浅田真央選手のメッセージ:IMA「スマイル/この素晴らしき世界」:失敗はあるけれど傷ついても微笑んで
■浅間真央選手エキシビション
クルクルと楽しそうに回っていた、フィギュアスケートの真央ちゃん。生活の多くを犠牲にしてのスケート。栄光と挫折。悔し涙のバンクーバーオリンピック。母との死別。基本からのジャンプのやり直しと不調。復調。
ソチオリンピック、ショートプログラムでのまさかの失敗。でも、コーチの言葉で吹っ切れたと語る浅田真央選手。フリーでのみごとな復活。万感の思いを込めた涙。6位に終わったけれど。「自分らしい演技ができた」。「2回とも最高のオリンピックだった」と語って。笑顔のエキシビション。
使用曲は、カナダのシンガーソングライターであるイマが歌う「スマイル/この素晴らしき世界」(IMA "Smile / What a Wonderful World")。傷ついても微笑んで。この素晴らしい世界で。
この曲は、「スマイル」と「この素晴らしき世界」の2曲からなっています。
浅田選手は、失敗をスマイルに変えました。帰国後の笑顔の記者会見でした。
■「スマイル」 "Smile"
「スマイル」は、喜劇王チャーリー・チャップリンが1936年公開の映画「モダンタイムズ」のために作曲した楽曲です。1954年にジョン・ターナーらによって、歌詞がつけられました。ナット・キング・コール(年配の方にとってはナッキンコール。死の直前に日本語でも歌ってくれたL・O・V・Eも感動的な歌手)によって歌われ、ヒットチャートに入りました。その後、多くの歌手がカバーしていますが、マイケル・ジャクソンは、「スマイル」を最も好きが曲だと語っています。
♪♪
微笑んで。
どんなに辛くても。苦しくても。
恐れや悩みを越えて。
君ならきっと乗り越えられる。
微笑みを忘れないなら。
悲しくて、涙に濡れるときもある。
それでも、人生には価値がある。
今は試練の時。
だから、微笑んで。
笑顔を輝かせて。
♪♪
こんな意味の歌詞が歌われています。
■「モダンタイムズ」と「放浪紳士チャーリー・チャップリン」
この曲が使われた映画「モダンタイムズ」(1936)。この映画の世界は、産業は発展していますが、人間性が失われている世界です。主人公のチャップリンは、貧しい少女と出会い、彼女を助けるために、奮闘します。
映画のラストシーンでは、絶望する少女にチャップリンが小さな希望を示す場面で、感動的に「スマイル」が流れます。喜劇映画なのに、この曲は短調。寂しげなメロディー。でも、心に希望と喜びがしみこみます。
イギリスで1889年に生まれたチャップリン。子ども時代のチャップリンが育った家庭は、決して恵まれた家庭ではありませんでした。父はアルコール依存症で亡くなり、母は精神病院に収容され、チャップリンは貧しい子ども時代を送ります。彼は孤児院(現代で言えば児童養護施設)や貧民街で暮らしながら、ショービジネスの世界に入っていきます。
チャップリンの作品は、大爆笑の喜劇ですが、貧しい人々の悲しみや、苦しくても純粋さを失わない美しい人々を描いています。単なるドタバタだった喜劇映画を、ペーソスあふれる作品に変えました。映画を見せ物から芸術にまで高めた男とも言われます。
チャップリンは、アメリカに渡り大成功を収めますが、アメリカ政府への批判のために国外に追放されます。20年後、アメリカのアカデミー賞会場に呼ばれたチャップリンを、ハリウッドの人々はスタンディングオベーションで迎え、「スマイル」が歌われました。
映画「放浪紳士チャーリー」(1977)は、チャーリー・チャップリンのそんな生涯を描いた映画です。この映画でも、「スマイル」が使われています。彼の人生が、まさに「スマイル」で歌われるような人生でした。
(私は、チャップリンが亡くなったと聞いた日、ちょうど公開されていたこの映画を観に行きました。映画館で、日本の大喜劇役者である伴淳三郎さんに出会い、サインをいただいた思い出があります。)
■「この素晴らしき世界」"What a Wonderful World"とルイ・アームストロング
「この素晴らしき世界」 ("What a Wonderful World")は、ルイ・アームストロングの歌で1968年にヒットした曲です。ベトナム戦争が行われていた時代の反戦歌と言えるでしょう。最初、アメリカではあまりヒットしませんでしたが、ヨーロッパでは大ヒットしました。
♪♪
緑の木々、赤いバラ。
僕と君のために。
何て素晴らしい世界なんだ。
青い空と白い雲。
七色の虹。
何て素晴らしい世界なんだ。
みんなが、「こんにちは」って挨拶をして、
握手をしている。
本当は「アイ ラブ ユー」って伝えている。
何て素晴らしい世界なんだ。
♪♪
こんな意味の歌です。
ただのんきに自然のすばらしさを歌っているのではなく、悲惨なことが行われているこの世界に向かって歌われている歌です。
ルイ・アームストロングは、20世紀を代表する黒人ジャズ・ミュージシャンですが、彼も貧しい家庭で育ちました。黒人差別の中で育ちました。少年院にも入っています。
しかし、彼は音楽と出会い、幅広い活動を続けました。
■「スマイル/この素晴らしき世界」"Smile / What a Wonderful World" イマ(IMA )と浅田真央選手と私たち
優れたスポーツも、音楽も、映画も、一流の人たちが厳しく技術を磨いた成果です。でも同時に、みんなが私たちと同じように苦しみと喜びを味わっています。
ソチオリンピックで、浅田真央選手や他の選手達を心から応援した人々は、彼らの汗と涙を知り、共に悔しがり、共に喜びます。芸術もスポーツも、私たちに感動を伝えます。そして、この世界の真実も。
世界では悲惨なことが起こる。戦争もテロも終わらない。
争いは続いている。
悲しみの涙は絶えない。
でも、私たちは素晴らしい世界を見る。
微笑みを忘れないで。
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*心理学的に言って、いつも微笑んでいる人は、幸福感が高まります。いつも笑顔の人は、まわりの人の幸福感も高めます。
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今の日本にも、貧しい子どもはたくさんいます。