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家系ラーメンに「うずらの卵」が乗る店と乗らない店があるのはなぜ?

山路力也フードジャーナリスト
うずらの卵がすべての家系ラーメンに乗っているわけではない。

家系ラーメンに欠かせない3種の具材とは

家系総本山の『吉村家』と家系御三家の『六角家』のラーメン。
家系総本山の『吉村家』と家系御三家の『六角家』のラーメン。

 全国的に人気を集めている「家系(いえけい)ラーメン」。濃厚な豚骨醤油スープに香り豊かな鶏油を浮かべ、長さが短めの太麺を合わせた個性的なラーメンは、今からちょうど半世紀前、1974(昭和49)年に創業した『吉村家』(神奈川県横浜市西区岡野1-6-31)で生まれた。

 元々は『吉村家』で修業を積んだ人が独立し、それぞれ屋号に「家」をつけたことから「家系」と呼ばれるようになったが、今では『吉村家』と関連のない「家系」も多数存在しており、「家系ラーメン」とは「札幌味噌ラーメン」や「博多ラーメン」と同じラーメンの一ジャンルになっている。

 そんな「家系ラーメン」は、「チャーシュー」「ほうれん草」「大判の海苔3枚」という3種の具材が定番。ほとんどの家系ラーメン店では追加トッピングをしなくても基本のラーメンにはこの具材が乗る。しかしここ数年、もう一つの「ある具材」を乗せる店が増えているのをご存じだろうか。

うずらの卵が乗った家系が増えている

全国に多店舗展開している『町田商店』のラーメンにはうずらの卵が乗る。
全国に多店舗展開している『町田商店』のラーメンにはうずらの卵が乗る。

 その具材とは「うずらの卵」。近年、家系ラーメン店でうずらの卵を乗せたラーメンを提供する店が増えている。2008年に創業、東京町田に本店を構える人気家系ラーメン店『町田商店』(本店:東京都町田市森野1-34-13)では、創業当初からラーメンにうずらの卵を乗せている。

 『町田商店』は日本国内に約140店舗、さらに海外にも多数店舗を展開する、家系ラーメン屈指の店舗数を誇るチェーン店。またフランチャイズやプロデュース店も300店舗以上あり、「横浜家系ラーメン」というラーメンの認知度を全国区にした存在だが、これらの店は原則としてすべてのラーメンにうずらの卵が乗っているのだ。

うずらの卵を最初に家系ラーメンに乗せたのは

1992年創業の『壱六家』が家系ラーメンにうずらの卵を乗せた発祥。
1992年創業の『壱六家』が家系ラーメンにうずらの卵を乗せた発祥。

 家系ラーメンで最初にうずらの卵を乗せたと言われているのが、1992年に横浜磯子の国道16号沿いで創業した『壱六家』(本店:神奈川県横浜市磯子区森2-2-7)だ。創業者の渡邊博之さんは『吉村家』の味に衝撃を受けて、それまでの仕事を辞めて独学でオリジナルの家系ラーメンを作り上げた。

 その時に乗せたのが、渡邊さんが大好きだった「うずらの卵」。他の家系ラーメンには乗っていなかったため、壱六家のラーメンと一発で分かるアイコンとなった。壱六家は多くの弟子を弟子を輩出しているが、そのほとんどの店のラーメンにはうずらの卵が乗っている。前述した『町田商店』創業者も『壱六家』の出身なので、うずらの卵が乗っているのだ。

 ラーメンに歴史あり。ラーメンの乗った具材の一つから、辿ると見えてくるストーリーがある。ラーメンを食べ歩く時には、そのラーメンが生まれた背景などを考えながら食べるのも楽しいものだ。家系ラーメン店に入った時にうずらの卵が乗っていたら、『壱六家』の存在を思い出してみて欲しい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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