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ホットサンドの概念が変わる? 京都でリピーター続出の「次世代型」ホットサンドとは?

山路力也フードジャーナリスト
こんな焼きそばサンドは今までに食べたことがない。

京都祇園のホットサンド専門店『'OHANABATAKE』

京都祇園、『よしもと祇園花月』と同じビルにある『'OHANABATAKE祇園店』。
京都祇園、『よしもと祇園花月』と同じビルにある『'OHANABATAKE祇園店』。

 京都祇園、八坂神社の目の前で連日行列を作っている店がある。店の名前は『'OHANABATAKE(オハナバタケ)』(祇園店:京都府京都市東山区祇園町北側323 祇園会館)。厳選された牛肉をたっぷりと挟んだボリューム感のある「ビーフサンド」が人気のホットサンド専門店だ。

 創業者の長谷川宜弘さんは、京都生まれ京都育ちで大の「B級グルメ」好き。自分が美味しいと思うホットサンドを作りたい、今までにないホットサンドを作りたいと独学でホットサンドの開発をスタート。何度も試行錯誤を重ね、濃厚な味わいでインパクトのあるオリジナルホットサンドを作り上げた。

 2017年にキッチンカーで創業すると、全国各地で大行列を作る人気のキッチンカーとなり台数も増え、2022年には東大阪に初の店舗を構えた。2023年に京都祇園へ出店、その後も石垣島や千葉にも出店を広げ、2024年5月には『グランフロント大阪』にも出店するなど、その勢いはとどまるところを知らない。

圧倒的なボリュームのオリジナルホットサンド

『'OHANA BATAKE』のホットサンドはどれも具だくさんで食べ応え十分('OHANABATAKE)。
『'OHANA BATAKE』のホットサンドはどれも具だくさんで食べ応え十分('OHANABATAKE)。

 『'OHANABATAKE』の人気の秘密はオリジナルのホットサンドにある。香ばしくトーストされたパンからはみ出るほどにたっぷりと具材が入った、圧倒的な重量感とボリューム感。10数種類あるホットサンドの中でも一番人気の「黒トリュフビーフサンド」は、厳選された牛肉と黒トリュフをふんだんに使用した贅沢な逸品だ。

 「牛肉と野菜、そして卵だけと構成そのものはシンプルなのですが、味の決め手は当店オリジナルの『オハナソース』です。一般的なステーキソースでは味に一体感が出ないと感じ、肉にも野菜にも合う味わいのオリジナルのソースを一から作りました」(株式会社OHANA GLOBAL COMPANY代表取締役 長谷川宜弘さん)。

 他にもふわふわとろとろの卵がたっぷり入った「ふわとろ厚み玉子サンド」や、ベジタリアンでも楽しめる「ベジタブルポテトサンド」など、個性的で魅力的なホットサンドが数多く揃う。いずれもレギュラーサイズだけでなくハーフサイズも用意されているので、好みのホットサンドをセレクトして食べ比べる楽しさもある。 

人気製麺所『麺屋棣鄂』とのコラボレーションが実現

5月末より販売がスタートした新作「麺屋棣鄂焼きそばビーフサンド」('OHANABATAKE)。
5月末より販売がスタートした新作「麺屋棣鄂焼きそばビーフサンド」('OHANABATAKE)。

 そんな個性豊かなホットサンドで人気の『'OHANABATAKE』だが、5月に販売開始したばかりの新作ホットサンドが早くも話題になっている。京都の人気製麺所『麺屋棣鄂』とのコラボレーションによるホットサンド、その名も「麺屋棣鄂焼きそばビーフサンド」だ。

 『麺屋棣鄂』は昭和6(1931)年に京都で創業した三大続く老舗製麺所。日本全国の人気ラーメン店の麺を数多く手掛けており、いち早く京都や関西に「つけ麺」文化を根付かせた先駆でもある。麺屋棣鄂の麺を食べて感動した長谷川さんは、この麺を使ったホットサンドを作りたいと、麺屋棣鄂社長の知見芳典さんに直談判。長谷川さんの熱い想いに共感した知見さんは協力を快諾した。

「今までにない焼きそばサンドを作りたい」

麺屋棣鄂の「ウイング麺」をオリジナルのソースで仕上げた焼きそばと牛肉がたっぷり。
麺屋棣鄂の「ウイング麺」をオリジナルのソースで仕上げた焼きそばと牛肉がたっぷり。

 キッチンカーでも人気だった自慢の焼きそばを麺屋棣鄂製の麺で新たに作り、具材は牛肉を惜しげもなくたっぷり入れる。基本となる構成は固まったが、もっと美味しくなるはずだと長谷川さんは考えた。「自分が美味しいと思う、今までにない焼きそばサンドを作りたい」。長谷川さんは創業時と同様に、妥協することなく試作を繰り返した。

 「このままでも全然美味しいですけれど、ウチのウイング麺で作ったらもっと面白くなるかもしれません」。試食に立ち会った知見さんがふと呟いた。「ウイング麺」とは『麺屋棣鄂』が開発した中華麺の名称。特殊な形状のカッターで切り出すことで、麺の断面が「凸」型になっているユニークな麺だ。従来の麺には出せない独特の食感を持ち、さらにスープが絡みやすい利点がある。焼きそばにすることでウイング麺の個性がさらに際立ち、今までにない焼きそばに仕上がった。

麺、牛肉、パンの三位一体

独特な形状を持つ『麺屋棣鄂』のウイング麺を焼きそばに使うのは異例中の異例だ。
独特な形状を持つ『麺屋棣鄂』のウイング麺を焼きそばに使うのは異例中の異例だ。

 「棣鄂さんのウイング麺がとにかく美味しいので、麺の個性をしっかりと生かせるような、焼きそばを邪魔しないようなバランスを心がけました。食べていて楽しく飽きがこないように、揚げたウイング麺と刻んだ紅生姜で食感のアクセントを入れました。また店内利用のお客様には和風出汁を使った特製の卵黄ソースを一緒にお出ししておりますので、まろやかなすき焼き風の味わいも楽しんで頂けます」(長谷川さん)

 手に持った時のズッシリとした重量感。一口ガブリとかぶりつけば、濃厚なソースをまとったウイング麺が口の中で踊る。噛み締めるごとに麺本来の美味しさが深まっていく。そして牛肉の力強い旨味が焼きそばに重なり合い、トーストしたパンと見事に調和する。麺、牛肉、そしてパンの三位一体。「日本一の焼きそばサンド」と呼ぶべき逸品が完成した。

「焼きそばホットサンドを京都祇園の名物にしたい」

『麺屋棣鄂』の知見芳典さんと『'OHANABATAKE』の長谷川宜弘さん。
『麺屋棣鄂』の知見芳典さんと『'OHANABATAKE』の長谷川宜弘さん。

 京都の人気ホットサンド店と京都の老舗製麺所がタッグを組んだ、京都オリジナルの「麺屋棣鄂焼きそばビーフサンド」は、『'OHANABATAKE祇園店』限定商品として5月末から販売を開始。早くも常連客やインバウンド客を中心に人気を集めており、数量限定のため週末などは売り切れる日もあるという。

 「販売開始してまだ間もないのですが、おかげさまで多くのお客様にリピートして頂いております。いずれは『祇園と言えば'OHANABATAKEの焼きそばホットサンド』と言われるくらいの、祇園名物にしていきたいですね」(長谷川さん)

'OHANABATAKE祇園店
京都府京都市東山区祇園町北側323 祇園会館

※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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