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もしもラグビーでドラフト会議をしたら2022【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
世代有数の司令塔と謳われる高本。実際にもリーグワンの強豪でプレーできる見込み(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 10月20日にプロ野球ドラフト会議があったのを受け、本欄にて毎年恒例の仮想「ラグビーのドラフト」を実施する。

 2022年12月に開幕する「ジャパンラグビーリーグワン」の「ディビジョン1」の計12チームの「ドラフト1位」をシミュレーションした。

 各クラブの状況、特徴、ポジションごとの年齢層をもとに、最適と見られる選手を独自に選んだ。過去3シーズンの結果は下記を参照されたい。

 また、現実的にラグビー界でドラフトがおこなわれない理由は初開催したラグビーがドラフト会議をやらないわけ。もしやったらどうなる?【ラグビー雑記帳】にある通り。「仮の話なので無意味では」とのご指摘へはもしもラグビーでドラフト会議をしたら2018。【ラグビー雑記帳】で反応した。

 クラブの事業化を求めるリーグワンにあっても、旧トップリーグ時代に続いて社員選手とプロ選手が混在。学生選手にとって、雇用形態が豊富に用意される点はメリットとなっている。

 他方、クラブ側にとってニーズが高そうなのは「カテゴリーAの留学生」だ。

 リーグワンでは、日本代表資格のある選手は国籍の有無を問わず総じて「カテゴリーA」に認定され、他の海外出身者とは別枠でプレーできる。日本の高校、大学を卒業し、5年以上の連続居住をクリアしている選手はすぐに「カテゴリーA」でプレーできるとあり、当該の実力者は競合必至となりうる。

 現実世界では昨年度、日体大付属柏高校、日本体育大学に通ったハラトア・ヴァイレアが複数クラブによる獲得合戦の末にクボタスピアーズ船橋・東京ベイに加入。すでに公式戦デビューを果たしている。

 本稿では、加入と同時に「カテゴリーA」に位置付けられる可能性が高い海外出身者には(※)を付与する。

 ちなみに現実世界では、新人選手の出場ルールが変更した。

 これまでは4月1日以降でなければ出場できなかった新年度入団選手のデビュー時期を、前倒しできるようになったのだ。日本ラグビーフットボール協会(日本協会)、リーグワンの規定に新たな文言を付け加えることで可能となった。

 日本協会の岩渕健輔専務理事が、10月19日、メディアブリーフィングで説明した。

「趣旨としては、大学4年生で次の就職先、所属先が決まっている選手が、(所定の手続きを経れば)大学選手権が終わったタイミング——例えば2月、もしくは3月——のリーグワンに出場できる規定に変更となった」

 以前までは、新人選手はシーズン終盤にあたるタイミングまで登録できなかった。それまでに形成されたチームに、新規の戦力が割って入るのは容易ではない。そのため上位チームの有望株が早期デビューを果たせるケースは、下位チームとの試合、もしくはプレーオフ進出決定後の残り試合などに限られた。

 しかし新ルールのもとでは、シーズン中盤にあたる時期から新人選手がプレーできる。その時のチームの順位や選手の資質によっては、試験的な意味合いも含めたルーキーの抜擢が数多くみられるかもしれない。

 いまのレギュレーションのもと本稿の仮想ドラフトが実現すれば、即戦力の獲得がより大きな意味を持ちそうだ。例えば、優れたポジショナルスキルとチームのスタンダードを高める気質の持ち主が下位チームに入れば、降格争いを抜け出す一因となりうる。

<カンファレンスA>

埼玉パナソニックワイルドナイツ=矢崎由高 桐蔭学園高校 ウイング、フルバック

 2季連続の日本一。堅守速攻を哲学とし、年齢、キャリア、技術ともに成熟したメンバーが一枚岩を作る。無名の海外出身者を日本代表に成長させる育成手腕にも定評があり、東福岡高校卒の福井翔大が21歳で初めて日本代表入りをしたケースもある。

