Yahoo!ニュース

ライフルは容疑者の18歳の誕生日直後(事件2日前)に購入。テキサス州小学校銃乱射事件

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
AR-15のイメージ写真。犯人は誕生日直後に2丁のAR-15を合法的に購入した。(写真:イメージマート)

テキサス州ユバルディ市の小学校で24日、銃の乱射事件が起こり、児童19人と教師2人の21人が死亡。米主要ニュースは「建国史上、学校で起こった乱射事件でもっとも大きな悲劇の1つ」として報じた。

容疑者は地元出身の18歳、サルバドール・ラモス(Salvador Ramos)。現場に駆けつけた国境警備隊との銃撃戦の末、射殺された。

CNNABCなどによると、容疑者が事件で使用したAR-15ライフルは、容疑者の18歳の誕生日だった先週16日から6日後の22日、つまり事件の2日前に、容疑者が地元の連邦政府認定ディーラーから合法的に購入したものだった。

容疑者は日頃から銃の映像や写真、そして時には動物虐待のイメージをソーシャルメディアに投稿したり友人に送ったりしていたという。また事件を起こす3日前もAR-15の写真をインスタグラムのストーリー機能に投稿し、事件当日も祖母を撃ち、今から小学校に向かうという内容を投稿していた。

この事件と、昨年3月に発生した乱射事件には、いくつか共通点がある。ジョージア州アトランタ市近郊のマッサージ・スパ施設3ヵ所で(アジア系6人含む)8人が死亡、1人が負傷した事件と、その直後にコロラド州ボルダー市のスーパーマーケットで10人が死亡した事件も、容疑者は共に21歳と若年の男だった。そして、それぞれが事件直前(前者は殺害当日、後者は事件の6日前)に、銃を購入していた。

参照

パンデミック以降、銃購入者が増加。「銃社会は危険」と考えないアメリカ独特の価値観とは(保釈金を支払わずとも被告が公判まで自由の身になれる新保釈制度について)

殺傷能力の高いAR-15を18歳になれば合法的に購入できるのは、何もテキサス州が特別なわけではなく、連邦法で認められている。比較的に銃規制が厳しいとされるニューヨーク州などでも、18歳の時点でアルコールは購入できないが銃なら免許なしで購入可能だ。ニューヨーク州のホークル知事はこれについて「間違っている」とし、この事件をきっかけに法改正を議会に働きかけるとした。

現時点で事件の動機は不明で、調べが進められているが、ラモス容疑者の人生は複雑だったようだ。容疑者は高校に入学したが、家族のことや衣類のことなどで同級生にからかわれたりいじめの対象として扱われ、喧嘩沙汰になることもあったという。最近はほとんど不登校状態だった。

ワイファイの件で母親と喧嘩し、2ヵ月前から祖父母と暮らしていた。容疑者は事件前、祖母に向けて発砲し、祖母は重体とされる。祖父の証言では、事件の日の朝、容疑者は電話代の支払いについて祖母と言い争いをしたが、ほかは特に変わったことはなかったという。また容疑者がAR-15を購入し、自宅に隠し持っていたのは知らなかったとABCに話した。祖父はフェロン(過去に重罪を犯し有罪判決を受けた人)のため、銃器を自宅に所持することは違法とされている。

小学校での銃乱射事件と言えば、誰もがコネチカット州ニュータウンで発生したサンディフック小学校銃乱射事件(2012年)を思い出すだろう。児童20人を含む計26人が犠牲となった。この事件以降に発生した銃乱射事件で殺された人数の多さを色で表したインフォグラフィックがこちら。

出典:Maggie Green, WTVD  Source: Gun Violence Archive
出典:Maggie Green, WTVD Source: Gun Violence Archive

アメリカでは再び、大きな銃の乱射事件が相次いで発生している。

15日、カリフォルニア州で台湾系の住民が集まる教会で68歳の男が銃を発砲し、1人が死亡、5人が負傷する事件があった。

その前日の14日も、同州ロサンゼルス市の観光地で1人が射殺され、ニューヨーク州バッファロー市のスーパーマーケットで18歳の男が銃を乱射し、10人(多くが黒人)が死亡した。

筆者の住むニューヨーク市内でも連日、銃がらみの事件が多発している。それらの事件は大抵治安の悪いエリアで夜間から深夜にかけて、ギャング同士や縁故関係の抗争として発生することが多いが、先月と今月は2ヵ月連続で、地下鉄車両内で白昼、銃を使った無差別事件が起こったばかりだった。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

安部かすみの最近の記事