初めて甲子園球場に足を踏み入れた「阪神タイガースジュニア2024」のメンバーたち。その緊張と興奮
■憧れの甲子園球場での練習
その広さに、驚愕した。目を見開き、空いた口も閉じず、ただただその“憧れの聖地”の佇まいに圧倒されていた。
恒例の阪神甲子園球場での練習に臨んだ阪神タイガースジュニア2024のメンバーたちは、ファン感謝デーを終えたばかりの熱気残るグラウンドに足を踏み入れた。その身にまとっているのは、ホンモノのタテジマだ。
キャッチボールに始まり、シートノック、バッティングと思う存分に暴れまわり、ひとしきり“プロの気分”を味わった。
グラウンド練習を終えるとバックスクリーンを背にして記念撮影を行い、整備をしてくれた阪神園芸さんに感謝の気持ちを伝えて、新室内練習場に移動した。
この日は朝から阪神鳴尾浜球場で練習し、新室内で軽く体を動かした後の甲子園練習だったが、さらにここからまた、おかわりの練習だ。新室内ではバッティング、守備の基礎練習にみっちり取り組んだ。
すべての練習が終了したときには、午後6時を回っていた。最後に倉橋清瀬キャプテンが「この高ぶった気持ちを継続して、本戦も緊張というより楽しみという言葉で臨めるように、しっかりこの気持ちをたいせつにして本戦までやっていきましょう!」と発し、北嶋隼士副キャプテンが一丁締めの音頭をとって、長い一日が終わった。
■玉置隆監督の思い
「みんな感動している顔していましたね。『あぁ、ここが甲子園か』と」。ジュニアたちの様子に目を細めていたのは玉置隆監督だ。「浮き足立っている子もいましたね。いつものバッティングができていない子もいれば、いつもどおりやる子、またはいつも以上の力を出す子、いろいろですね」と見守っていた。
「こういうのって、これからみんなが中学校、高校と一発勝負の大一番の試合をしていく中で、力を発揮できるかという大事なところになってくる。本戦の経験もそうだけど、そこでどうやって普段どおりの力を出すかっていう意味では、今回の甲子園練習もいい経験になったんじゃないかなと思いますね」。
この経験を生かしてほしいと願っていた。
■ちびっこ虎戦士の感想は
ナインを代表して、キャプテンと副キャプテンたちに甲子園球場の感想を聞いた。倉橋キャプテンは「最初はめちゃくちゃ緊張しとったけど、プレーするごとに緊張が抜けて、むしろ楽しくなってきた」と、聖地の土を踏んだ喜びに笑顔を弾けさせていた。
北嶋副キャプテンは「僕はあんまり緊張はしなかったです。すごいっすね。広かったっす」と言った後、「甲子園は優しかったっす」と独特の表現をする。
「普通の球場と違う。僕、思ったんが、土と芝の境目!高さが平らやった!いつもの球場はデコボコしてるけど、甲子園は全部平ら!ほんまにあれはすごい!!」
感嘆が止まらない様子だった。
同じく副キャプテンの井上凛太朗選手も「広かったです」と目を見張り、自身の定位置であるキャッチャーのポジションについては「硬かった」と話した。すると、周りからも口々に「めっちゃ硬かった。掘れへん」という声が飛び、全員がプロの球場が使用する粘土質の土・ブラックスティックに驚いていた。
そして最後に「アイラブ園芸さぁん」と、阪神園芸さんへのリスペクトを表した。
■速球対策も万全
新室内での練習では、腕がちぎれんばかりに速球を投げ込む玉置監督の姿が目を惹いた。
「(これまで対戦した)相手チームでもいいバッターって、タイミングをしっかり合わせて前でとらえている。ウチはポテンシャルは負けていないし、相手より上の子も多いのに、しっかりとらえきれず差し込まれている。そういう速い球の練習をしておこうと。目も鍛えていかないといけないから」。
そういう意図で腕を振り続けた。
玉置監督の渾身のボールに、ジュニアたちのバットはなかなか当たらない。「僕も思いっきりいきました(笑)。久々にあんだけ腕振りましたよ(笑)。まだいけるもんですね」と、ニンマリ。
ところが、ブンブンと空振りをしてかすりもしなかった北嶋選手が、最後の最後にしっかりととらえた。A打球のクリーンヒットだ。
「隼士に打たれた…」。ガックリとうなだれたように見せかけて、「嬉しかったですけど」と笑った。愛弟子がしっかり応えてくれることが、監督にとっての喜びなのだ。
「こういう練習をしとけば、本戦でも『あの練習をしたから』って自信が持てる。まっすぐ1本に張ったときに、しっかりと一発で仕留められるように。速い球も緩い球も」。
小学生は変化球がなく、ストレートの緩急で勝負する。どちらも打てるようにと、しっかり対策をしているところだ。
■甲子園練習の思い出を忘れないで
1カ月間のセレクションを経て選出され、9月14日から始まった練習も、残すところあと1カ月ほどだ。「練習もあと8回ですかね」と、玉置監督もちょっぴり淋し気だ。
「技術もだし、チームワークもだし、日に日にものすごくよくなってきているという印象を受けるとともに、この持ち前の明るさが悪い方向にいかないように、しっかりと目を光らせとかないといけないと思っています」。
勝っているときは何も心配はない。そのまま突き進めばいい。ただ、首脳陣が危惧するのは初戦で相手に先手を取られたときのことだ。「そこでしゅんとならないようにだけは…。常に気を張っとけよっていうのは、これからも教えていかないといけない」と引き締める。
「ここからの実戦で、まだ課題はいっぱい出てくると思うので、その都度、向き合っていく。楽しいだけじゃなくて、メリハリも大事だということは、もっと言っていかないと」。
とはいうものの、現時点では「順調です。子どもたちもしっかりやってくれているんで」と白い歯を見せ、頼もしそうに愛弟子たちを見ていた。
この甲子園練習も、「あっという間の一瞬のできごとだったので、彼らの記憶にほとんど残らないくらいじゃないかな」と玉置監督は言う。
ちびっこ虎戦士にとっては、これから続く長い人生の中ではほんの一コマかもしれない。けれど、この日見た景色と感動は、大人になってもずっとずっと記憶にとどめておいてほしいと願う。
(撮影はすべて筆者)
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