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この一杯が博多ラーメンの歴史を変える! 唯一無二の豚骨ラーメンの凄さとは?

山路力也フードジャーナリスト
福岡ナンバーワンと称される豚骨ラーメンがついに関東初進出。

福岡屈指の行列店が6月24日『新横浜ラーメン博物館』に登場

今年開業30周年を迎えた『新横浜ラーメン博物館』。
今年開業30周年を迎えた『新横浜ラーメン博物館』。

 2024年、開業30周年を迎えた『新横浜ラーメン博物館』(神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21)。全国各地の人気ラーメン店が集結する日本初のラーメンコンプレックスに、6月24日(月)新たなるラーメン店が出店する。豚骨ラーメンの街、福岡博多で連日大行列を作る人気店『博多一双』(博多駅東本店:福岡県福岡市博多区博多駅東3-1-6)だ。

 『博多一双』は店主の山田晶仁さんが2012年、25歳の時に弟の章仁さんと二人で創業。以来地に足をつけた着実な店舗展開を進め、12年間で福岡市博多区内に3店舗を展開。どの店も地元客はもちろん、観光客やインバウンド客からも人気を集め、連日行列を作る人気店となっている。他にも『福はこび』『炉端屋台 正』『博多らーめん日助』などと別ブランドも展開。今福岡で最も注目を集めるラーメン店だが、今回が県外初出店となる。

新横浜ラーメン博物館地下1階に出店する『博多一双』。
新横浜ラーメン博物館地下1階に出店する『博多一双』。

 『新横浜ラーメン博物館』の30年の歴史の中で、福岡県から出店した店は『博多一風堂』『魁龍 博多本店』『ふくちゃんラーメン』『大砲ラーメン』『名島亭』『八ちゃんラーメン』のわずか6店舗のみ。いずれも全国にその名が知られる人気店ばかりだが、『新横浜ラーメン博物館』は単純に人気店にオファーをしているわけではない。ご当地ラーメンという食文化を伝えるに値する実力や歴史のある店にしか声掛けをしないのだ。

博多ラーメンを世界中に知らしめるチャンス

『博多一双』創業者の山田晶仁さん。
『博多一双』創業者の山田晶仁さん。

 「博多に来たら一双を食べて欲しい。一双のラーメンを食べに博多まで来て欲しい。そんな存在になれるように12年頑張って来ましたので、これまで県外への出店や施設などの出店はして来ませんでした。ラーメン博物館さんからのオファーは大変名誉なことで、ありがたいお話だとは思ったのですが、最初はお断りしていたんです。

 また施設内で博多の店舗と同じ味が出せるのだろうかという懸念もありましたが、厨房を改造して寸胴を6本炊けるような環境をラーメン博物館さんが整えて下さいました。創業時から多くのお客様にラーメンを食べて頂きたいと思って来ましたので、博多ラーメンや一双のラーメンを世界中に知らしめるチャンスと思い、出店を決断しました。

 県外初出店、関東に初出店、しかもそれがラーメン博物館さんというのは、やはりワクワクとドキドキがありますね。関東のお客様にどう受け止めて頂けるのか緊張もありますが、完全に手作りで博多と同じものをお出ししていきたいなと思っています」(博多一双 創業者 山田晶仁さん)

これからの博多ラーメンの流れを生み出す存在に

店舗内に構えた6本の寸胴を使って豚骨スープを炊く。
店舗内に構えた6本の寸胴を使って豚骨スープを炊く。

 「初めて私が『博多一双』さんを食べたのは2014年、創業されて2年目のことでした。その時すでに力強い勢いを感じて良いラーメンだと思いました。間違いなくこの店は未来の博多ラーメンを牽引していくはずと確信し、その後も定期的に福岡へと足を運んで食べていました。

 福岡の豚骨ラーメンと札幌の味噌ラーメンは、ラーメン博物館にとっても重要なご当地ラーメンだと考えているんです。2017年くらいから社内でも博多代表として一双さんを誘致しようという機運が高まっていきました。しかしコロナを迎えてしまい一旦止まって、コロナ禍が明けた2023年の連休明け頃に初めて正式にオファーさせていただきました。

麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』と共同開発した歯切れ良い平打ち細麺を福岡から直送。
麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』と共同開発した歯切れ良い平打ち細麺を福岡から直送。

 1994年にラーメン博物館が開業した時、博多ラーメン代表として出店頂いた『博多一風堂』さんは創業して9年目、店舗も本店の1店舗だけでした。しかし博多ラーメンの新しい流れを作っていく勢いがありました。『博多一双』さんも同じようにこれからの博多ラーメンの流れを生み出していくような可能性を感じています。

 今福岡は『非豚骨』が主流となりつつありますが、博多を愛してご当地ラーメンとして博多ラーメンを広げていきたいという『博多一双』さんの想いは、私たちのスタンスとも合致していると感じます。30年後とか50年後とかに福岡のラーメンの歴史を語る上で『博多一双』さんは必ず残っている存在であろうというのが、オファーの最大の決め手です」(新横浜ラーメン博物館 中野正博さん)

唯一無二の博多ラーメン「豚骨カプチーノ」とは

「豚骨カプチーノ」の異名を持つ『博多一双』の「ラーメン」。
「豚骨カプチーノ」の異名を持つ『博多一双』の「ラーメン」。

 白濁した豚骨ラーメンとして知られる博多ラーメンだが、そのスタイルは店ごとに異なる。数ある博多ラーメンの中でも『博多一双』は濃厚でパンチのあるタイプのラーメンで、特徴はなんと言ってもその豚骨スープだ。

 スープの表面一杯に敷きつめられた細かな脂泡はブレンダーで泡立てたものではなく、寸胴の中で自然に生まれたものだ。そのビジュアルからいつしか「豚骨カプチーノ」と呼ばれるようになり、いわゆる「泡系」と呼ばれる博多ラーメンのトレンドを生み出した。

 さらに日々骨を継ぎ足しながらスープを仕上げていく「呼び戻し」と呼ばれる製法によって、豚骨スープを発酵熟成させることで独特の香りと力強い旨味が生まれていく。今回の出店にあたってオープン日の2週間前からスープを炊き始め熟成を続けてきた。仕上げとしてオープン日の前日には博多で創業以来炊き続けてきたスープも投入して、さらなるブーストをかけていき博多と同じ味に仕上げる。

10代の頃から修業を重ねて25歳で独立開業したラーメン一筋の山田さん。
10代の頃から修業を重ねて25歳で独立開業したラーメン一筋の山田さん。

 「『取り切り』や『呼び戻し』など、豚骨ラーメンには色々な製法があるのですが、僕の好きな味は『呼び戻し』で熟成させたこの味なんです。継ぎ足さない『取り切り』のスープとの決定的な違いは、旨味成分でもあるアミノ酸の含有量だと思います。

 いくらスープが濃厚だと言ってもただ炊いただけで旨味成分が少ないものは美味しいと感じないと思うんですよ。うちのラーメンはお客様がスープを飲んだ時に、力強い旨味を感じてご満足頂けると思います。水と骨だけでここまでの味が出せるということを感じて頂きたいですね」(山田晶仁さん)

記憶に残るラーメンを作り続けたい

『博多一双』を兄弟で創業した、山田晶仁さん(左)と弟の章仁さん。
『博多一双』を兄弟で創業した、山田晶仁さん(左)と弟の章仁さん。

 「ご当地ラーメンの中で、博多ラーメンが最強だと思っているんです。そして博多には美味しい豚骨ラーメンを出すお店がたくさんあります。そこで勝つためには『誰が食べても美味しいラーメン』を作るのはやめようって決めました。万人受けは狙わずに好きな人にだけ食べて貰えるラーメンを作る。自分たちの食べたいラーメンを貫こうと思ってブレずにこれまでやってきました。

 また食べたくなるようなクセになる味が出せることって、ラーメンという食べ物ならではの凄さだと思っています。まずは先入観なく食べて頂いて、その上で強烈なインパクトが残るラーメンを作りたいんです。またあのラーメン食べたいなと思って頂けるような、記憶に残る忘れられないラーメンを横浜でもお出し出来るように頑張っていきますので、ぜひ食べに来て下さい」(山田晶仁さん)

※写真は筆者の撮影によるものです。

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【参考記事:新横浜ラーメン博物館ホームページ

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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