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箱根駅伝5区で青山学院選手の走行を妨害 中国人インフルエンサーが前日にウェイボーで語っていたこと

中島恵ジャーナリスト
(写真:アフロ)

1月2日と3日に開催された「第101回箱根駅伝」の往路5区で、車道内に進入し、青山学院大学の若林宏樹選手が走行する後を追って動画を撮影した中国人インフルエンサーがSNSで炎上、猛批判を浴びている。

主催する関東学連の担当者が「大変危険ですので、沿道を走らないようにお願いします」とマイクで警告したにもかかわらず、それを無視して走り続けた。

このときの実際の映像を見てみると、このインフルエンサーともう1人、白いダウンコートを着た中国人もすぐ後ろを走っていて、沿道からは中国語で、仲間と思われる人から「加油」(がんばれ)という掛け声が聞こえる。

ウェイボーのフォロワーは470万人

この中国人インフルエンサーの名は沈烏賊。中国でマラソンやランニングについてウェイボー(微博)やドウインの動画での発信を続けており、ウェイボーのフォロワーは約470万人に上る。

今回の件で、彼はTikTokで謝罪しているというが、ウェイボーには謝罪の言葉はなく、箱根駅伝の前日、1月1日の投稿がまだトップ画面に残されたままだ。そこには次の言葉が書かれていた。

「明日は箱根駅伝、第101回、また仲間たちと現場に行って大会を追いかけます。今朝は仲間たちと1区の出発地点と10区のゴール地点を走ってみました。明日と明後日に期待して、箱根の本番をがんばりたいと思います」

このコメントの下には、彼が仲間たち数人と黄色いウエアを着て、東京の大手町付近と思われるビル街を走り、箱根駅伝について解説している動画が添えられており、コメント欄には、ファンと思われる人々から「箱根の本番、がんばれ」など、まるで彼ら自身が出場するかのような声援が1000以上も書き込まれている。

問題の中国人インフルエンサーのウェイボーのトップ画面(筆者によるスクリーンショット)
問題の中国人インフルエンサーのウェイボーのトップ画面(筆者によるスクリーンショット)

中国で日本の「箱根駅伝」は大人気だが……

青山学院の選手の走行を妨げて動画を撮影するというあきれた所業。だが、中国のSNSを見るかぎり、彼の謝罪はほとんど話題になっておらず、むしろ、「箱根駅伝」というキーワードには「熱捜」(非常に検索されている状況)のマークがつけられていた。

日本ではあまり知られていないが、中国ではここ数年、マラソンやランニングが大人気となっている。健康志向の人が増えていることもあり、日本の伝統ある箱根駅伝を中国のウェブサイトから生中継で視聴し、応援している人も少なくない。

検索してみると、「箱根駅伝」以外に「青山学院が箱根駅伝で優勝」や「2023年箱根駅伝」「箱根駅伝100回」などのキーワードも検索されており、過去の大会の動画や写真のほか、記事なども多数、中国語に勝手に翻訳されて、閲覧されていたことがわかった。

日本留学経験者などは自身の母校を中国から静かに応援するという人もいるようだが、そうした人々からしてみたら、このインフルエンサーの身勝手でルール違反の行為はまさに同じ中国人として「恥ずかしいこと」以外の何者でもないだろう。

このところ、中国から来日したインフルエンサーが、市議会の議長室に無断で侵入したり、小学生の登下校の様子を撮影したりするなどの問題行為が相次いで起きている。日本のX(旧ツイッター)などに投稿されて発覚、日本人が気づくケースが多いが、こうした問題は氷山の一角ではないかと思われる。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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