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もしもラグビーでドラフト会議をしたら2018。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
大学選手権10連覇を狙う帝京大学の秋山大地キャプテン。(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 プロ野球界で指名する新人を選択するドラフト会議が定着して以来、他のスポーツ界でも有望選手を「今年のドライチは彼でしょう」と評する声が消えない。

 その流れを鑑み、当方は昨年「ラグビーがドラフト会議をやらないわけ。もしやったらどうなる?【ラグビー雑記帳】」という記事を執筆。普段取材する大学ラグビー界の選手を被指名選手に、日本最高峰のトップリーグの加盟16クラブを指名チームにそれぞれ見立て、各クラブの「ドライチ」を仮想した。

 現実的にラグビー界でドラフトがおこなわれない理由は前掲記事にある通り。最近では各クラブが高校生選手を獲得する例も増えた。

 さらに2020年度はトップリーグとスーパーラグビー(日本代表と連携するサンウルブズが参加)が同時期におこなわれることなどから、将来的には「国内チーム同士で有望選手の獲得合戦を繰り広げる」という構造が覆される可能性もある。

 これら潮流の変化も手伝ってか、昨年の記事も一部で「仮の話なので無意味では」とのご指摘をいただいている。もっとも本記事は、日本代表関連の記事などを抑えて当該月における最多の閲覧者数を記録。この国における「ドラフト」という言葉への感度、学生スポーツへの人気の高さがうかがえた。よって本企画は、ラグビーの観戦文化を一般化させたいとする本ページの趣旨にそぐうものと判断。今回も同種の試みをおこなう。

 あまりラグビーになじんでこなかった読者が11月以降に本格化する大学ラグビー界の主要選手、12月以降に順位決定戦が始まるトップリーグの各クラブの状況に触れていただけるようになれば幸いである。

サントリー=辻雄康 ロック 慶応義塾大学 身長190センチ 体重107キロ

2連覇中のサントリーの文化は、運動量とスキルを極限まで高めて絶え間なく攻め続けること。新人は原則社員選手のみで、グラウンド内外における規律遵守への意識が求められる。今季の大学4年生で最もタフでスキルフルかつ実直な日本人選手の指名がなされそう。

パナソニック=竹山晃暉 ウイング 帝京大学 身長175センチ 体重84キロ

パナソニックは社員選手とプロ選手を混在させ、堅守速攻型のスタイルを徹底する強豪。人的な入れ替わりの多い傾向もあるなか、視野の広いアウトサイドバックスが将来のエース候補に適任か。

ヤマハ=古畑翔 プロップ 大東文化大学 身長185センチ 体重120キロ

ヤマハはスクラムの圧倒を文化とする。現在の大学ラグビー界で最もスクラムの強いフロントローとされる古畑は、同じ左プロップで日本代表の山本幸輝らとの切磋琢磨でより強みを磨くか。

トヨタ自動車=秋山大地 ロック 帝京大学 身長192センチ 体重110キロ

トヨタの伝統はフィジカルラグビー。かつて南アフリカ代表を率いたジェイク・ホワイト監督は、多くの海外選手を擁しながら「トップリーグで勝つには日本人選手が大切」。かたや今季、ぶつかり合いの先頭に立つロックには外国人選手を並べている。ボスが若手日本人ロックの獲得を求めそうななか、大学選手権10連覇を狙う帝京大学のタフガイに白羽の矢が立つか。

神戸製鋼=ブロディ・マクカラン ナンバーエイト 帝京大学 身長192センチ 体重105キロ

ダン・カーターら元オールブラックスを並べ、選手が左右にまんべんなく散らばるニュージーランド発信のスタイルを提唱。フォワード第3列の主力日本人選手がキャリアを重ねて来たなか、タックルされながら球を繋げる勤勉な留学生の加入は心強いのでは。

東芝=アタアタ・モエアキオラ アウトサイドセンター 東海大学 身長185センチ、体重113キロ

突破力、自立したまま球をつなぐスキル、勤勉な東海大学でキャプテンを任されるタフな人間性と、質実剛健を旨とする東芝にはぴったり。所属選手で日本代表キャプテンのリーチ マイケルとは、東海大学の先輩、後輩の間柄にあたる。ウイングもできる。

