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不幸度の高い中年未婚男性~恋愛よりも高年収よりも幸福感を得られること

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

未婚男性が全員不幸なのか?

未婚男性の幸福度は低い。もともと男性の方が女性より幸福度は低く、既婚より未婚の方が低く、若者より中年の方が低い、つまり、まとめると、未婚の中年男性がもっとも幸福度が低いということになる。それについては、以前こちらの記事に詳しく書いた通りである。

なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか

しかし、だからといって、未婚男性全員が不幸なわけではない。他と比べて、不幸だと感じる割合が多少高いだけに過ぎない。

未婚男性の幸福度が高いからといって、「彼らが不幸なのは、一人で過ごす時間が多く、人との関わりがないからだ→彼らは孤独に苦しんでいる→だから自殺や孤独死が多いのだ」などという全く根拠も因果もない推論に結び付けて断じる論者などがたまにいてびっくりする。

未婚男性だからといって誰もが人と関わっていないわけではない。仮に、一人でいる時間が多くてもそれに苦しんでいるわけではない。自殺や孤独死に結び付けるなら、それは未婚男性というより若者の自殺の問題であり、孤独死に至ってはその多くは元既婚男性である。あまりに表層的・短絡的な無理やりすぎるこじつけだと思う。

未婚男性でも幸福な人達

とはいえ、配偶関係の属性からいえば未婚男性の幸福度が一番低いのも事実である。しかし、未婚男性と一括りに言っても、いろいろである。

そこで様々な条件において、未婚男性全体平均の幸福度より高い属性のものは何かを抽出してみた。

結果は以下の通りである。

未婚男性でも、「現在恋人がいる」または「年収500万円以上である」場合は幸福度が高い。恋愛や経済的条件が満たされていると未婚男性も幸福なのだ。

しかし、それと遜色ないレベルで「何かしらオタク趣味を持つ」未婚男性の幸福度も高い。むしろ中年以降、全体的に幸福度が下がる中においても、「オタク」の場合は、「現在恋人がいる」男よりも、「年収500万円以上稼ぐ」男よりも幸福度が高くなるのである。これは、女性の場合もほぼ同様で、オタクの幸福感は高いと言える。

総論的には、確かに「未婚は不幸である、男の未婚はなおさら不幸である」と言えなくもないのだが、未婚であろうと、恋人がいなかろうと、低年収であろうと、何事か打ち込めるオタク的趣味があれば、十分幸せでもあると言える。

オタクの幸福度が高いワケ

ちなみに、個々のオタク属性によっても調べてみた。結果だけいえば、男女共通して全体の幸福度より約1.2倍以上も幸福度が高いものは「アイドル」「プロレス」「野球・サッカーチームの応援」の3つであった。これらに共通するのは「誰かを支え、応援する」という気持ちである。

写真:イメージマート

そもそも、既婚者の幸福度が高いのは、「家族や子どもがいるから」という要因がある。

高い収入があるわけでも、何か他人より秀でた能力があるわけでもなく、むしろ自己有能感は低いにもかかわらず、既婚者は「あるがままの日常」の中に幸せを感じられる人が多い。それは、家族や子どもを自分が支えている、応援しているという満足感によるものなのかもしれない。

家族や子どものいない未婚のオタクも、アイドルやプロレスラー、好きなスポーツチームを応援することで満足を得ている。ある意味それは「擬似家族・擬似子育て」とも言えるのではないだろうか。

親は、自分の子の大学授業料や生活費がどんなに高額でも、それを無駄な出費だとは思わない。同様に、アイドルオタクがアイドルのために消費するのも同様だろう。むしろ惜しみなく注ぎ込む。そこに何かの見返りを求めることもない。

お金をかけたからといって、そのアイドルが売れるとも限らないし、そのチームが優勝するわけではない。しかし、そうしたいのだ。経済的合理性や効率性など、そんなことはどうでもいい話である。未来に確実な成功や報酬が約束されていなくてもいい。

むしろ、不確実な未来を一緒に喜びたいのだ。理屈やリスクではなく思わず行動してしまうこと。自分の役割をそこに見いだせること。それこそがオタクの幸せの正体なのかもしれない。

恋愛強者=恋愛オタク

ちなみに、常に誰かと恋愛をし、付き合う相手が途絶えたことがないような恋愛強者の男たちがいる。世間的に彼らはオタクとは呼ばれないが、見方を変えれば、恋愛強者とは恋愛オタク」と言える。

写真:イメージマート

時間も手間も惜しまず、恋愛相手に対して喜んでもらいたいと行動している。デートプランにしても、デート中の会話にしても、ラインのコメントひとつにしても相手に喜んでもらうための努力を惜しまない。

興味関心領域が違うだけで、人は皆「何かしらのオタク」なのであり、「オタク」でいさせてくれる対象がある人のことを「幸せ者」と呼ぶのだろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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