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平手友梨奈、音楽番組出演への割れる評価 レイヤーが薄い?新規性がない?辛辣な応援の声も

武井保之ライター, 編集者
中村辰之介氏の著書『推し活を20倍楽しむ』(音楽之友社)より

元欅坂46のセンターであり、脱退後はソロアーティスト、女優として活動する平手友梨奈。新たな所属事務所・クラウドナインの創立5周年記念音楽番組『雨音』(フジテレビ系・10月16日放送)で久々にテレビ音楽番組に出演し、新曲「bleeding love」を披露したが、Adoとの一夜限りのスペシャルコラボとする「唄」でのダンスパフォーマンスを含め、さまざまな声がSNSやネットニュースに上がっている。

筆者は同番組で平手友梨奈がにじませた別格の存在感について配信したが、通常のエンターテインメント記事とはケタが違うアクセスとリアクションがあった。そこからは、新曲に対する評価が、アイドル時代から彼女を追うファン、ソロになってからのファン、Adoをはじめネットの歌い手文化になじみ深い若年層の音楽ファンなど、聴く人の世代や属性によって、大きく割れることが伝わってきた。

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そのなかで興味深かったのは、48グループ、坂道シリーズを15年間追いかけ、著書に『推し活を20倍楽しむ オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20』(音楽之友社)があるアイドル識者の中村辰之介氏の意見。アイドル時代の彼女のポテンシャルを深く知り、いまも応援するからこそ、「レイヤーが薄い」「その平手さんは知っている」と新曲への率直な感想を寄せてくれた。

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あえてダンスを封印する曲こそいまの彼女に必要?

「あの曲(「bleeding love」)に関しては、音は2020年代風になってはいるものの、秋元康さんの曲ほど平手さんの解像度が高くないと思っています。(秋元さんは)『不協和音』の後に『風に吹かれても』を書いて、“欅坂らしさ”について戸惑っている彼女に『でも、世の中ってそういうもんじゃん?』のひと言で納得させる振り幅がありました。

その振り幅が徐々に最適化されて『アンビバレント』や『Eccentric』のような孤独な自我を肯定するものが生まれたのでは、と思っています。平手像がどんどん分厚くなるんですよね。明るいけれど怖いというか、孤独だけれど悲しくもないというか。初期の曲と比較すると、確実に表現する主人公の内面は複雑になっているのに、それを的確に表現できていると思っていました」

それに対して、今回の事務所移籍後のソロアーティストとしての新曲は「レイヤーが薄い」、そして「その平手さんは知っている」以上の感想は持てなかったとする。

「『制服と太陽』や『キミガイナイ』のような、“これは聴いている自分の曲ではないか”と思わされたり、『ガラスを割れ!』や『不協和音』のような理不尽に立ち向かう要素もないですし、『二人セゾン』のような静ひつな美しさもないと僕は思います」

それゆえに中村氏は「彼女の良さを引き出せる歌詞が書ける人と出会って欲しい」とこれからの彼女に期待を寄せる。

『推し活を20倍楽しむ オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20』(中村辰之介著)画像提供:音楽之友社
『推し活を20倍楽しむ オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20』(中村辰之介著)画像提供:音楽之友社

天才と呼ばれる平手には、他者を寄せ付けないカリスマ性がある。その孤高の存在が唯一無二の個性となり、彼女の音楽にもつながっていた。それは、クリエイターが集まり、それぞれのクリエイティブを寄せ合うことでひとつの曲を作り出すネット音楽の文化とは、交わりにくい部分があるのかもしれない。

いまの彼女に必要なのは、その強すぎる個性をコントロールしながら引き上げるプロデューサーなのだろう。もしくは、セルフプロデュースでその道を切り開いていくか。

平手の歌や語りがアイドル時代もいまも変わらず好きという中村氏は「個人的には『渋谷川』や『ゼンマイ仕掛けの夢』のような、あえてダンスを封印して、声とわずかな楽器だけで等身大の“僕”を歌う曲がいま必要では、と思います」と熱い思いをにじませる。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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