リコー=秋山大地 ロック 帝京大学 身長192センチ 体重110キロ

リコーは一時低迷も堅守をベースに上位定着に迫る。帝京大学卒の濱野大輔キャプテン、明治大学卒の松橋周平副キャプテンらが音頭を取るなか、リーダーシップと力強いタックルを兼備する帝京大学現キャプテンがいれば、日本人の主軸候補がもう1人増える。

NEC=アタアタ・モエアキオラ アウトサイドセンター 東海大学 身長185センチ、体重113キロ

ピーター・ラッセルヘッドコーチが選手の主体性を引き出し、チームの戦術共有を進める。頑健なアウトサイドバックスの加入で得点力と空中戦での強さを高めたらより恐ろしいチームになりそう。モエアキオラは中学から日本にいるため外国人枠外で起用可能。ウイングでもプレー可。

NTTコム=丹治辰碩 フルバック 慶応義塾大学 身長183センチ 体重91キロ

丹治は相手をセンチ単位でかわすステップ、長いリーチから繰り出すオフロードパスを長所とする。大きくボールを動かすNTTコムにあってその資質を活かせそう。地域密着を目指すクラブのスター候補ともなりうる。

キヤノン=竹山晃暉 ウイング 帝京大学 身長175センチ 体重84キロ

今季アリスター・クッツェーヘッドコーチが就任し、勤勉さと規律をじっくり植え付けたいとしている。ロック、フランカーには、大きくて走れる海外出身者を並べている。一方でバックスにはスタンドオフの田村優(日本代表)、フルバックのイズラエル・ダグ(ニュージーランド代表経験者)とスペース感覚のある選手を並べるとあって、球のもらい方のうまいフィニッシャーがいれば脅威か。

クボタ=ファウルア・マキシ ナンバーエイト 天理大学 身長187センチ 体重113キロ

勤勉さを尊しとするクラブは今季、南アフリカのフラン・ルディケヘッドコーチ就任3年目にして初の8強入り。フォワード第3列の有望株が加われば、南アフリカ出身で同ポジションの顔、ピーター・ラピース・ラブスカフニから技術や心構えの伝承がなされそう。マキシはグラウンド内では肉弾戦にしつこく絡み、グラウンド外では遠征用の荷物に入れる衣類をきちんとたたむなど几帳面さで知られる。

豊田自動織機=秋山大地 ロック 帝京大学 身長192センチ 体重110キロ

防御力を高めたいクラブにあって、最後の最後までタックルとその後の素早い起立を徹底できるリーダー候補は鬼に金棒となりそう。

サニックス=福田健太 スクラムハーフ 明治大学 身長173センチ 体重80キロ

サニックスで求められるのはワークレートとスキルとアジリティ。鋭いサイドアタックと自信満々の気質が売りの明治大学キャプテンは即戦力となりそう。

コカ・コーラ=辻雄康 ロック 慶応義塾大学 身長190センチ 体重107キロ

コカ・コーラは弾ける連続攻撃を文化とする一方、防御時のハードさと運動量を課題とする。辻はその両方のエリアで高い貢献度が期待されるとあり、加われば即戦力となること必至。

ホンダ=福田健太 スクラムハーフ 明治大学 身長173センチ 体重80キロ

今季下部から昇格し、強力なアウトサイドバックスを擁して強力なカウンターアタックを披露。ここで接点際での走力が光る福田が入れば、攻撃の威力はより増しそう。

日野=秋山大地 ロック 帝京大学 身長192センチ 体重110キロ

今季初昇格。防御とセットプレーへのこだわりをクラブの看板にしたいとしている。こちらの大型新人がロックに入れば、佐々木隆道、村田毅キャプテンといった代表経験のあるタフなフォワードとともに防御を引き締めそう。

※ 当該選手の実際の進路先(厳密には未定のケースがほとんど)とは、一切関係ありません。

※ 有力選手である古田京(慶応義塾大学のスタンドオフ)は今季限りでプレーをしない旨を明かしているため選外としました。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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