低く、女性より男性の方が幸福度は低く、年代別には40代がもっとも幸福度が低い。つまり、「40代で未婚の男性が一番不幸である」という話は以前こちらの記事(なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか)で書いた。

ちなみに、この幸福度とは主観評価である。5段階評価のトップ2を幸福とみなし、ボトム2を不幸としたものだ。

前回は、「年収と幸福度」の関係について言及したが、今回は「恋愛と幸福度」について深掘りしたい。

常々、お伝えしている「恋愛強者3割の法則」通り、未婚男性といっても大体3割は常に恋愛相手がいる。それは恋愛至上主義時代といわれた40年前から変わっていない。逆に言えば、7割は「現在彼女がいない男性」なのである。では、恋愛している未婚男性は幸福で、していない未婚男性が不幸なのだろうか?

調べてみた。

恋愛と幸福度の関係

未婚男性の恋愛状況を3段階に分け(現在恋人あり/現在はいないが過去に付き合った経験あり/今まで一度も恋愛相手がいたことがない)、それぞれの幸福/不幸度を年代別にグラフ化したものが以下である。比較対象のために女性及び既婚者もあわせて掲出する。

まず男性であるが、幸福度と不幸度の高さが、「妻がいる→彼女がいる→彼女がかつていた→一回もいたことがない」という順番で見事に並んでいる。「かつていたが今はいない」という未婚男性の30代以降で幸福度より不幸度が逆転する。「一度もいたことがない」という生涯未恋者は全年代で不幸である。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

一方、女性はどうだろうか。

女性も基本的には男性同様の順番で幸福度が下がり、不幸度があがるのだが、幸福度を不幸度が上回るのは「一度もいたことがない」40代のみでその差も男性に比べれば微々たるものだ。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

こうしてみると、恋愛によって幸福度が左右されるのは、女性より男性の方であるということが言える。イメージ的には反対だと思っていた人が多いのではないだろうか。

言い換えると、女性は、結婚や恋愛をしていると幸福度は高まるが、恋愛していないからといって特別不幸度が高まるというわけではなく、男性の方が恋愛相手の有無で不幸度が大きく影響を受けるということである。

不幸感満載の男が恋愛できるか?

2020年国勢調査では男性の生涯未婚率は28.3%となりほぼ3割にならんとしている。生涯未婚男性のうち、実にその8割が「一度も恋愛相手がいたことのない」生涯未恋者であることもわかっている。あわせて、男性の生涯未婚率は年収が低ければ低いほど高くなる。実際、未婚男性でも年収500万以上稼いでいる場合の幸福度は高い。

以上のことから、未婚男性の不幸度の高さは、低年収により恋愛や結婚ができないことによるものなのか、と考えたくもなるが、そうとは断言できない。

実は、未婚だから不幸、年収が低いから不幸という因果ではなく、不幸感が高いから未婚なのであり、不幸感が高いから年収も低いという逆の因果である可能性が高い。

写真:イメージマート

よくよく考えてみてほしい。みるからに「俺は不幸だ」という顔をした相手と恋愛しようと思うだろうか。その証拠に、未婚男性の不幸人口は年代があがっても不変であり、それはつまり、幸福な未婚男性だけが結婚していると読み取れるからである。

結婚したらしあわせになれる?未婚の「幸福人口」と「不幸人口」を試算

男の方が恋愛という呪いにかかっている

しかし、そうであるとすればむしろ希望がある。なぜか?

「恋愛していないから不幸」という因果になってしまうと、恋愛弱者は途方に暮れる。「稼ぎが少なければ不幸」と断じられてしまうと多くの低年収の未婚の若者にとってしんどい。

それでなくても、婚活の現場では、特に男性は「好きになった相手に好きになってはもらえない」「問答無用で年収の足切りにあう」という痛い目にあい続け、マッチングアプリでは「全然デートにすら至らない」という現実が続くわけで、そうした状況を「選ばれないのはあなた自身に問題がある」などと自己責任にされる。「それでどうやって幸福感を感じられるんだ」と叫びたくもなるだろう。

そうではなく、視点をまったく変えてみる。「恋愛しているとかしていないとか関係なく、まず幸福になることが先で、幸福ならば恋愛も収入もついてくる」と言われれば、むしろ婚活の前にやるべきことを見出せるのではないか。たとえば、仕事にやりがいを見出すか、オタク趣味を究めるとか。事実、オタク趣味のある未婚男性の幸福度は、彼女がいる未婚男性の幸福度及び年収500万以上の未婚男性と変わらないくらい高い。

写真:アフロ

婚活がうまくいかない場合は婚活を一旦手放してみるという視点が必要かもしれない。

「結婚したら幸せになれるはず」という呪いは、女性ではなく、むしろ男性の方にこそ降りかかっている。未婚男性が不幸感を抱えるのはそこに原因があるのかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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