高校生不倫ドラマ、センセーショナルなラッピングの中身は凡庸だった
制作発表から世の中をざわつかせたドラマDEEP『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ系)。第4話までの前半では、高校生不倫ドラマというセンセーショナルな打ち出しの一方、ストーリーはありきたりな印象だ。
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未成熟な高校生を不倫の対象として描く意味があるはず
主人公は、父親の不倫で3年C組に転校してきた女子高生。転入したクラスで中学生時代に思いを寄せていた彼と再会するが、彼は高校生結婚していた。一方、既婚者の担任教師はクラスの生徒と不倫している。主人公の母親も、かつて思いを断ち切った元恋人である、娘の同級生の父親との再会から、思いがぶり返していく。
クラスメイトの高校生同士の不倫、担任教師と生徒の不倫、保護者同士の不倫、主人公の父親の不倫と、不倫がてんこ盛り。狭い世間のなかで、教師も生徒も家族も誰もが不倫をしている、不倫に食傷気味になるドラマだ。
そのストーリーはというと、ふつうの高校生同士の恋愛のなかに“結婚している高校生”の設定を入れ込み、高校生不倫というワードありきで組み立てている印象。周囲の大人たちにも不倫をちりばめているが、それぞれの恋愛エピソードには既視感がある。
一方、これだけ不倫が重ねられる物語に嫌悪感を抱くが、それも狙いかもしれない。世間の縮図としてデフォルメして描くことで、ドラマは社会を映す鏡であることを示しているのだろう。
不倫自体はいつの時代にも社会のあちこちにあり、とくにSNS社会の現代は世の中を常ににぎわせている。そんな身近なはずの不倫だが、本作にはリアリティもなければ、ヒリつかせるような高校生たちの葛藤も心の揺れも伝わってこない。
高校生同士の意図しない妊娠を描いた前期『あの子の子ども』(関西テレビ・フジテレビ)には、大人たちの常識や都合で傷つき、苦しむ高校生のリアルがあった。高校生を描くことに意味があった。
しかし、残念ながら本作には、未成熟な高校生を不倫の対象としてテレビドラマが描く社会的意義や、現実の当事者たちへの示唆的なメッセージも、これまでの前半では伝わってこない。煽情的なだけの不倫をテーマにしたドラマに感じてしまう。
後半の展開で現代社会に問題提起をする名作になるか
ただ、ここからの後半で物語が大きく動くことも、これまでの流れのなかで示唆的な映像が挿入されていた。
本作は「2022年4月に導入された“18歳成人”により、高校生同士が親の同意なく結婚できるようになった新しい時代を生きる高校生たちの物語」とうたっている。
それが示すのは、劇中の「親に内緒で結婚している高校生」という設定のためだけではないはずだ。センセーショナルな打ち出しのためではなく、いま高校生の不倫を描くことによる社会へのメッセージが埋め込まれているに違いない。
不倫を描くドラマや映画は多く、そのなかには名作も少なくない。そこには、苦しみや悲しみ、嫉妬、怒りなど人間の激情が渦巻く人間ドラマがある。それは現実社会にも起きていることだから、世の中の関心や共感を集めやすく、社会的な関心も高まる。
高校生を主人公にした大人の物語になる本作は、現代社会に問題提起をする名作のひとつになることが期待される。
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