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初婚でバツあり男と結婚する女性の割合「初婚同士婚は激減だが再婚数は減っていない」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

再婚数は減っていない

婚姻数の減少は、「夫年上婚の減少」と「お見合い+職場結婚の減少」と完全に一致するという話は前回の記事(→「8割減の夫年上婚」年齢別初婚の夫は何歳の年の差の妻と結婚しているか?)で書いた通りだが、もうひとつ「初婚同士婚の減少」とも完全に一致する。

つまり、婚姻数の減少は初婚が減っていることによるもので、再婚数は減っていない。

1970年と2022年とを比較すれば、初婚数はマイナス53.7万組(59%減)だが、再婚数はむしろプラス1.3万組(11%増)である。ちなみに、2006年には、年間再婚数が18.9万組と戦後の最高記録となっている。

本来、再婚は初婚と離婚がなければ発生しないが、再婚者が初婚者と結婚する場合もあり、それらは「いずれかが再婚」の数に含まれる。

これはご存じない方も多いのだが、元々日本は離婚と再婚の多い国で、あまりにそれが行き過ぎて、江戸時代には離婚禁止令すら出されたことがあるくらいである。江戸時代の離婚率は多分当時の世界最高だったのではないかと推測されている。

参照→「3組に1組どころじゃない」離婚大国・日本が、世界一離婚しない国に変わった理由

再婚男の割を食う未婚男

離婚や再婚が多いことそれ自体は悪いことではないのだが、現代の問題はそもそもの初婚が作られないということにある。厳密には、初婚同士の婚姻が減っていることだ。そして、初婚同士婚の減少が、未婚男性の増加にも影響を及ぼしている。

なぜなら、再婚の組み合わせでいえば、「初婚の妻と再婚する夫」の数は「初婚の夫と再婚する妻」と比べて、全年齢対象で1.4倍ある。これが、妻年齢20-34歳に限れば、1.7倍にも増える。つまり、若い初婚の妻と再婚するバツあり男が多いということになる。

再婚も決して一度とは限らない。こうした人たちを私は「時間差一夫多妻男」と呼んでいる。

写真:アフロ

そして、再婚男と初婚女が結びつくことで、実は未婚男が割を食うことにもなる。

ただでさえ、出生性比は男児が多く、自然と各年齢5%ずつ男余りになる。結婚のすべてが未婚男女のマッチングだとしても、5%の男は絶対に余る計算になる。その上で、再婚男が未婚女とマッチングしてしまうと、ますます未婚男の余り率は増えていくことになるからだ。

参照→未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ

バツあり男と初婚する割合

では、実際に、20-39歳の女性の婚姻において、年齢ごとにどれくらいが再婚男と結婚しているかを明らかにしていこう。

1995年、2006年、2022年とで、初婚妻の年齢別再婚夫と結婚した割合を示したものが以下である。

いずれも30歳以上のバツあり男との初婚妻は10%以上で、年齢があがるごとにその割合も高くなっている。30代後半では20%以上にもなる。が、違いがあるのは、20代前半における割合の差だ。

再婚夫との初婚妻の数がもっとも多かった2006年は20-22歳で約10%が再婚夫と結婚しているが、1995年では5%程度、2022年ではそれより多い7%程度となる。2000年代前半から中盤にかけて、20代前半の若い女性が再婚男と初婚するケースが多かったのは、若い未婚男性が就職氷河期の影響を受けていたためだろうか。

いずれにせよ、直近でも20代のもっとも初婚の多い年齢帯で、具体的には女性の平均初婚年齢でもある29歳で7.8%が再婚男と結婚していることになり、ただでさえ5%の絶対人口が多い不利の上に、初婚女性の7-8%を再婚男にもっていかれているということになる。

20代初婚同士婚の底上げ

だからといって、バツあり男が初婚妻と再婚することは否定できない。多少の割合の変化はあっても、1995年から2022年に至る期間において、年齢別で未婚女性が再婚男を選ぶ割合は大体一緒でもある(経済強者である再婚男が若い女性を選びたがっているのかもしれないが)。

むしろ「時間差一夫多妻男」はいつでも10%程度存在するものであり、それはそれとして、激減している20代の初婚の底上げが必要だろう。しかし、それは、「何かやった感を出すためだけの演出として」の婚活支援というものではない。

特に、マッチングアプリ事業者に予算をつぎ込んでも、それがあろうとなかろうと恋愛や結婚相手探しに苦労しない恋愛強者や経済強者の選択の幅が増えるだけで、抜本的な婚姻の増加にはまったく寄与しない。

参照→マッチングサービスなのに「会えた人数ゼロが3割」問題の背景にある残酷な現実

繰り返し書いていることだが、婚姻減とは、20代の若者が20代のうちに結婚できない問題である。

晩婚化などは起きていない。20代のうちに結婚できない場合、晩婚化するのではなく非婚化してしまう。それらは決して彼らの「選択的非婚」ではなく、「不本意未婚」の結果にすぎない。

出生性比による未婚男女の絶対人口のアンバランスはいかんともしがたい。時間差一夫多妻男の再婚も止めようがない。そして、本心から選択的非婚の人はそのままでいい。無理に結婚を強要するものではない。

とはいえ、少なくとも不本意未婚のまま年を重ねてしまい、結婚できない現実との認知的不協和のために、「自分は最初から結婚なんてしたくなかったのだ」と中年になって思うような若者が増えないことを願う。

写真:アフロ

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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