 今回は、中長期的に活躍できる高卒のバックスリーを獲得。現在、認められていない大学との二重登録が見直されれば実際の加入実現も近づくか。

東芝ブレイブルーパス東京=アサエリ・ラウシー(※) 京都産業大学 ロック、フランカー、ナンバーエイト

 今季から掲げるキーワードのひとつに「接点無双」がある。1対1や接点にこだわるチーム哲学を改めて言語化したいま、躊躇なく強いコンタクトのできるフォワードを充実させたい。

 他方、カテゴリーAで出られる海外出身者が昨季限りで2名、移籍しているとあり、同カテゴリーでのプレーが可能な選手をいち早く獲得したいところか。日本航空石川高校出身のラウシーは突進のみならずジャッカル、キックチェイスでも献身的。

静岡ブルーレヴズ=ワイサケ・ララトゥブア 東海大学 ロック

 安定したセットプレー、ダブルタックル、複層的なラインからの柔軟なプレー選択と、看板のプレーを明確に言語化しているのが特徴。一時は無名の逸材に役目を与えて大きく飛躍させていたが、最近はリーダーシップの取れる綺羅星の獲得合戦にも注力する。

 今回は空中戦のラインアウト、モールで軸となる逸材を指名し、将来的なカテゴリーA認可と日本代表入りが期待される。

トヨタヴェルブリッツ=ワイサケ・ララトゥブア 東海大学 ロック

 ヴェルブリッツはフィジカリティで圧倒するのを本来の部是としながら、近年はオールラウンドに対応するニュージーランド風のテイストを貴ぶ。

 今回指名のララトゥブアは器用なハンドリングスキルを有しながら、モールの支柱役といった下働きでも際立つ。少なくとも向こう1シーズンはカテゴリーBの見込みも、パトリック・トゥイプロトゥが抜けたロックの位置で即戦力となりうる。

三菱重工相模原ダイナボアーズ=高本幹也 帝京大学 スタンドオフ

 移籍選手や海外出身者が隊列を埋めてきた同部は、今季、日本にゆかりのあるグレン・ディレーニー新ヘッドコーチのもとチームを改革。2025年シーズンの日本一を目指し、猛練習と堅守の構築に注力する。

 今季ディビジョン1初昇格とあり、早期からメンバー入りしてターゲットの年に中心選手となるタレントを獲得したい。大学シーン有数の司令塔である高本が加われば、オーストラリア代表59キャップで今季新加入のマット・トゥームアをインサイドセンターで起用可。強力なフロントスリーを作れる。

リコーブラックラムズ東京=石田吉平 明治大学 ウイング

 西辻勤ゼネラルマネージャーは、2024、25年頃の優勝を視野に段階的に強化。元サンゴリアスのピーター・ヒューワットヘッドコーチを招き、運動量と勤勉さを貴ぶ。

 近年は2020年度にフッカーの武井日向主将や現日本代表でフルバックのメイン平と、若手の有望株が相次ぎ台頭する。将来的な日本代表資格の取得も視野に入れるアイザック・ルーカスを引き続きスタンドオフに据え、23年のワールドカップフランス大会後の大物獲得でチーム力を高めたいようだ。

 今度の仮想ドラフトでは、7人制日本代表としての活躍も待たれるフィニッシャーを獲得。小柄だが、強く速い。2024年のパリ五輪終了後に本格的にチームに加わり、新生ブラックラムズの11番を担うか。

<カンファレンスB>

NECグリーンロケッツ東葛=高本幹也 帝京大学 スタンドオフ

 リーグワン発足を前に新戦力を大量獲得。ディビジョン1定着を目指す。元日本代表スクラムハーフの田中史朗、さらには田中とハイランダーズ時代の同僚だったフッカーのアッシュ・ディクソンらがチーム文化を築かんとするなか、今季途中から主軸となりうる司令塔候補を指名。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ=石橋チューカ 報徳学園高校 フランカー、ナンバーエイト

