玉石混交の秋ドラマ前半の明暗 見続けるべき4本はTBS、NHK、Netflix
秋ドラマの序盤戦。今期は圧倒的にクオリティが高いわずか数本の見続けるべき作品と、その他多くの作品がはっきり線引きされ、出足から明暗が分かれている印象だ。なかでも群を抜いて作品力が高いのがTBSとNetflixの3作。NHKの意欲作も光っている。
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TBS日曜劇場と金曜ドラマが秋の2トップ
今期の文句なしNo.1注目作は、TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。第1話から、戦後の端島(軍艦島)を映像で再現したスケールの大きさから、映画のような重厚な質感の描写、70年を超えるふたつの時代を重ね合わせるメッセージ性の高いストーリーに圧倒された。
第1話で映し出された戦後の復興で活気づいていた1955年の端島は、いずれ炭鉱は閉鎖され、島内の街は消滅する。そこに2018年から先の日本の未来を投影するのか。現代社会およびいまを生きるわれわれへの問いかけがある。
見応え十分であり、この先への期待しかない本作の唯一の気がかりな点は、放送開始が10月末と遅く、選挙特番のための休止週があったことで、11月3日の放送でまだ第2話ということ。
10月期で終えるための駆け足になったりせずに、物語を存分に楽しませてほしい。もしくは、昨今少なくなっている2期連続ドラマにして、ストーリーを深く掘り下げてほしい(端島の海底のさらに底の地底を掘る炭鉱員のように)。視聴者はそれを望んでいるに違いない。
TBSからのもう1作が、金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』。自閉スペクトラム症の弟と主人公の兄の平穏な2人暮らしに、ライオンと名乗る小さな男の子が乱入。平穏だった日々が、嵐のような渦にのみ込まれていく。
兄弟の和やかな家族ドラマのようにスタートしたが、徐々にサスペンス要素が色濃くなってきている。主人公の姉と思しきライオンの母の消息、母息子のもとに起きた出来事、そして主人公に接近する会社同僚の裏の意図など、複雑に絡まる謎の全貌が少しずつ見えてきている。
サスペンスに引き込まれつつ、ライオンを取り巻く騒動のなかの兄弟の姿と心の動きに、ほっこり温まったり、切なくさせられたりする。気づくと感情を揺さぶられているドラマだ。
NHKプロジェクト脚本家チームによる気鋭ドラマ
そして、その尖り方に引き付けられているのが、NHK土曜ドラマ『3000万』。ある平凡な家族が事故に出くわし、思いがけず訪れた大金を手にする誘惑に負けたことから、危険な輩と隣り合う人生を歩むことになるサスペンスストーリーだ。
第1話の出足こそ既視感のあるストーリー展開だったが、すぐにその巧みなストーリーテリングに引き込まれた。大金を手にしたあとの家族の行動や、闇サイトで集まったと思しき犯罪集団のメンバーの関係性や言動、事故を事件と疑って追う刑事など、すべてにリアリティがあり、映像にずっと緊迫感が漂っている。
本作には、ほかの秋ドラマとは一線を画する、リアルに即した不穏な空気がある。ストーリーがどこに向かうのか、次に何が起きるのかまったく読めない、ワクワクと怖さが宿るドラマになっている。
NHKの脚本開発プロジェクトから生まれた本作の脚本は、WDR(Writers’Development Room)チームの脚本家4人が共同執筆している。そのクリエイティブからは、若い才能の芽が出始めていることを感じさせる。この世代が本格的にシーンで活躍するときには、ドラマ界の景色が一変しているかもしれない。そんな期待を抱かせる。
最高傑作との呼び声も高いNetflix社会派ドラマ
一方、作品性はまったく異なるが、TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』と同格の飛び抜けてすばらしい秋ドラマが、10月25日より配信スタートしたNetflix『地獄が呼んでいる』シーズン2だ。シーズン1の結果、引き起こされる事態を描く新展開になり、内容的にも説得力のある続編になっている。
本作は、社会を震撼させる超常現象が起こる世の中で、それをイデオロギーに利用して勢力を伸ばそうとするカルト教団、それを神の意志として祀り立てる過激な狂信者集団、超常現象を追いながら正義を掲げて両者と対立する組織、さらには超常現象とカルト教団を利用して社会秩序を保とうとする政府が、四つ巴となって衝突する、社会正義をめぐる争いを描くドラマだ。ただ、カルト色は強い。
好みによって評価は分かれるであろうインパクトの強すぎる作品だが、企画性からストーリーテリングまでここ数年の最高傑作との呼び声が高かったシーズン1を超える内容に仕上げてきている。
11月に入って中盤に差し掛かる秋ドラマ。秋が深まるとともに一世を風靡している野球の話題も一段落し、ドラマシーンがより盛り上がっていきそうな予感がある。引き続き前述4作と、それ以外にも広く注目していきたい。
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