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ヨーロッパ女子クラブの発展と近年の世界大会に見る、女子サッカーのトレンド(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
2019年、日本は再びワールドカップで世界一を目指す(写真:Action Images/アフロ)

12月末日、FA女子スーパーリーグ(イングランドにおける女子サッカーの最上位リーグ)のチェルシー・レディースFC(以下:チェルシーL)で監督を務めるエマ・ヘイズ監督を講師に招き、サッカー指導者や選手、女子チームの関係者らを対象に、都内で「女子サッカーのピリオダイゼーション」セミナーが行われた(主催はワールドフットボールアカデミー・ジャパン)。

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4つ目の講義では、まず、ヨーロッパで成功している女子クラブがどのように発展してきたかということが紹介された。続いては、2015年カナダ女子ワールドカップと2016年リオデジャネイロ・オリンピックから見る世界的なトレンドの変化について、紹介された。

今回の記事で、講義の紹介は最後となる。

【2015年のカナダ女子ワールドカップのトレンド】

【どのような大会だったか】

・人工芝が使用された最初のワールドカップだったが、ケガは過去10年間で一番少ないという結果になった。

・開催地によって時差が5つに分かれていたため、試合ごとに時差が違うという状況でプレーしなければならなかった。

・24チームで戦う最初の大会だった(それまでは16チーム)。

・参加した全チームが4バックを採用した。

・良いパフォーマンスをしたチームは、守備の組織が良いチームだった。

・日本、アメリカ、ドイツ、フランスの上位4チームだけが、短いパスをつなげて長いボールも蹴れる、2つの戦術を使い分けていた。

・72%以上の試合が、引き分けか1点差だった。

・70%以上のゴールが、中盤でボールを奪った後の素早い切り替えから生まれた。

・80%以上のゴールが、中央から生まれた。多くのチームが(攻守において)サイドに人を割いていたが、ゴールラインまで行って、折り返してシュートという形は少なかった。

・平均年齢が高いチームが勝ち上がった。

・平均身長が高いチームが勝ち上がった。唯一の例外が日本だった。勝っているチームの平均身長は高くなってきており、それはU-20ワールドカップにも言える。

・フィットネスのデータの分析結果によると、これまでのワールドカップに比べて走行距離が伸びた。

・後半開始からの15分間で多くのゴールが生まれた。15分間のハーフタイムの後にテンポが落ちて、アクションの頻度が減ったと考えられる。

【2016年のリオデジャネイロ・オリンピックのトレンド】

【どのような大会だったか】

・出場した12チームのうち、10チームが2015年のワールドカップでプレーしていた。

・(前年の)カナダワールドカップに比べて、負けないための(守備的な)プレーが目立った。決勝に進んだスウェーデンは、2試合は引き分けで、PKで決勝まで勝ち進んだ。

・66ゴール生まれたうち、サイドからの攻撃から生まれたゴールはわずか8ゴール(サイドからの攻撃からはほとんどゴールが生まれなかった)。

・2012年のロンドンオリンピック(71ゴール)からはゴールの数が減った。

・ほとんどのチームが4-3-3か4-5-1のシステムでプレーしていた。

・2015年のワールドカップに比べて、サイドバックの選手の役割が大きくなった。

・成功した多くのパスが、ペナルティエリア内に向かって出されていた。

・ディフェンスの戦術は、2015年のワールドカップより洗練されていた。

【次のワールドカップではどのようなトレンドが生まれるか?】

「女子サッカーの中では3バックはまだ発展していませんが、80パーセントのゴールが中央から生まれていることを考えても、3−5−2や、3−4−3といったシステムが今後見られる可能性がありますし、中央からの攻撃が増えると予想しています。」(ヘイズ監督)

【取材後記】

今回の講義を通じて、ドイツやフランスをはじめ、ヨーロッパでは豊富な予算を投じて強化を進めているクラブが増加傾向にある、ということは分かった。

ヨーロッパの女子のクラブナンバー1を決める女子チャンピオンズリーグは、2008年以来、ドイツとフランスの強豪クラブが優勝を独占している。その理由は、強豪クラブが豊富な予算を有効に使い、各国の代表クラスのタレントを多く擁していることもあるが、同時に、ドイツやフランスの国内リーグのレベルが安定していることの証とも言える。

国内の各クラブの強化への取り組みが国内リーグの活性化につながり、その勢いは、代表チームの強さにつながっている。

ドイツ女子代表は、昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで初優勝を成し遂げた。フランスは昨年末のU-20女子ワールドカップで2位に輝き、2019年の女子ワールドカップの開催国として、国としても総力を挙げている。

なでしこジャパン(日本女子代表)は、ドイツやフランスとはまったく異なるサッカースタイルを持っている。また、国内リーグの運営方法や各クラブの予算規模も違う。だが、成功しているチームから学べることは多そうだ。

今回の記事で取り上げたのは講義の一部だが、こういった情報を、国内にとどめず積極的に発信しているヘイズ監督と主催者の熱意に、あらためて敬意を表したい。

プロフィール: エマ・ヘイズ監督

2001年以降、アメリカとイングランドで指導実績を重ね、2006年からはアーセナル・レディースのアシスタントコーチとして、リーグカップとプレミアリーグ、UEFA Women's Cup(ヨーロッパ・チャンピオン)、FAカップを獲得。2012年、英国女子サッカー界、唯一の女性プロ監督としてチェルシーLに迎えられると、2015年にはクラブ史上初のFA WSL(イングランド女子スーパーリーグ)とFAカップの2冠を成し遂げた。

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スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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