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近所の騒音苦情。深夜「赤ん坊が寝られない」と注意した家族を銃で「処刑」米報道

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
乱射事件で使用されたAR-15型ライフルのイメージ写真。(写真:イメージマート)

アメリカ、テキサス州クリーブランド市で先月28日深夜、男が住宅に押し入りライフル銃を乱射、8歳の男の子を含む5人が死亡、少なくとも3人が怪我をした。

事件のきっかけは「赤ちゃんが寝る時間なので静かに」という隣人の注意からだった。

38歳のフランシスコ・オロペザ(Francisco Oropeza)は深夜、自宅の庭で射撃の練習をしていたところ、隣人から「幼児が何度も目を覚ますので、射撃を止め静かにするよう」促された。容疑者はその注意に激昂し、犯行に及んだと見られている。

オロペザ容疑者。事件当時、酒に酔って射撃の練習をしていたという情報もある。
オロペザ容疑者。事件当時、酒に酔って射撃の練習をしていたという情報もある。提供:FBI/ロイター/アフロ

事件後、オロペザ容疑者は逃走したが、4日後の今月2日夕方、自宅のクローゼットに積まれた洗濯物の山の中に隠れているところを発見、拘束された。重罪犯の逮捕妨害など蔵匿の重罪で、52歳の妻もその場で逮捕された。

この事件は闇が深い。

日頃から近所のいざこざがあったのだろうか? 事件に使われたのはAR-15型ライフルで、米各紙は「5人全員が頭を撃たれ、処刑スタイルで殺された」と報じた。

容疑者はメキシコ国籍で、これまでアメリカへの不法入国を繰り返し、2009年から16年の間に4回も強制送還になったと報じられている。また別の罪で懲役刑も下されていた。

そのような人間がなぜ、銃(しかも戦場で使うような殺傷能力の高いライフル銃)を持つことができたのか、謎は深まる。

ここは中南米の人々が身を寄せ合う地区なのだろうか? 殺された家族はホンジュラス国籍で、住宅には10人程度がいたというが、永住権を所持する1人を除き全員が不法滞在者だった。

容疑者の逃走中、テキサス州のグレッグ・アボット知事は、国外逃亡の恐れもある凶悪犯罪者の逮捕のため、報奨金5万ドル(約670万円)を提案していたが、FBIによってさらに金額が引き上げられ、最終的には8万ドル(約1,000万円)がかけられていた。

比較的、住宅や敷地が小さく隣人との距離が狭い日本では、隣接した公園の子どもの声がうるさいなど近所の騒音問題や、タバコの煙など匂いの問題がたびたび問題として挙げられる。一方、住宅や敷地が広いアメリカでは、子どもの声や匂いの問題などは聞かないが、それでも近所とのトラブルが大事件に発展することがたまにある。

特に大都市になるとアパートが小さいので、近所や子の騒音問題、タバコの煙問題、散歩中の犬の糞尿被害というと、大都市で発生することの方が多いだろう。筆者は大事件にはならなかったものの、隣人と騒音問題で数年前にトラブルになったことがある。

アメリカ全土で考えれば、住環境がゆったりしているので、本来であれば隣人とのトラブルは起こりにくいはずだが、庭が広いが故に射撃練習の音が引き金となり、このような痛ましい悲劇が起きてしまった。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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