 旧トップリーグ時代から2季連続で所属選手が新人賞を獲得と、リクルートと現場のニーズの両輪がかみ合うスピアーズ。各ポジションに大学シーンきっての綺羅星、発掘された逸材を獲得し続けているとあり、今度は2~3年かけて主力級に成長しそうな好素材を獲得。

コベルコ神戸スティーラーズ=レキマ・ナサミラ 東海大学 ロック、フランカー、ナンバーエイト

 2018年度の優勝に大きく貢献したウェイン・スミスは、総監督からメンターに肩書きを変えた。大きな影響力を与える名士とチームとの距離感が注目される。本稿では、シーズン途中からメンバー入りが期待できる突破役兼ボールハンターの獲得へ。ニュージーランド代表のアーディ・サベアを獲得した2023年にはカテゴリーA入りの可能性も高く、驚異の3列陣を形成しうる。

東京サントリーサンゴリアス=高本幹也 帝京大学 スタンドオフ

「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を部是に、2016年のトップリーグで優勝してから毎年、2強以上をキープ(不成立だった2020年を除く)。今季はOBで以前明治大学を率いた田中澄憲新監督のもと、ハードワークの文化を再構築するか。

 現実世界でのリクルートでは、毎年、目玉選手の獲得で世間を騒がせている。ドラフト制度導入があってもそのスタンスは変わらなそうで、今季は日本人選手の層に限りのあるスタンドオフへ世代随一の逸材を招くか。

花園近鉄ライナーズ=アサエリ・ラウシー(※) 京都産業大学 ロック、フランカー、ナンバーエイト

ハイテンポな攻撃ラグビーを志向。ウィル・ゲニア、クウェイド・クーパーといったオーストラリア代表経験者のレジェンドを軸に据えながら、前後にフィジカリティやスピードを持ち味とする若手を並べる。現有戦力の構成上、4~8番のいずれにも入れて攻撃力を底上げできるカテゴリーAの海外出身者が欲しいところか。

横浜キヤノンイーグルス=アサエリ・ラウシー(※) 京都産業大学 ロック、フランカー、ナンバーエイト

 沢木敬介監督のもと組織的なアタッキングラグビーを志向。狙いが整理された厳しいセッションを通し、その再現性を高める。選手層の拡大は急務としていて、最後まで4強入りに迫っていた昨季終了を経てスタンドオフ、プロップ、フッカーを中心に新戦力を補強。かたやロックでは貴重なカテゴリーAの逸材、アマナキ サウマキを移籍で失っている。穴埋めとさらなる上積みにはラウシーが最適。

その他おもな「上位候補」

江里口真弘(帝京大学・ロック)

ミティエリ・ツイナカウヴァドラ(帝京大学・ウイング)

二村莞司(帝京大学・センター/フルバック)

相良昌彦(早稲田大学・フランカー/ナンバーエイト)

槇瑛人(早稲田大学・ウイング)

中村公星(明治大学・プロップ)

大賀宗士(明治大学・プロップ)

アイザイア・マプスア(慶應義塾大学・ロック/フランカー/ナンバーエイト)

中楠一期(慶應義塾大学・スタンドオフ)

木原優作(筑波大学・プロップ)

植村晴彦(筑波大学・ウイング/フルバック)

伊藤峻祐(東海大学・センター)

ナサニエル・トゥポウ(日本大学・ウイング)

普久原琉(日本大学・フルバック)

サイモニ・ヴニランギ(大東文化大学・ロック/フランカー)

土居大吾(流通経済大学・センター)

齋藤良明慈緑(東洋大学・ロック/フランカー)

福西隼杜(京都産業大学・プロップ/フランカー)

山村勝悟(天理大学・フランカー/ナンバーエイト)

参考資料

もしもラグビーでドラフト会議をしたら2021【ラグビー雑記帳】

もしもラグビーでドラフト会議をしたら2020【ラグビー雑記帳】

ワールドカップ後の日本代表も? もしもラグビーでドラフト会議をしたら2019【ラグビー雑記帳】

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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